【医療業界動向コラム】第126回 医療DX推進体制整備加算、電子処方箋の導入の有無で評価に差
2025.02.12

令和7年1月29日、第603回中央社会保険医療協議会総会が開催された。今回の総会では、医療機関における電子処方箋導入状況の大きな遅れを踏まえ、医療DX推進体制整備加算の本年3月末まで設定されていた電子処方箋導入の経過措置経過後の方針が明らかにされた。結論から言えば、医療機関(病院・診療所等)においては、電子処方箋導入の有無で評価をわけること、薬局においては電子処方箋の導入が必須となる、というものだ。また、マイナ保険証の利用率も引き上げられることとなっている。今回の内容で答申され、本年4月1日からの適用とするべく手続きが進められる。なお、昨年末より議論されてきた入院時食事療養費及び特定薬剤管理指導加算3-ロの引上げ等も答申されている。
〇医科・歯科では電子処方箋の有無で医療DX推進体制整備加算に差を設けることに
元々は本年度末(令和7年3月末)までの電子処方箋の導入が求められていたところだが、現状を踏まえると、本年4月以降、算定できない医療機関が続出してしまう。これではシステムの保守管理料の支払いと維持などにも影響が出てしまい、全国医療情報プラットフォームの構築がさらに遅れてしまう。そこで、導入の有無で差を設けるべく、医療DX推進体制整備加算の区分を6つ(電子処方箋の体制有りが3区分、無しが3区分)となった(図1)。

図1_令和7年4月以降の医療DX推進体制整備加算(※画像クリックで拡大表示)
なお、マイナ保険証の利用状況が上昇していることもあり、利用率も同時に引き上げることとなっている。一方で、導入が進む薬局については導入していることを必須とした従来の3区分となっている。
注意点としては、医科においては小児患者のマイナンバーカードの取得・保険証との紐づけができていないケースが多いことから、小児科外来診療料を算定している医療機関(6歳未満の患児が3割以上であること)においてはマイナ保険証の利用率が緩和(医療DX推進体制整備加算3・6において、利用率を15%以上ではなく12%以上とする)される。点数については、電子処方箋の導入があれば引き上げとなっているが、導入されていない場合は加算3は据置だが、加算1・2は引き下げとなっている。
今後、適用に向けて通知も随時発出されることとなるが、以下のような案が具体的に示されているので確認しておきたい。
- ・(医科・歯科・調剤)医薬品のマスタの設定等が適切に行われているか等安全に運用できる状態であるかについて、厚生労働省が示すチェックリストを用いた点検が完了した医療機関・薬局を「電子処方箋導入済み」として取り扱う
- ・(医科・歯科)令和7年4月1日以降に「電子処方箋未導入」の加算を算定する場合には 、届出直しは不要であるが、「電子処方箋導入済み」の加算を算定する場合には、同年4月1日までに新たな様式で届出直しが必要
- ・(調剤)令和7年3月31日時点で既に医療 DX推進体制整備加算の施設基準を届け出た保険薬局において、電子処方箋未導入の保険薬局は辞退届出が必要
電子処方箋導入の促進策については、今夏を目途に見直しを行う方針だ。その見直しに向けて、令和6年度補正予算も組まれ、積極的な支援が始まる。
医療DXは、多くの医療機関・薬局が取組むことで、患者にも多くのメリットが得られ、医療費の抑制や医療従事者や審査支払機関のスタッフの負担軽減につながることを改めて理解し、前向きに考えていくようにしたい。

山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。
https://www.hckn.work