ケアプランデータ連携システムとは?導入するメリットや手順を徹底解説
2023.08.30
厚生労働省が介護業界にかかる業務量を軽減するため、ケアプランデータ連携システムの運営を始めました。
ケアプランデータ連携システムを導入すれば、業務を効率化して質の高い介護サービスを提供できます。
しかし、導入されてまだ日が浅いサービスなので、「どのようなシステムなのか?」「導入するメリットは?」などケアプランデータ連携システムについて導入を悩んでいる企業も少なくありません。
そこで本記事ではケアプランデータ連携システムについて、導入するメリットや手順を詳しく解説します。
ケアプランデータ連携システムを導入すべき企業の特徴も紹介しますので、最後まで読んでシステム導入を検討してみましょう。
なお、株式会社ワイズマンでは日々の煩雑な業務にお困りの方に向けて「介護・福祉向け製品総合パンフレット」を無料配布しています。
手軽に業務改善を始めたいとお考えの方は是非ご活用ください。
目次
ケアプランデータ連携システムの概要
介護業界は人手不足や多忙な業務量から、介護サービスにかけるリソースが不足しています。
そこで厚生労働省は、2023年4月からケアプランデータ連携システムのサービス提供を開始しました。
ケアプランデータ連携システムを導入すべきか悩んでいる企業は、どのようなサービスなのか概要を確認しておきましょう。
ケアプランデータ連携サービスの概要を確認するために、次の基本事項を紹介します。
- ケアプランとは?
- ケアプランデータ連携サービスとは?
それぞれの内容を正しく理解して、サービス導入の判断材料にしましょう。
ケアプランとは?
そもそもケアプランとは何かを知らなければ、ケアプランデータ連携サービスの導入を検討できません。
ケアプランとは利用者や家族に対して、解決すべき課題や提供する介護サービスの内容・目標などを記載した計画書のことです。
介護サービスを提供する際には、利用者や家族に対して提供するサービス内容や目的を明確にする必要があります。
ケアプランを提出することで、利用者や家族に安心して介護サービスを受けてもらえます。
また、ケアプランは介護保険サービスの給付を受ける際の必要書類なので、介護サービス計画とも呼ばれます。
ケアプランの種類
ケアプランは、以下の3種類に分類されます。
- 居宅サービス計画書
- 施設サービス計画書
- 介護予防サービス計画書
「居宅サービス計画書」とは、要介護1〜5の認定を受けた利用者に対して作成する計画書です。
居宅サービス計画書は、次のサービスを提供する際に作成します。
- 訪問サービス
- 通所サービス(デイサービス)
- 短期入所サービス(ショートステイ)
- 福祉用具のレンタル、特定福祉用具の購入、住宅改修など
「施設サービス計画書」は、要介護1〜5の認定を受けた利用者に対して作成します。
施設サービス計画書は、施設での介護が必要な利用者に対して作成する計画書です。
施設サービス計画書が必要となる利用施設は、次のようなものが挙げられます。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設
- 介護医療院(介護療養型医療施設)
「介護予防サービス計画」は、現状では介護がまだ必要ではない要支援1〜2の利用者に対して、作成する計画書です。
介護予防サービス計画は、次のようなサービスを利用する際に作成します。
- 介護予防訪問入浴
- 介護予防訪問看護
- 介護予防訪問リハビリテーション
- 介護予防通所リハビリテーション
- 介護予防福祉用具のレンタル
- 介護老人福祉施設への介護予防短期入所
- 介護予防認知症対応型通所介護
- 介護予防小規模多機能型居宅介護
- 介護予防認知症対応型共同生活介護の短期利用
- 総合事業の訪問型サービス
- 総合事業の通所型サービス
ケアプランは提供するサービス内容から、作成する計画書の種類を正しく理解しておきましょう。
ケアプランデータ連携システムとは?
