【医療業界動向コラム】第136回 令和8年度診療報酬改定に向けた議論がはじまる 

2025.04.22

令和7年4月9日、第606回 中央社会保険医療協議会総会が開催され、令和8年度診療報酬改定に向けたスケジュール案が示された。6-8月までを第一ラウンド、9月以降の各論の議論を第二ラウンドとして進めていくこととなっている。いよいよ診療報酬改定に向けた議論がキックオフされたともいえる(図1)。

図1_令和8年度診療報酬改定のスケジュール(案)(※画像クリックで拡大表示)

令和6年度診療報酬改定結果検証部会より、後発医薬品の使用促進について

なお、総会と同日に令和6年度診療報酬改定結果検証部会が開催され、精神医療・長期処方及びリフィル処方箋・後発医薬品の使用促進に関する報告が行われている。特に注目されるのは、後発医薬品の使用促進についてだろう。令和6年10月からはじまった、後発医薬品のある長期収載品の選定療養の影響に注目が集まる。結論からいえば、調剤割合が90%を超える薬局が約66%ある(図2)など、その影響の大きさがよくわかる内容となった。

図2_後発医薬品の調剤割合(※画像クリックで拡大表示)

ただ、前回調査の時点でも80%を超えているところが多かったことを考えると、現状のルールではすでに数量割合は天井に達しつつあるように見える。ここから、さらなる期待をするにはもう一手が必要だともいえる。例えば、患者の自己負担割合をさらに引き上げることなども考えられるだろう。今回の調査では、そうした点についても患者調査されている。比較的年齢層が高いであろう郵送調査での結果では、先発品志向の強さが、勤労世代が多いであろうインターネット調査では自己負担が2倍になれば、という意見が確認できている(図3)。さらなる数量割合の拡大を求めるのであれば、自己負担割合の引上げは検討されることになるだろう。

図3_選定療養に関する患者調査(※画像クリックで拡大表示)

処方側による後発医薬品の使用促進策の一環として、令和6年度診療報酬改定では一般名処方加算の点数を引き上げたところ。なお、処方箋料は8点の引下げとなっており、一般名処方にすることで処方箋料の減収分をカバーできるようになっている。その影響もあってか、一般名処方が増えているのがわかる(図4)。

図4_一般名処方の有無(※画像クリックで拡大表示)

一方で、一般名処方をしていない医療機関にその理由を尋ねているが、電子カルテ等システム対応の問題が主なものとなっている(図5)。順調にいけば、来年度から標準型電子カルテの提供も開始され、一般名処方に関する課題は無くなる可能性が高い。となると、すでに90%を超える数量割合にあることから、後発医薬品使用体制加算や一般名処方加算自体の評価自体がなくなって、初診料・再診料などに包括された評価となっていくことも現実的に考え、対応策を用意しておくことが必要だろう。

図5_一般名処方をしない理由(※画像クリックで拡大表示)

ところで、今回調査ではフォーミュラリに関する調査が見当たらない。診療報酬ではなく、医療費適正化計画や保険者努力支援制度の中での取組みとなっていくかもしれない。

DPCからの7病院が退出。地域包括医療病棟への転換が進む

なお、中医協総会ではDPCからの退出する病院(7施設)についても報告された。地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟への転換、1月当たりの(データ/病床)比の基準を満たすことができなかった、などが理由だ。

DPCについては、今後も高度急性期向けの内容へと向かい、基準を満たすことが難しい病院は需要が高まる高齢者救急を主な目的とする地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟への転換を促されていく方向になると考えられる。 ただ、地域包括医療病棟に求められる要件のハードルは高い。いつまでも要件を満たし続けることができるか、地域の現状を把握しつつ、場合によっては、要件を満たせなくなることを見据えた次の展開(地域一般入院料や地域包括ケア病棟など)も準備しておくことが必要になるだろう。

今年度から施行されているかかりつけ医機能報告制度(報告は令和8年1-3月)、令和9年度からの新たな地域医療構想のはじまり、その一方で経営悪化が伝えられる厳しい環境、市販類似品などを含めた選定療養の拡大など、令和8年度診療報酬改定がどういった方向性を見せるのか、注目が集まる。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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