【介護業界動向コラム】第4回 見守り支援機器について

2024.10.30

介護ICT化、特に施設系において、導入が盛んなカテゴリーの一つが見守り支援機器です。

活用シーンはさまざまですが、見守り支援機器を導入するメリットは、利用者のバイタル情報や居室内の状況などを集中管理し、PCやスマートフォン・タブレットの画面上から瞬時に把握できる点にあります。例えば、ケアの質を保ちながら夜勤帯の巡視回数を削減することや、何かあったときにスマートフォンに通知された内容から事前に状況把握したうえで対応するといったことが可能になります。これらは利用者の安全・安心のためはもちろん、職員の心身の負担軽減にとって非常に有益です。

一方で第一回のコラムで述べた通り、生産性向上推進体制加算(Ⅰ)の取得を検討する場合、「全床設置」が算定の要件となり、高額な予算を組む必要がある為、導入に関しては慎重にならざるを得ないのではないでしょうか。

今回は見守り支援機器の大きな分類と選定の視点とともに、製品以外で選定に重要な注意点を解説していきます。

●大きな分類と選定の視点

以下は大きく4つに分類した見守り支援機器の代表的な機能と取得できる情報となります。

  1. ①. ベッド上の体動や呼吸数、脈拍などを検知する見守り支援機器
    → 利用者のベッド上での睡眠の質やバイタルの取得と確認が可能
  2. ②. ベッド外も含む室内の映像とセンサーの組み合わせによる見守り支援機器
    → ①にプラスし、カメラ設置による映像を録画・保存する事によりヒヤリハットや事故の検証と再発防止が可能
  3. ③. ①②にAIによる分析機能を持った見守り支援機器
    → 映像の「特定の行動」をAIが学習し、行動や想定されるリスク検知を行うことが可能
  4. ④. ①②③に加え、映像、音声、温度等の様々な情報収集が可能な見守り支援機器
    → 居室内の様々な環境から、総合的に利用者の快適な生活の在り方の分析が可能

選定する際はすぐに製品の比較に入らず、職員・利用者にとって「何の課題を解決するための導入なのか」を明確にしておくことが重要です。①~④の分類を踏まえ、「課題を解決するために必要な機能は何か?どの製品が適しているのか?」を意識して選定すると良いでしょう。このプロセスを踏むことで、導入後に「課題がどのように解決したのか?」をスムーズに評価できるようになります。

また、カメラ(映像)の有無によって「利用者・入居者のプライバシーはどう考えるのか?」なども、法人・職員の考えが一致するまで、委員会で十分に話し合っておきましょう。

●製品以外の重要な注意点

見守り支援機器はWi-Fi環境下で使用するものが大多数のため、導入する際には事前に事業所のネットワーク環境調査を実施しましょう。ネットワーク環境が不十分であることが後から発覚し、見守り支援機器で繰り返し失報や切断が発生すると、業務が混乱するだけではなく、職員のシステムへの信頼度が低下しICT活用全般への不信に繋がりかねません。また、状況改善のためにネットワークの追加工事と予算が必要になり、予期せぬコスト負担で苦労することにもなります。

見守り支援機器以外に導入するICTとの組合せによっては、うまく連携ができず、通知が届かないなどの問題が起こることがあります。それぞれ導入する機器のメーカーや販売店、ネットワーク工事会社などに導入前に相談することで、事前にトラブルを避けられることもありますので、他の機器との相性や通知の状況を確認すると良いでしょう。

見守り支援機器の多くは、導入前に試用期間を設け、実際に施設に設置し、現場の運用との相性や使い勝手を試してからの導入が可能です。事前にメーカーや販売店と相談し、施設に合う機器を選定しましょう。

竹下 康平(たけした こうへい)氏

株式会社ビーブリッド 代表取締役

2007 年より介護事業における ICT 戦略立案・遂行業務に従事。2010 年株式会社ビーブリッドを創業。介護・福祉事業者向け DX 支援サービス『ほむさぽ』を軸に、介護現場での ICT 利活用と DX 普及促進に幅広く努めている。行政や事業者団体、学校等での講演活動および多くのメディアでの寄稿等の情報発信を通じ、ケアテックの普及推進中。

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