【医療業界動向コラム】第99回 昨年7月時点の施設基準の届出状況からわかること
2024.07.16
令和6年7月3日に開催された第591回中央社会保険医療協議会総会では、昨年7月までの3か年の施設基準の届出状況について報告されている。令和6年度改定前の情報だ。ざっとみて、数字の増減で気になったものを確認してみましょう。
目次
〇オンライン診療の届出が大きく伸びる
オンライン診療の届出件数が診療所・病院ともに伸びている。
新興感染症対策に関する都道府県との医療措置協定では、オンライン診療等の体制があることが望ましいとされていることなどの影響もあるのだろう。ただ注意したいのは、あくまでも届出状況のみであること。実際の実績については、NDBなどで確認が必要だ。
〇総合入院体制加算から急性期充実体制加算への移行が増加
急性期充実体制加算が増加しているが、総合入院体制加算からの移行がその主な原因と思われる。
令和6年度診療報酬改定をめぐる議論では、急性期充実体制加算への移行で精神科や周産期・小児科領域の急性期対応が減少するのではないか、といった影響が懸念されていた。その結果、急性期充実医体制加算そのものの点数は引き下げられ、「小児・周産期・精神科充実体制加算」が新設されたところ。また、実績要件の見直しがあり外来での化学療養の実績が新規で追加された。
その一方、総合入院体制加算の要件も見直しがあり、全身麻酔手術の実績が大きく引き上げられたところ。高度急性期機能の集約化とともに、医療計画における5疾病・6事業への貢献を求めるものとなっている。こうした基準の引き上げ等が地域医療に与える影響など、注視が必要だ。
〇看護補助加算等の届出数が減少
看護補助加算等の届出数が微減。
インバウンド需要の影響や地方都市では大型ショッピングセンターの新設などの影響もあり、業種を超えた人材獲得競争が起きていることの表れとも見える。
〇引き続き増加基調の地域包括ケア病床
地域包括ケア病棟は増加の傾向が続く。
今回の報告で注目したいのは、療養病床からの届出が増えている傾向にあること。病棟の看護配置を13:1にする必要があるが、療養病棟入院基本料の届出件数が若干減少していることと関係があるかと思われる。
〇下肢創傷処置管理料の届出が大きく伸びる
病院・診療所ともに激増といえる状況。
糖尿病や高血圧症の重症者が増えているともいえる。現在議論され、来年度から施行される、かかりつけ医機能報告制度が必要とされることがよくわかる。
〇在宅療養支援病院が増えている
在宅療養後方支援病院、在宅療養支援病院が増加。
地域によっては、開業医の高齢化などもあり、病院が在宅医療を担う必要や開業医を支援する取り組みが重要になってくる。なお、届出件数が増えていることは連携が進んでいるといえる一方で、地方都市の医療提供体制の深刻さも感じさせられる。
ところで薬局関連の届出をみると、無菌製剤処理加算が増加し、在宅関連の届出が増えていることがわかる。医療機関単独での対応にこだわらず、薬局も含めた役割分担・対応を意識することで、医療機関の負担軽減・働き方改革につながり、地域全体での医療提供体制の継続性を担保できることになる。
地方厚生局によるが、早ければ8月にも令和6年度診療報酬改定後の施設基準の届出状況が明らかになる見通しだ。また改めて最新の状況などご紹介したい。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。
https://www.hckn.work