【医療業界動向コラム】第120回 令和6年度補正予算が成立。緊急的な支援、医療DX、感染症対策に支援
2024.12.24
令和6年度の補正予算が12月17日に成立した。経済対策の事業規模が39兆円、関連経費としての補正予算に13兆9千億円を計上するという、大型の対策となる。医療分野に焦点をあて、とりわけ医療機関(病院・診療所)に直接的に関わると考えられるものを確認する。
目次
〇 厚生労働省の令和6年度補正予算案(図1)でポイントを確認
物価高、賃上げなど昨今の急激ともいえる経済環境の変化に対応することを目的とした緊急的な支援パッケージとして、ベースアップ評価を算定する医療機関に対する生産性向上の支援、病床数適正化と物価高対策への支援、周産期及び小児医療提供体制の支援が設定されている。ベースアップ評価料については、今後も実施されるであろう働き方改革等生産性向上に関する支援を受けるための前提条件となりそうだ(図2)。
医師偏在対策についても補正予算では盛り込まれている。「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」における事業承継・開業支援の他、主に中堅以上の医師を対象としたリカレント教育を実施し、かかりつけ医機能を発揮できる医師を養成していく、というもの(図3)。
〇 医療DXに対する支援。医療機関・行政・患者にとってのメリットを。
医療DX関連についても目白押しだ。医療機関側に対しては、第4期医療費適正化計画を踏まえての電子処方箋の導入に対する支援の他、リフィル処方箋等の付加機能の導入支援も盛り込まれている。なお、全国医療情報プラットフォームの構築に向けて、電子カルテ情報共有サービスについても強力に支援される(図4)。
ところで電子カルテ共有サービスについては、令和6年12月12日に開催された社会保障審議会医療保険部会にて、立ち上げ時は国が負担をし、一定の導入・普及が確認できた段階で、保険者と医療機関が負担をする、という大筋の流れが示された。令和6年度診療報酬改定では医療DX推進体制整備加算が新設されるなど、前倒しでゴールを迎えることも予想されると同時に、当然ながら機能のアップデートも継続して行われていくことが考えられる。費用の負担については、これからも折を見て継続して議論されていくことになるだろう。医療機関としては、補助金・助成金に頼らないDXの保守管理を意識しておくことが必要だ。
また、紙・カード型の健康保険証の新規発行終了に伴う様々な支援策もある。マイナ保険証の普及促進と同時に、公費負担医療を必要とする患者のための医療費助成申請のオンライン化や医療扶助のオンライン資格確認対応などがそれだ。マイナ保険証の利用促進には利用する側のメリットが必要だ(図5)。
〇 新興感染症対策に対する補助
新型コロナに限らず、感染症患者が増えてくる時期にある。新型コロナの支援もなくなり、物価高の真っただ中にありながらも、必要な防護具等の整備をはじめとする環境整備は行っていかなければならない。今回の補正予算では、都道府県との協定を結んでいる(感染対策向上加算、外来感染対策向上加算の届出)医療機関に対しての環境整備や研修に対する支援が行われることとなった(図6)。
〇 その他、女性の健康支援などにも注目。
女性が社会で活躍できるための健康相談支援体制を構築するための補助もある。骨太方針2024では「女性の健康 ナショナルセンター」について記載があったところ。医療機関に期待される役割など注目していきたい。
今回の補正予算については、令和7年4月以降からの執行となる。詳細など引き続き注視しておこう。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。
https://www.hckn.work