【医療業界動向コラム】第134回 改正薬機法から読み解く、医療機関とかかりつけ薬局との連携

2025.04.08

令和7年度の通常国会に薬機法改正に関する法案が提出されている。医薬品そのものの品質と安定供給、創薬支援などとともに薬局の機能に関する見直しの4本柱で構成されている(図1)。医療機関として注目したいのは、薬局機能に関する見直しと遠隔販売に関することだろう。

図1_改正薬機法の概要(※画像クリックで拡大表示)

薬局機能及び薬剤師の役割については、「患者のための薬局ビジョン」が基本

見直しの方向性、今後を考えるうえで、基本は「患者のための薬局ビジョン」の実現にあることを理解しておきたい(図2)。

図2_患者のための薬局ビジョン(※画像クリックで拡大表示)

地域包括ケアシステムの中で、薬局に期待される、かかりつけ機能を発揮できる環境整備だ。特に意識したいキーワードは「患者のため」という言葉だ。今回の見直しは、患者を主語にした、薬局の在り方と薬剤師に求められる役割について整理されている。

患者にとっての利便性と薬剤師の対人業務時間を創出する「遠隔販売」

「遠隔販売」とは、薬剤師がいない店舗(コンビニを想定)での医療医薬品の受け渡しを可能とするもの。イメージとしては、患者はコンビニでオンライン服薬指導を受け、当該コンビニに保管されている医療用医薬品をその場で受け取る(図3)。

図3_遠隔販売(※画像クリックで拡大表示)

または、自宅でオンライン診療・オンライン服薬指導を受けて、近所のコンビニに受け取りに行く、ということもできる。

患者のための薬局ビジョンには薬局の立地について、建替を契機に地域へ、とあるがこの目標を後押しする内容だ。しかしながら、オンラインツールが普及していることもあり、立地は医療機関の近くのままで、服薬指導や服薬フォローといった対人業務ができる状況になってきた。ただ、医薬品の受け渡しについては配送か既存の店舗を利用することが必要だ。そこで、遠隔販売を認め、薬局薬剤師は対人業務に注力できるようにする見直しといえる。医療機関としては、薬局における対人業務の時間が増えることを見越して、調剤報酬でも評価されている服薬フォローや入院前の持参薬確認などの連携をさらに推進し、医師や看護師、薬剤師の負担軽減につながる連携の在り方を模索したい。

健康サポート薬局には服薬の継続と健康増進機能を、地域連携薬局に居宅機能を

現状では、認定薬局として「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の2種がある。前者はいわゆる生活習慣病等のかかりつけ機能を、後者はがん等の専門領域のかかりつけ機能を担うものとなっている。なお、「健康サポート薬局」は認定薬局とは少し異なるもので、先の認定薬局をベースにしつつ、健康増進機能を有するものとして存在している。しかしながら、認定薬局と健康サポート薬局、双方とも患者からも医療機関、介護事業者からの認知度はそれほど高くなく、調剤報酬で直接的な評価があるわけでもない。

そこで、今回の見直しでまず「健康サポート薬局」については、きちんと薬機法上で位置づけることと患者が継続して当該薬局を利用し続けることを前提として、健康増進を目的とした役割を課すこととなる(図4)。

図4_健康サポート薬局(※画像クリックで拡大表示)

OTCの提案であったり、リフィル処方箋を利用する患者に対する血糖測定・血圧測定などの対応と処方元への連携などが考えられる。一方で認定薬局に対しては、居宅機能の強化が盛り込まれる方針だ(図5)。

図5_認定薬局(※画像クリックで拡大表示)

新たに始まる、かかりつけ医機能報告との連動、新たな地域医療構想における薬局の役割を発揮してもらうための環境整備だと考えられる。とりわけ、高齢患者が多い医療機関にとっては、認定薬局との連携の強化が重要になってくるだろう。負担軽減の観点からも、薬局薬剤師との連携を通じて、患者の状況を把握し、リスクを先読みするなどの対応がポイントになってくるといえる。

人口減少、長期処方の推進、さらに今後検討される市販品類似薬に対する自己負担割合の見直しなどで受診患者数及び受診回数の減少が考えられる。医療機関としては、新規患者の拡大以上に、既存の患者の重症化予防に努め、一日でも長い関係を継続していくことが必要になる。医療機関だけの頑張りではなく、薬局とも連携を強化していくことが長い関係構築の一つの答えになるだろう。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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