ケアプラン連携システムとは、公益社団法人である国民健康保険中央会の介護保険課が運営する介護サービスを効率化させるためのシステムです。
居宅介護支援事業所と介護サービス事業所間で生じる業務負担を軽減するため、厚生労働省によって導入が推奨されています。
具体的には、ケアプランやサービス利用票のやりとりをオンライン上で行えるようになり、情報連携がスムーズにできます。
ケアプランデータ連携システムは、厚生労働省主導で2023年4月1日から申請をスタートしました。
導入を義務付けられてはいませんが、介護保険など法律上の優遇措置が取られる可能性があります。
ケアプランやサービス利用票のやりとりにかかるタスクを軽減して、他の業務にリソースを割けるようになるため、介護サービスの質を高める効果が期待できます。
本稼働までのスケジュール
ケアプランデータ連携システムは、2023年4月からサービス提供が始まりましたが、本稼働までにはいくつか段階がありました。
本稼働までのスケジュールは、次の通りです。
- 2023年4月1日からサービス利用申請の受付を開始
- 2023年4月14日から、クライアントソフトのインストール開始
- 2023年4月20日からシステム利用(送受信)が可能となり本稼働
ケアプランデータ連携システムは、2023年4月に本稼働してから、まだ日が浅いサービスです。
そのため、稼働後も課題や改善点が見つかると、必要に応じて機能を改善していく必要があります。
データ連携の対象範囲
ケアプランデータ連携システムは、すべての書類や計画書に対応している訳ではありません。
システムで連携できるケアプランデータは、次の通りです。
- 居住サービス計画書(第1表)
- 居住サービス計画書(第2表)
- サービス提供票(第6表)
- サービス提供票別表(第7表)
データ連携の対象範囲内の書類であれば、オンライン上でやりとりができます。
利用料金
ケアプランデータ連携システムを利用するためには、利用料金が必要です。
利用するためのライセンス料金として、1事業所あたり年間21,000円(税込)が発生します。
なお、取得したライセンスの有効期間は1年間です。
その他には、電子証明書発行手数料として、3年間で13,200円(税込)かかります。
さらにケアプランデータ連携システムを利用するために、ケアプラン標準仕様に準拠した介護ソフトが必要です。
ケアプラン標準仕様に準拠した介護ソフトを利用する際の料金は、月額価格で5,000~30,000円ほどが相場になります。
ケアプランデータ連携システムを導入する際には、利用料金を把握して予算と相談しましょう。
ケアプランデータ連携システムを導入する手順
ケアプランデータ連携システムを利用するために、導入する手順を正しく把握しておきましょう。
ケアプランデータ連携システムを導入する手順は、下記の通りです。
- 利用申請
- クライアントソフトのインストール
- 電子証明書の確認
- 電子証明書の申請
- 電子証明書のダウンロード
まずは、公益社団法人の国民健康保険中央会が運営するホームページから、利用申請を行います。
利用申請が承認された後は、国民健康保険中央会のサイトからクライアントソフトをインストールしましょう。
次に、介護給付費請求に使用する電子証明書があるかを確認します。
電子証明書が確認できない場合は、電子請求受付システムのサイトから電子証明書の発行申請を行ってください。
電子証明書の発行申請が承認されたら、電子請求受付システムのサイトから電子証明書をダウンロードしましょう。
以上で、ケアプランデータ連携システムの導入が完了します。
導入に必要な環境
ケアプランデータ連携システムを導入するためには、導入に必要な環境を整える必要があります。
システム導入に向けて、次の利用環境を用意しましょう。
- 厚生労働省のケアプラン標準仕様に適した介護ソフト
- 介護給付費請求に使用する電子証明書
- ケアプランデータ連携クライアント
ケアプラン標準仕様に適した介護ソフトや電子証明書は、導入手順の章で説明した通り、事前に用意しておく必要があります。
さらにケアプランデータ連携システムを活用するため、書類をオンラインでやりとりするクライアントが必要です。
クライアントの理解も必要
ケアプランデータ連携システムは、送信者・受信者どちらも利用登録をしなければなりません。
ケアプランデータ連携システムを活用して、オンラインで書類のやりとりをするためには、自社だけでなくクライアントもシステムを導入する必要があります。
片方はデータ連携システムを活用し、片方は従来の紙媒体でのやりとりはできないので注意しましょう。
そのため、ケアプランデータ連携システムを導入する際には、クライアントの理解が必要になります。
ケアプランデータ連携システムを導入するメリット
ケアプランデータ連携システムの導入を悩んでいる方は、導入して得られるメリットを確認しておきましょう。
ケアプランデータ連携システムを導入するメリットは、次の通りです。
- 業務の効率化
- コスト削減
それぞれのメリットを確認して、ケアプランデータ導入システムを導入すべきか社内で協議してださい。
業務の効率化
ケアプランデータ連携システムを導入すれば、業務の効率化が期待できます。
ケアプランデータ連携システムを導入することで、効率化できる具体的な内容は次の通りです。
- ケアプランへの記載時間削減
- ケアプランへの記載誤りを防止
- データ管理による文書量を削減
- 介護従事者の負担を軽減
紙媒体のケアプランを利用している場合は、書類に内容を記載する時間がかかり記載誤りが生じる可能性があります。
また、紙媒体で書類を管理している場合は、1つのケアプランを作成するにも労力がかかり、介護従事者の負担が大きいです。
ケアプランデータ連携システムを導入すれば、紙媒体のケアプランで生じていた文書記載・管理にかかるリソースを軽減して介護従事者の負担を軽減できます。
