【医療業界動向コラム】第83回 令和6年度診療報酬改定が告示。答申での不明点などを中心に確認する。
2024.03.12
※このコラムは2024年3月7日時点の情報をもとにしております。
令和6年3月5日、令和6年度診療報酬改定に関する告示が行われ、様々な資料が公表されている。今回改定のポイントについて、動画での説明も行われている。遡ること2月14日に答申が行われ、大きな変更や新設される個別項目については明らかにされているものの、詳細な施設基準や算定要件についてはすべてが明らかになっていたわけでもない。そこで、答申では不確かだった点や、告示で明らかになった新たな事実のいくつかを確認したい。
生活習慣病管理料Ⅱでも療養計画の作成・患者の署名が必要
特定疾患療養管理料の対象疾患から高血圧症・糖尿病・脂質異常症が除外され、生活習慣病管理料での算定となる。その生活習慣病管理料については、特定疾患療養管理料で算定していた医療機関による算定をイメージした生活習慣病管理料Ⅱを新設した。この生活習慣病管理料Ⅱは、検査が包括外となることと情報通信機器を利用した診療の評価が可能であること、疾患に関係なく一律に333点であること、などとなっているものの、外来管理加算との併算定は不可となっている(図1)。
なお、特定疾患処方管理加算の対象疾患から高血圧症・糖尿病・脂質異常症が除外されるため、生活習慣病管理料Ⅱでそのまま算定すると従来よりもマイナスとなる。ただし、病院の場合はプラスになる。診療所が生活習慣病管理料Ⅱでプラスになるには、外来データで移出加算の届出をするか、外来感染対策向上加算及び発熱患者等対応加算・医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算といった新興感染症対策や医療DXへの取り組みが必須となる。
ところで、この生活習慣病管理料Ⅱについては答申の段階では療養計画の作成及び患者の署名については記載がなかった。しかし、今回の告示の資料を確認すると、生活習慣病管理料Ⅱでも療養計画及び患者の署名が必要であることが分かった(図2)。
負担に感じるかもしれないが、生活習慣病の重症化予防には、患者本人の決意・努力が必要だ。署名はそうした意味では必要なことかもしれない。今後の対応としては、軽症患者・病状が安定しる患者に対しては長期処方・リフィル処方箋を積極的に出すことで、重症患者(生活習慣病管理料Ⅰや生活習慣病管理料ⅠorⅡ+慢性腎臓病対策予防指導管理料など)の時間を創り出し、対応していくというのが選択肢の一つになるのではないだろうか。今回の特定疾患療養管理料と生活習慣病管理料の見直しで感じるのは、軽症者のために割いていた時間をかき集めて重症者のための時間を創り出し、収入の維持・拡大につなげる、ということのように感じる。
DPCの診断群分類の見直しの影響を考える
今回、DPCについては退出ルールに向けた新たな要件や、効率性係数の見直しなど注目すべき点が多くある(図3)。中でも、診断群分類の手術や手術処置等の設定はこれからしっかり確認しておきたい。ある医薬品で高額薬剤判定を受けているものの、分岐が異なることで包括の範囲に含まれることとなり、使用するには医療機関が大きな負担を負わなければならない、ということがあった。どうやら、今回の整理と分岐の新設でそうした問題が解消されることになりそうだ。
画像診断にAI利用の評価、心大血管リハに肺高血圧症を追加
医療技術評価分科会で取り上げられていたもの(図4-1、図4-2)。他にも、専門の研修を受けた看護師によるストーマ処置もストーマ合併症加算(65点)として新設など。
価格交渉代行者への依頼について報告を
許可病床200床以上の病院と薬局を対象とした10-11月の妥結率に関する報告について、流通改善ガイドラインの改定に伴い報告内容も見直された。一際注目を集めるのが、価格交渉代行者への依頼について(図5)。今回は特にペナルティはないが、次回以降は、過度な薬価差益を得ている場合などは、減算などのペナルティが予想される。流通改善ガイドラインでは、医療機関・薬局は価格交渉代行者にガイドラインの遵守を注意しないといけない。ただ、確認しておきたいのは薬価差益が悪い、というわけではない。交渉は経営努力でもある。ただ、過度な薬価差益がいけない、ということだ。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。