【医療業界動向コラム】第130回 病院機能別医療費の状況を確認する 

2025.03.11

令和7年2月28日、「令和5年度病院機能別・制度別医療費等の状況」が公表された。令和5年度の病院における入院・入院外医療費の状況を伝えるもので、昨年12月には「令和5年度医科診療所の診療科別の医療費等の状況」も公表されていた。

病院機能別に入院及び入院外診療単価、稼働率を整理した。また、医科診療所の診療科別の診療単価等についても整理したので合わせてみてみよう。

病院機能別に入院・入院外医療費の状況を確認する

図1_病院の医療費の状況(※画像クリックで拡大表示)

病院機能別とあるが、医療法による分類となっているので、改めて確認しておこう。一般病床とは、急性期病床とイコールではない。病床機能報告でいえば、高度急性期~回復期までの範囲となる。よく、日本は急性期病床が多すぎる、などと言われることがあるが、多くは誤解だ。病床に関する国際比較をするときに、他国は急性期病床で、日本は一般病床で比較をしているのを目にすることがある。DPCで比較をすると、実はそれほど大きな差はないともいわれている。

令和5年度の入院医療費について、前年度(令和4年度)と比較すると、特定機能病院・地域医療支援病院・DPC対象病院以外は減少している。診療報酬の特例の影響、病床のダウンサイジングや機能転換などの影響も考えられる。入院外もほぼ同様の傾向だ。他の資料から前年度の違いを確認してみると、未就学児の対応が大きく減少しているのが特徴的だ。

ここ数年の診療報酬改定は、地域医療構想の推進、勤務医の負担軽減を後押しするような内容となっている。高度急性期及び急性期における医療依存度の高い患者の診療に対する体制構築やチーム医療の推進を評価するものだ。重症者の対応に注力をし、病状が安定してきたら、速やかに退院・逆紹介を促していくことを基本に考えられている。その一方で、二次救急機能を含む回復期等の中小病院については、連携に対する評価が拡充してきており、介護施設や在宅のバックアップに対する体制構築の評価なども拡充してきている。高齢者救急の対応、その後の外来を通じたフォローアップなどの流れを作り、病棟と外来の一元化の仕組みを構築していくことが地域に密着した病院には必要となってくる。中小病院等においては、いよいよ始まるかかりつけ医機能報告制度を意識し、協議の場での役割をどのように発揮していけるかが重要になるだろう。

医科診療所の診療科別の医療費の状況を確認する

図2_医科診療所の診療科別医療費の状況(※画像クリックで拡大表示)

前年度(令和4年度)より減少している診療科に網掛けをしている。小児科と耳鼻咽喉科の減少幅が大きいことがよくわかる。一方で伸びが大きかったのは婦人科だ。働く女性がふえていることや婦人科健診の補助なども充実していること、お年を召された方(長寿の女性が多い)の受診も増えていることも考えられる。医療資源が限られた地域では、女性の患者は多く、介護者がおむつ交換時の出血等で気づくこともよくあり、遠隔地からのオンライン診療による対応など今後ニーズは高まってくるのではないだろうか。

医科診療所の施設数についても確認しよう(図3)。実は、婦人科の施設数が最も伸びている。働く女性が増えていることを考えると、器質性月経困難症等へ対応できる医療機関が身近にあることはとても有益で、社会全体の人手不足・働き方改革への貢献となる。

図3_医科診療所の施設数(※画像クリックで拡大表示)

婦人科に次いで件数が増えているのが心療内科、そして精神科となっている。メンタルヘルスへの対応や精神障害者の入院・施設からの地域移行の受け皿及び自立支援機能としての期待が高まるところだ。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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