【医療業界動向コラム】第98回 マイナ保険証の利用実績の考え方、そして医療情報取得加算の在り方の検討他

2024.07.09

令和6年7月3日、第591回中央社会保険医療協議会総会が開催された。「入院・外来医療等の調査・評価分科会における今後の検討」「DPC対象病院の退出」「施設基準の届出状況」「マイナ保険証の利用実績に関する検討」など複数のテーマで議論が行われている。

〇マイナ保険証の利用実績に関する検討について

令和6年度診療報酬改定で新設された「医療DX推進体制整備加算」だが、本年10月よりマイナ保険証の利用実績に関する要件が設定されることになっている。

図1_医療DX推進体制整備加算(※画像クリックで拡大表示)

今回は、その利用実績の値をどう考えるか、といった議論が行われている。利用実績の計算式などもまだ明確になっていない状況ということもあり、5月からスタートしている「マイナ保険証利用集中取組月間」が終了する7月末の結果など、医療機関における最新の取組状況なども参考に具体的に設定していくことになるだろう。

ところで、マイナ保険証に関連する項目としては「医療情報取得加算(旧:医療情報・システム基盤整備体制充実加算)」もある。令和6年度診療報酬改定からは、マイナポータルの情報を取得して、診療に活かすことを評価するものとなった。

そして、答申書の附帯意見には「令和6年12月2日から現行の健康保険証の発行が終了することを踏まえ、令和6年度早期より、医療情報取得加算による適切な情報に基づく診療の在り方について見直しの検討を行う」といった文言がある。ひょっとすれば、年明け早々、または令和7年度からの廃止も視野に入れておく必要があるだろう。

〇DPC対象病院の退出

DPC対象病院からの退出に関する報告があったが、4病院の退出、そのうち3病院が地域包括医療病棟への転換を検討する、とのことだ(残りの1病院は地域包括ケア病棟へ転換)。地域包括医療病棟はその包括範囲がDPC対象病院と同じであり、病棟薬剤業務実施加算等の算定も可能となっているもの。


図2_地域包括医療病棟の包括範囲(※画像クリックで拡大表示)
図3_包括病棟における加算の整理(※画像クリックで拡大表示)

ただ、救急受入れ割合や院内転棟割合など厳しいハードルがあるとともに、継続していくためには、近隣の三次救急医療機関や介護保険施設の連携協力体制が必須だ。また、院内転棟割合を考えると、病床規模によっては全病棟を地域包括医療病棟にすることも検討が必要ともいえる。

DPCについては、次回改定時に基準(データ数が90件/月以下など)を満たさない病院は退出が求められる予定だ。現時点では、103病院がその対象に当てはまっている。次回改定までに、DPC対象病院からの地域包括医療病棟への転換を考える中小規模病院は増えてくることなど考えられると同時に、救急受入れや在宅復帰率の要件などから考えると、地域医療における患者の流れや連携体制にも影響が出てくることが考えられる。地域医療構想調整会議など協議の場での話し合いが重要になってくる。

〇入院・外来医療等の調査・評価分科会における今後の検討

入院・外来医療等の調査・評価分科会での検討に向けた調査について、答申書の附帯意見にある項目から8項目を調査することが明らかにされている。その項目の中で注目したいのが「医療資源の少ない地域における保険医療機関の実態について」だ。

令和6年度診療報酬改定では、医療資源が少ない地域に限定して回復期リハビリテーション病棟入院医療管理料(病棟単位ではなく、病床単位での評価)が新設された。医療資源が限られた地域での病床の有効利用、重症化対策などに大きく貢献できるのではないかと期待される。

「施設基準の届出状況」については、令和5年7月時点の情報に基づく内容となっている。在宅療養後方支援病院や在宅療養支援病院の増加、療養病床による地域包括ケア病棟入院料の届出の増加など、病院による在宅医療への取組及び在宅医療の支援に取組む医療機関数の増加などの傾向がわかる。

図4_令和5年7月時点、在宅療養支援病院の届出が前年より増加(※画像クリックで拡大表示)

他にも注目しておきたい傾向など、次回解説したい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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