【医療業界動向コラム】第115回 情報通信機器を用いた診療、医療法改正で規定を設けることに

2024.11.19

令和6年10月30日、第111回社会保障審議会医療部会が開催された。主に医療DXに関する話題として、電子カルテ情報共有サービスのモデル地域のことやマイナンバーカードを利用した医療費助成の効率化などについて議論されたが、その中で情報通信機器を用いた診療(以降、オンライン診療)の今後にかかわる重要な議論も行われている。

○オンライン診療の現状と課題を確認する

現行のオンライン診療については、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を遵守して実施することとなっている(図1)。

図1_オンライン診療の適切な実施に関する指針の概要(※画像クリックで拡大表示)

なお、この指針はD to Pを前提に構成されているもので診療について記載されているもの。そのため、健康相談については適用外となり、かかりつけ医がいない患者で他の医療機関等からの情報を得られないなどの場合に医師によるオンラインでの医学的な情報収集・必要に応じた受診勧奨を目的とした「診療前相談」については、その内容を診療録に記載するなど一部適用となっている。

また、令和6年1月16日に発出されている通知「特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について」では、オンライン診療のための医師が非常駐の診療所の開設や、「オンライン診療の適切な実施に関する指針に関するQ&A」の改定において、療養の場(職場や学校、通所介護事業所など居宅と同様、療養生活を営む場所として、患者が長時間にわたり滞在する場合)での実施が可能となっている(指針を遵守する体制整備が求められる)(図2)。

図2_特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について(※画像クリックで拡大表示)

先日(令和6年10月31日)、新潟県新潟市で開催された第62回全国自治体病院学会(大会長:吉嶺 文俊氏・新潟県立十日町病院 院長)での望月 泉氏(全国自治体病院協議会 会長、八幡平市病院始業管理者兼八幡平市立病院統括院長)による会長講演の中で、八幡平市病院と遠隔地にある常勤医が不在の2つの診療所での電子カルテとオンライン診療(D to P with N)による診療の実際が紹介されていた。へき地や天候の変化が激しい環境においては特に有効であることが改めて確認できた。

しかしながら、一方で悩ましい課題もある。最近、医師偏在対策等でも度々指摘を受けている美容医療におけるオンライン診療の不適切な事案だ。

◯医療法改正でオンライン診療の規定を設け、都道府県に届出を。

今回の検討会では、厚生労働省からオンライン診療の指針を遵守することを前提としつつ、医療法改正を行い、法的な規定を設け、都道府県への届出を求めるといった案を提示している。なお、法改正での対応となることもあり、保険外診療を行う医療機関も適用対象となる見通しだ(図3)。

また、特定オンライン診療受診施設として、オンライン診療が実施されている職場や学校、通所介護事業所なども都道府県への届出を求める方針だ。特定オンライン診療受診施設の場合は、患者の急変時の対応などオンライン診療を実施する医師の責任を求めることとなるため、新たに規定するオンライン診療を行う医療機関に求められるオンライン診療基準を満たす必要がある。

図3_オンライン診療に関する規定について(※画像クリックで拡大表示)

適切な推進と運用を促すための都道府県や地域医療関係者の役割などについても今後議論が必要になってくる。また、新興感染症発生時などの緊急時の対応(医療措置協定)などとの兼ね合い、罰則の可能性なども注目していきたい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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