【医療業界動向コラム】第135回 医療法改正が審議入り。医療法改正のポイントを確認する。
2025.04.15

令和7年4月3日より、医療法改正の審議が始まった。今回の改正では、「地域医療構想の見直し」「医師偏在是正に向けた総合的な対策」「医療DXの推進」の3点について見直される。なかでも「医師偏在是正に向けた総合的な対策」としては、医療法のみならず、健康保険法等も見直し、へき地医療に対する総合的な支援を実施する一方で、今後設定される外来医師過多区域における新規開業への対応を強化(事前届出とその内容に応じた保険医療機関の指定期間の短縮など)することとなる(図1)。

図1_医療法改正の概要(※画像クリックで拡大表示)
今国会で成立すれば、主な項目は以下の予定で順次施行される。
令和8年4月より
- オンライン診療ができる医療機関や場所の届出
- 外来医師過多区域での新規開業への対応を強化
令和8年10月より
- 新たな地域医療構想の見直し
公布後2年以内
- 美容医療を行う医療機関の定期報告
公布後3年以内
- 重点医師偏在対策支援区域を設定し、保険者の拠出による手当の支給を開始
なお、重点医師偏在対策支援区域については、令和6年度補正予算にて診療所承継・開業支援事業への重点区域候補が国から示され、先行して支援が実施されることとなる。この場合の重点区域候補としては、医師偏在指標の医師少数区域から選定されることとなる。
改めて、医療法改正の中でも病院経営に大きく関わることとなる「地域医療構想の見直し」「医療DXの推進」について確認しておこう。
地域医療構想の見直し
新たな地域医療構想として、令和9年度から始まる。現行との違いは、外来・在宅・介護との連携も含めた内容となること、病床機能報告制度に加えて医療機関機能報告を求める、というものだ。今年度より施行、令和8年度より公表される「かかりつけ医機能報告制度」では、二次医療圏単位・市区町村単位での外来機能に関する協議の場が設けられることになるが、これは外来版地域医療構想調整会議ともいえる。地方都市を中心に人口減少が進み病床削減が進んでいる中、患者の居住地が療養の場として機能を発揮していくことが求められる。そうした中では、外来・居宅機能を効率的に展開していくことや緊急時対応ができる環境整備が必要となってくる。そこで、高齢者救急を踏まえて消防機関も含めた連携体制の構築や病院による在宅機能の強化も必要になってくるだろう。そこで、新たな医療機関機能報告制度では「(高齢者救急・地域急性期機能」と「在宅医療等連携機能」といった医療機関に求める役割を明確にしている(図2)。
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図2_医療機関機能報告(案)(※画像クリックで拡大表示)
新たな地域医療構想の始まりに向け、連携していくことを前提に、どういった機能を地域で発揮できるのかを明確にしていくことが今は必要だ。
また地域医療構想を推進していく一環として、オンライン診療について医療法で定義を明確にし、規定を整備することにもなっている。具体的には、オンライン診療を行う医療機関は都道府県に届出を求めること(保険外診療も同様に届出が必要となる見通し)、また特定オンライン診療受診施設として、オンライン診療が実施されている職場や学校、通所介護事業所などを都道府県への届出を求めることなどだ(図3)。

図3_オンライン診療の新たな規定の創設について (1)(※画像クリックで拡大表示)
医療DXの推進
今回の改正では、主に電子カルテ情報共有サービスの利用が主な内容となっている。電子カルテ情報共有サービスについては令和7年1月より順次モデル事業が開始されており、導入のための補助なども用意されている。また、電子カルテそのものについても標準型電子カルテα版の試行が開始され、いよいよ全国医療情報プラットフォームのインフラ環境が整いつつある。電子カルテ情報共有サービスには患者サマリーという機能がある。患者サマリー機能を利用することで、患者はマイナポータルを利用して療養計画の閲覧ができる(生活習慣病管理料における療養計画書の交付が不要になる)。医師の負担軽減にもつながり、患者サービスにもなることを理解し、積極的な導入に取組むことが望ましい。
令和6年度診療報酬改定では処方箋料が引き下げられたが、これは医療DXの一つである電子処方箋の運用による負担軽減を意識したものだといえる。令和8年度診療報酬改定においても、医療DXの導入・運用を前提とした従来の項目の見直しが考えられるだろう。

山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。
https://www.hckn.work