【介護業界動向コラム】第2回 「生産性向上委員会の設置」とその背景

2024.08.28

前回のコラムで触れた「生産性向上推進体制加算」の取得要件において「生産性向上委員会の設置」が求められております。今回は、そもそも何故介護事業者に生産性向上が求められているのかについて解説をしていきます。

一般企業にとってのいわゆる最大利潤目的の「生産性向上の取組」を見聞きしている中、「利用者が尊厳ある生活を送ること」を上位目標として掲げてきた介護事業者からは、その主張は「受け入れ難い取組だ」という声が多く聴こえてきます。

ここでいう”介護事業にとっての生産性向上”とは「手段」であり、「目的」ではないということを申し上げておきます。やはり、介護事業者にとっての真の目的は「人口減による労働力不足の問題に直面しても、1人でも多くの利用者に対して質の高いケアを届ける」ことではないでしょうか。

労働力不足で介護事業が手詰まりにならない為にも「間接業務を減らし、利用者と触れ合う時間を増やす=働き手が減少しても介護の価値を上げ続けること」が出来る様、今から準備しておくことが必要不可欠です。そして介護現場で働くみなさまはこの背景を理解した上で、社会課題解決の一環として「生産性向上の取組」を行う必要があるということを理解してもらう事が重要です。

また、取組を円滑に進めるためのポイントを以下に記しますので、参考に進めて下さい。

【事前準備】
  1. 生産性向上委員会では前述の「生産性向上の真の意味合いを知る」ことから始めましょう。まずは運営のトップとなる役職(理事長、施設長、準ずる役職)から、事業所全体で取組む宣言、背景・目的を伝えます。
  2. 委員会のメンバーの選出
    委員長は施設全体の業務をある程度把握している方、プロジェクトを推進する力のある方であればICTに詳しい必要はありません。
    その他メンバーは、施設全体の取組みとなる為、職種に偏りが無いような構成を検討します。各職種から1名以上、介護職からはリーダー職は必須、さらに一般職からは「前職でICTを活用して仕事をしていた人」や「他の施設で既にICTを使って業務を経験していた人」をアサインすると良いという事例も多く聞かれます。
    この委員会メンバーは自分の持ち場に戻り、職員の取組みを最前線で支える役割を担いますので、メンバーが一枚岩になる様、目的についてお互い理解できるまで、何度でも議論していきましょう。

ここから委員会設置と委員会活動の内容についてまとめます。

【加算算定要件における委員会開催内容】
  1. 利用者の安全やケアの質の向上
  2. 職員の負担軽減や勤務状況への配慮
  3. 介護機器の定期的な点検
  4. 職員への研修
【その他委員会開催に関する要件】
  • 3か月に1回以上開催
  • 内容によっては他の委員会と一体化開催も可能
  • 算定する月より前に委員会を開催していること
  • オンライン開催も可能

具体的な委員会活動は以下(1)~(4)を議題とし、多職種が参加した形でPDCAを回していきます。

  1. 利用者の安全及びケアの質の確保について
    機器(見守り、介助ロボット等)の稼働と利用者のADL・QOL変化への対応方法検討と実践。
  2. 職員の負担の軽減及び勤務状況への配慮
    職員アンケートからストレス軽減、労働環境の改善を確認(休憩時間や時間外労働)。
  3. 介護機器の定期的な点検
    利用者の安全の為に機器の定期的な点検の仕組化と取組み(メーカー点検含む)
  4. 職員に対する研修について(定期開催)
    機器の使用方法、ヒヤリ・ハット事例等の周知、事故の再発防止策の実習等を含む職員研修
    加算(Ⅰ)を算定するに当たっては、上記に加え、職員間の適切な役割分担、介護助手の活用等による職員員研修等を実施。

上記の細かい要件や加算申請の為の手続きや提出書類については厚生労働省のWebサイトを参考にしましょう。(1)~(4)の報告様式の他に「委員会の議事概要を提出すること、厚生労働省が行う調査・検証等への協力に努める」も算定要件に含まれている為、必ず押さえてください。

また、生産性向上の為に導入を検討したい又はリニューアルしたいICTツールや機器の選定について、委員会の中で必要に応じて話し合い、導入計画の見直し等も委員会の中で議論していくと良いでしょう。

竹下 康平(たけした こうへい)氏

株式会社ビーブリッド 代表取締役

2007 年より介護事業における ICT 戦略立案・遂行業務に従事。2010 年株式会社ビーブリッドを創業。介護・福祉事業者向け DX 支援サービス『ほむさぽ』を軸に、介護現場での ICT 利活用と DX 普及促進に幅広く努めている。行政や事業者団体、学校等での講演活動および多くのメディアでの寄稿等の情報発信を通じ、ケアテックの普及推進中。

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