【医療業界動向コラム】第104回 令和6年10月以降の返戻再請求のオンライン化への備えを

2024.08.27

厚生労働省のウェブサイトにある「保険医療機関・薬局におけるオンライン請求等」にて、本年10月からの「返戻再請求のオンライン化についてのご案内」に関する事務連絡が掲載されている。令和5年4月よりオンライン請求に対応する医療機関・薬局については、オンラインによる返戻再請求となっているが、例外としてシステム改修が完了していないなどのやむを得ない事情がある場合は令和6年9月末までは紙による返戻再請求が可能となっていた。その経過措置の期限を迎えることに伴う事務連絡だ。なお、オンラインによる原請求を実施していない医療機関・薬局に対する紙で送付される返戻レセプトについては、引き続き紙での返戻再請求となる。また、実務において本年10月以降は返戻ファイルのダウンロード期間が3か月であることから、その期間内にオンライン請求システムから返戻ファイルをダウンロードし、オンラインによる返戻再請求を実施することを要請している。

図1_返戻再請求のオンライン化について(※画像クリックで拡大表示)

あわせて、この事務連絡ではレセコンがオンライン返戻再請求に対応しているかどうかの確認と、未対応となっている場合の改修等を促している。

図2_医療機関・薬局における対応について(※画像クリックで拡大表示)

実際のオンライン再請求の流れは以下の通り。

  • ①オンライン請求用端末を使用して、オンライン請求システムから返戻ファイルをダウンロードする。
    ※返戻ファイルのダウンロード期間は3か月であることに注意!
  • ②ダウンロードした返戻ファイルをレセコンへ取り込む。
  • ③返戻ファイルの確認と修正を行う。
  • ④レセコンで該当するレセプト(入力データ)を修正し、再請求用のレセプトデータ(以下、再請求データ)を作成する。
  • ⑤再請求ファイルをオンライン請求用の端末で読み込む。
  • ⑥再請求ファイルについて、当月請求のレセプトと併せて、オンライン請求用端末からオンライン請求システムへ送信し、再請求を行う。

10月以降はオンラインによる返戻及びオンラインによる返戻再請求のみとなることから、急ぎの確認と対応が必要だ。

オンライン請求及び返戻・返戻再請求の推進は、審査支払機関の業務効率化とともに、請求の適正化を実現することにつながる。審査支払機関については「審査支払機能に関する改革工程表」に基づき、2026年度からの支払基金・国保連によるコンピュータチェックのロジック、振り分けチェックのAIエンジンなどの審査・支払領域の共同利用を目指して取組が進められている。

図3_支払基金と国保中央会・国保連のシステムの整合的かつ効率的な在り方の実現に向けた工程表
(※画像クリックで拡大表示)

なお、支払基金では2021年よりレセプト審査にAIが導入されている。審査業務の効率化として、コンピュータチェックで完結できるものの目視が必要なものを「振り分ける」ことをAIが担っている。審査に活用しているわけではなく、あくまでも人の負担を減らす、ということが目的だ。また、いわゆる「ローカルルール(地域独自のルール)」の解消につながり、全国で審査の標準化も実現できることが期待される。

オンライン請求、そして審査支払機関におけるAIの活用が進むことで、レセプト作成にかける時間や返戻の誤りが減り、その結果として診療及び請求の適正化の実現が期待される。そして、マイナ保険証の利活用がその基盤となり、適正化を実現するための速度を上げることになる。マイナ保険証の利活用、オンライン請求及び返戻再請求への対応は、国民一人ひとりが直接取り組める社会保障改革そのものだといえる。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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