【医療業界動向コラム】第95回 医療DXの大動脈となる「電子カルテ情報共有サービス」がいよいよ動き出す

2024.06.18

※このコラムは2024年6月14日時点の情報をもとにしております。

令和6年6月10日、厚生労働省にて第22回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループが開催され、医療DX3つの柱(オンライン資格確認・電子処方箋・電子カルテ情報共有サービス)の一つ電子カルテ情報共有サービスについて議論された。

電子カルテ情報共有サービスとは、異なるメーカー製の電子カルテに入力・蓄積された情報を連携・共有するためのフィルタのようなもので、そのフィルタである電子カルテ情報サービスを通すことで、情報が共通のフォーマット形式に整理される。

図1_電子カルテ情報共有サービスの概要(※画像クリックで拡大表示)

いわゆる3文書6情報の共有の他、診療情報提供書のやりとり、患者サマリを患者が閲覧できるなどの機能が提供される。

特に注目したいのは、患者サマリ。生活習慣病管理料では療養計画書の作成・署名・概ね4か月ごとの患者への交付が求められているが、この患者サマリの利用で療養計画書の作成・交付等は不要となる。医師の負担軽減に期待されるとともに、患者に閲覧してもらい、行動変容を促すためのメッセージのあり方を検討する必要があるだろう。

電子カルテ情報共有サービスについては、昨年公表されている改革工程表2023にて令和6年度中の稼働、医療DX推進体制整備加算の要件として、令和7年9月末までの導入が求められている。電子カルテ情報共有サービスというだけあって、電子カルテが必要となるとともに、標準規格である「HL7FHIR」への対応が必要だ。そこで、導入に向けた補助、またすでに電子カルテ導入済み医療機関が標準規格に対応するための更新に対する補助「電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金」が出ている。

図4_電子カルテ情報共有サービスに関する補助(※画像クリックで拡大表示)

令和13年3月31日までに電子カルテ情報共有サービスの導入を完了した上で、令和13年9月30日までに申請すれば、補助金交付の対象となる。

電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金

なおよく見てみるとわかるが、病院のみが対象となっている。診療所については、現状ではIT導入補助金2024の利用ということになるようにみえるため、今後確認を継続しておきたい。

この電子カルテ情報共有サービスのモデル事業を令和7年1月より9地域で実施することが明らかにされた。

図5_電子カルテ情報共有サービスのモデル事業(※画像クリックで拡大表示)

ここで気になることがある。私(筆者)もよく質問を受けるのだが、「電子カルテ共有サービスができるのであれば、地域医療情報連携ネットワークは将来的に不要になるのですよね?」というもの。確かに両者はその違いが分かりにくい。今回のモデル事業ではそのあたりの解消も検討材料の一つになるだろう。

なお、私は電子カルテ情報共有サービスと地域医療情報連携ネットワークサービスは異なるもの、と回答している。前者は全国で活用するユニバーサルサービスで、後者は地域により密着したローカルサービス。
前者については、主に診療・治療の継続(かかりつけ医の明確化や被災した後も他の地域で診療を継続するなど)と重複サービスを除外して医療費の抑制にもつながる期待がある。
後者については、介護事業・障碍者支援事業・保育事業者なども含めて地域でのスピーディーな対応とACPの共有・実施の期待がある。

全国医療情報プラットフォームの大動脈ともいえる電子カルテ情報共有サービスがいよいよ具体的に動き出す。意識しておきたいのは、こうした医療DXの環境が当たり前となる社会の姿をイメージして、今からできる備えとは何か、そして必要な環境作りをいつまでに、どこまでやるかを計画することを早く考えるようにしたい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

連載記事に関連するコラム

資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら
検討に役立つ資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら