【介護業界動向コラム】第5回 インカム・ビジネスチャットについて
2024.11.27
介護のICT化において、機器や仕組みも重要ですが、大前提は「あくまでもツールであり、そのツールを使う人が重要である」という話をセミナー等ではお伝えしています。そして、介護現場において「人と人のコミュニケーションを円滑にする」ためのツールがインカム・ビジネスチャットです。
無料から始められるものもあり、記録ソフトや見守り機器等に比べると導入しやすいツールですが、昨今はインカムもスマートフォンアプリを使用するものが多く、スマートフォンの導入が進まない=インカム・ビジネスチャットが入れられないというのが現状です。
しかしながら、導入後の効果が職員に一番分かりやすく、実感が湧くツールであるため、もし何もコミュニケーションツールを導入していなければ、まずはどちらかを試していただくことをお薦めします。
今回はインカム・ビジネスチャットについての導入メリットや活用例のご紹介をしていきます。
【インカムの活用例・メリット】
①緊急時の連絡と情報共有
職員間の情報共有が迅速かつ効率的に行えます。例えば急変した利用者の情報をリアルタイムで看護職員に伝達し、適切な指示を受けながら対応することができます。
また軽度な口頭連絡などは、別の作業中でも共有できるため、重なる時間の少ないシフト交代時などはかなり楽に引継ぎを行えます。
②人探しの手間→業務効率の向上
遠隔でも会話が可能になることにより、職員を探す為に施設内を走り回ることがなくなります。また、デイサービスやショートステイなどで駐車場に到着した利用者の出迎えのために職員が待機する必要がなくなります。
③チームワークの強化
職員間での連絡が密になり、グループケアの際にも状況を把握しやすくなることで連携が強化され、業務上のストレスが軽減されます。特に新人スタッフにとっては、先輩職員にすぐに相談できる環境が整うため、心理的な負担が軽減されます。
【ビジネスチャットの活用例・メリット】
①リアルタイムな情報共有(視覚的・保存的観点)
インカム同様に職員間の情報共有が迅速かつ効率的に行えますが、チャットの場合は文字や画像で残るため、リアルタイムであるものの、見る人側のタイミングを図ることが可能です。
②業務の効率化
同じ情報を一度に共有することで、業務の進捗状況やスケジュールを、タスクの割り当てを皆同じ認識で確認することができます。会議やメールのやり取りを減らし、効率的な業務運営が実現します。
③組織運営の向上とより良い組織づくり
職員によって「見た」「見ていない」という全体共有の問題を解決できます。文字情報や画像情報を共有することにより、認識の齟齬がなくなり、部門間、職員間のトラブルが減少します。またチャットを通じた意見交換や相談が促進され、職場のコミュニケーションが活性化します。これにより、職員同士の結束が強まり、より良いチームワークが生まれます。
【まとめ】
上記でご紹介したインカム・ビジネスチャットには、インカムアプリにチャット機能が組み込まれているものや、チャットアプリにカレンダーや掲示板機能が付いたものも登場しており、利用したい機能が何なのかを良く調べた上で選定することが重要です。
介護現場において多くのメリットをもたらし、業務効率化や職員のストレス軽減、利用者満足度の向上に寄与するツールであり、これからも多くの介護事業者で導入が進むことが期待されます。
竹下 康平(たけした こうへい)氏
株式会社ビーブリッド 代表取締役
2007 年より介護事業における ICT 戦略立案・遂行業務に従事。2010 年株式会社ビーブリッドを創業。介護・福祉事業者向け DX 支援サービス『ほむさぽ』を軸に、介護現場での ICT 利活用と DX 普及促進に幅広く努めている。行政や事業者団体、学校等での講演活動および多くのメディアでの寄稿等の情報発信を通じ、ケアテックの普及推進中。