【医療業界動向コラム】第105回 医療情報ネット<ナビイ>をわかりやすく・使いやすく見直しへ 医療広告の適正化

2024.09.03

令和6年8月21日、厚生労働省にて第4回医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会が開催された。来年度から施行される「かかりつけ医機能報告制度」に合わせて医療情報ネットの公表の在り方について検討するとともに、個別の医療機関のホームページに関する運用の在り方について議論された。患者の医療機関選びにかかわる課題解決が目的となっている。

〇医療情報提供制度について

本年4月より全国統一のフォーマットになり、より詳細な情報が確認できるようになった医療情報ネット<ナビイ>。新しくなってからの利用状況なども今回公表されているが、その一方で、ナビイへの掲載が行われていない医療機関もあることが明らかになっている。

図1_医療情報提供制度の報告率(※画像クリックで拡大表示)

例えば、医療機関の種類別報告率をみると、病院:89.5%、医科診療所:74.0%、歯科診療所:71.4%、助産所:59.3%という状況だ。都道府県ごとに見ても差異がある。地域住民に対する選択材料の提供の観点からも100%を目指すための取組がこれから必要になる。特に、令和7年度に施行され、令和8年度からナビイで公表される、かかりつけ医機能報告制度の運用を考えると対応が急がれる。しかしながら、ナビイに掲載されている情報はやや専門的な表現になっている。地域住民にとっての判断材料となるためには表現を見直すことも求められる(図2)。

図2_かかりつけ医機能報告制度の報告内容①(※画像クリックで拡大表示)

図3_かかりつけ医機能報告制度の報告内容②(※画像クリックで拡大表示)

あわせて、障害のある方のためのかかりつけ医機能の対応についてもナビイでは見直しをしていく。本年度から改正障害者差別解消法が施行されていることもあり、障害のある方に対する必要な支援の一環ともいえる(参照:【医療業界動向コラム】第87回 障害者に対する”合理的配慮”、すべての事業者に義務化)。具体的には、障害者団体からのヒヤリング結果を反映した内容で具体的な項目の見直しが明らかにされている。例えば、「障害者向け駐車場の台数」、「案内用ホームページアドレスURLのJIS規格への対応状況」、「予約診療について、電話による診療予約の可否と予約用電話番号、メールによる診療予約の可否と予約用メールアドレス」、「面会について、入院中の家族・介助者の宿泊環境の有無、入院中の家族・介助者に関する特記事項、入院中の家族・介助者の付き添い・同行の可否」などの障害者本人の診療や入院中の面会に当たって必要な環境の確認などができるものが設定されている。他にも、「医療的ケア児への定期的訪問」、「他施設との連携に障害福祉サービス事業者と連携して在宅医療を実施」などの他、実際の治療にかかわる内容(図4)についても設定されている。

図4_障害のある方に関する報告項目案の一例(※画像クリックで拡大表示)

障害のある方の期待に応えられるような対応を、改正障害者差別解消法も踏まえて、常に意識しておきたい。

〇各都道府県で医療広告ガイドラインの標準的な指導・措置等の実施手順書を

医療広告ガイドラインがあるものの、不適切な内容のホームページの掲載やSNSの発信などが散見されている。厚生労働省としてもネットパトロールの委託などを通じて対応をし、指導を行っているが、指導に従わないケース(所轄の都道府県に通報後、行政処分をおこなうなどの対応も)もあることが確認されている。そこで今回、医療広告ガイドラインの運用に関する全国統一の指導ルールを明確にすることを通じて、各都道府県での対応を行いやすくするための「医療広告ガイドラインに基づく標準的な期限も含めた指導・措置等の実施手順書のひな型(案)」が厚生労働省より提示された(図5)。このひな型(案)をベースに、各都道府県での対応のための手順書を作成してもらう、というもの。

図5_医療広告ガイドラインに基づく標準的な期限も含めた指導・措置等の実施手順書のひな型(案)
(※画像クリックで拡大表示)

手順書(案)では、不適切な医療広告を3つのカテゴリー(1.直接罰が適用される広告、2.1以外の禁止される広告等、3.その他)に分類し、覚知(ネットパトロールや立ち入り検査時の医療広告違反の発見や市民等からの通報で移管を認識)してからの対応すべき措置のステップについて図示している。覚知から2-3か月を行政指導、中止・是正命令までを6か月以内、行政処分までを1年以内、としている。

地域住民に対する正しい情報発信を通じて、かかりつけ医を決めること、受診行動の変容を促すことが目的だ。その一方で、医療機関としては地域住民に必要な情報とは何か、自院がどういった医療機関なのかを患者視点で改めて考え、わかりやすく表現することが必要だ。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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