【医療業界動向コラム】第122回 2025-2027年の改革実行プログラムが公表される

2025.01.14

令和6年12月26日、令和6年第16回経済財政諮問会議が開催された。この会議では、例年12月に公表されていた「改革工程表」を新たに「改革実行プログラム」として今後のタイムラインを明確にしたもの。「改革実行プログラム2024」より医療分野、特に医療機関の経営に係るものと思われるものを選んで整理した。

医療DX関連~標準型電子カルテは2027年度から本格稼働を目指す~

医療DXに関連する項目を確認すると、電子カルテ情報共有サービスの運用開始が間近に迫っている。しかしながら、このサービスを活用するには文字通り電子カルテが必要となる。諸事情で電子カルテの導入が困難な診療所・200床未満病院を対象に標準型電子カルテの提供が行われることとなっており、2027年度からの実施を目指す方針だ(図1)。

図1_医療DXの取組(※画像クリックで拡大表示)

医療提供体制とサービス提供体制の見直し

2025年度は新たな地域医療構想のガイドライン策定、2026年から本格的に届出と協議が始まるかかりつけ医機能報告の準備の年になる。また、薬局についても対人業務の時間を創出するための薬局機能分化や一包化の外部委託など薬機法改正を踏まえて、順次施行されることとなっている。今後人口減少や政策誘導に伴い通院する患者数や通院回数は減少していくことが考えられる。これまで通り、処方箋を持ってくる患者を待つのではなく、積極的に医療機関と連携しつつ、地域に出ていくことや、服薬フォローを行うことが薬局にも求められるようになることを意識して、医療機関側からも働きかけを行うなど備えておきたい(図2)。

図2_医療提供体制について(※画像クリックで拡大表示)

外来患者数減少時代への対応を急ぐ

先日、医師偏在対策総合パッケージが公表されたところだが、改めて2027年度からの実施に向けて、粛々と進めていくことが記載されている。

合わせて目を引くのがリフィル処方箋の推進について。次回診療報酬改定において、更なる促進となるような議論が行われることとなる。あくまでも軽症な患者、ということになるだろうが、医師偏在対策も含めて、外来診療の在り方については転換点が近づいている。外来患者数が減少することが考えられる医療機関においては、時間ができることを逆にチャンスととらえて、診療単価の高い専門外来や在宅医療への取組、アプリなどを活用した健康相談による自由診療など新たな事業を考える必要も出てくるだろう(図3)。

図3_リフィル処方箋、多剤投与等医療費適正化について(※画像クリックで拡大表示)

地域別診療報酬の提案、外来定額制の可能性

注目したいのは、受診時定額負担と定額制の拡大の検討について。退院患者調査、病床機能報告と外来機能報告など医療に関するデータが収集され、蓄積されてきた。データが情報となり、制度設計に活かされる。財務省がかねてから主張しているように、かかりつけ医の紹介無しに他の医療機関を受診した場合の受診時定額負担や選定療養など、本格的に議論ができる環境が整ってきたということだろう。

そして、地域別診療報酬についても、国から積極的な情報提供が都道府県におこなわれることが想定されている。地域別診療報酬については度々議論に出るが、医療費適正化計画の推進のために必要あれば実施できることになっている(図4)。

図4_地域別診療報酬、定額制の拡大ついて(※画像クリックで拡大表示)

改革実行プラン2024では、2025-2027年を集中取組期間としている。2026年の診療報酬改定を挟んで、さらなる改革が進められていく。今後注目したい点を一言で表すと「外来の受診抑制」ではないかと思う。重症な方は保険診療を積極的に使っていただき、軽症な方は市販医薬品や自費の健康支援サービスなどを利用して健康維持に努めてもらう方が経済的な負担が軽く済む、そういった世の中創りを目指しているように思う。医療機関・薬局としてそうした世の中創りに向けて、どういった役割を担い、発揮できるかを本格的に考えていかなければならない時期に来ているように思う。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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