結果、利用者にかける時間・労力が削減でき、質の高いケアを実現できます。
コスト削減
ケアプランデータ連携システムを導入するメリットは、コスト削減につながることです。
ケアプランデータ連携システムを導入すると、次のようなコストを削減できます。
- 人件費の削減
- 印刷費の削減
- 郵送費の削減
- 交通費の削減
- 通信費(FAX)の削減
厚生労働省の調査研究アンケート結果によると、ケアプランデータ連携システムを導入すると、人件費削減を考慮した場合は年間で約81万6,000円のコスト削減を実現できる見込みです。
なお人件費削減を考慮しない場合でも、年間で約7万2,000円のコスト削減ができる見込みになります。
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ケアプランデータ連携システムを導入するデメリット
ケアプランデータ連携システムを導入する前に、メリットだけでなくデメリットも確認しておくことが大切です。
デメリットを確認せずに導入した場合は、後悔する可能性があります。
ケアプランデータ連携システムを安心して導入するために、次のデメリットを確認しておきましょう。
- 利用料金がかかる
- システム定着に時間がかかる
それぞれのデメリットを紹介しますので、導入するメリットと併せて利用を検討してください。
利用料金がかかる
ケアプランデータ連携システムを導入するデメリットは、利用料金がかかることです。
先ほど、利用料金の章で紹介した通り、ケアプランデータ連携システムを利用するためには次のコストが発生します。
- ライセンス料金:1事業所あたり年間21,000円(税込)/1年間
- 電子証明書発行手数料:3年間で13,200円(税込)/3年間
- 介護ソフト利用料金:5,000~30,000円/1ヶ月
企業によってはケアプランデータ連携システムを導入することで、予算がオーバーする可能性があります。
システム導入を決定する前に、使用できる予算を確認して決済担当者と相談しましょう。
システム定着に時間がかかる
ケアプランデータ連携システムは、導入してからシステム定着まで時間がかかります。
ITシステムへの知見がある方であれば、利用方法をすぐに覚えられるでしょう。
しかし、システム操作になれるまで時間がかかる場合は、導入初期は余計に作業時間がかかってしまいます。
従来のケアプランによる業務が習慣化されている従業員にとって、新しくシステム利用方法やマニュアルを覚える手間は負担に感じる可能性があります。
また、組織全体にシステム操作方法・利用マニュアルが定着した後でも、新規人材を採用した際には新たに利用方法や操作手順を教育しなければなりません。
ケアプランデータ連携システムを導入する際には、組織としてシステム定着に時間がかかることを理解しておきましょう。
ケアプランデータ連携システムの導入が向いている企業の特徴
ケアプランデータ連携システムを導入するメリット・デメリットを確認した上で、「まだシステムを導入すべきか悩んでいる」企業は、自社が導入に向いている企業かどうかを確認しておきましょう。
ケアプランデータ連携システムの導入が向いている企業の特徴は、次の通りです。
- タスクが混在している
- 介護コストを削減したい
- 人材不足に悩まされている
- データ管理のセキュリティを強化したい
- 文書保管・管理するスペースを削減したい
上記の特徴に当てはまる企業は、ケアプランデータ連携システムを導入すれば課題を解消できる可能性が高いです。
それぞれの特徴を解説しますので、自社が導入すべき企業なのかどうか判断しましょう。
タスクが混在している
ケアプランデータ連携システムを導入すると、混在しているタスクを解消してケアに注力できます。
ケアプランの記載にかかる時間や書類の管理・発送にかかるタスクを軽減して、介護ケアサービスに費やす時間を確保できます。
タスクが混在している環境では、質の高いサービスを提供することが難しく、介護従事者の負担も大きいです。
タスクが混在していて介護ケアサービスにかける労力が不足している企業は、ケアプランデータ連携システムの導入を検討しましょう。
介護コストを削減したい
介護コストを軽減したい企業は、ケアプランデータ連携システムの導入が向いています。
なぜなら、ケアプランデータ連携システムに導入すれば、さまざまなコストカットが実現できるからです。
印刷代や郵送代など紙媒体のケアプランを利用している場合にかかるコストを削減でき、業務を効率化することで人件費も削減できます。
ケアプランデータ連携システムを導入すれば、コストカットを実現できるため、介護コストを削減したい企業は導入が向いています。
人材不足に悩まされている
ケアプランデータ連携システムの導入が向いている企業の特徴は、人材不足に悩まされている企業です。
介護業界は深刻な人材不足に悩まされています。
介護需要に対してサービスを提供する介護従事者が不足しており、1人あたりのタスクが大きくなっています。
人材不足を解消しなければ、介護従事者にかかる負担が大きく離職率の増加やモチベーションの低下につながり危険です。
ケアプランデータ連携システムを導入すれば、業務の効率化により限られたマンパワーでも業務を遂行できます。
介護従事者の負担を軽減して質の高い介護ケアサービスを提供するために、ケアプランデータ連携システムを導入しましょう。
データ管理のセキュリティ面を強化したい
データ管理のセキュリティ面を強化したい企業も、ケアプランデータ連携システムの導入が向いています。
ケアプランデータ連携システムを導入すれば、オンライン上でケアプランなどの文書を保管・管理できるため、情報漏洩のリスクを軽減可能です。
紙媒体の文書では、書類を持ち出されたり紛失したりすると、流出・情報漏洩のリスクがあります。
自社のオフィス内に文書を保管している場合は、従業員であれば誰でも簡単に書類を持ち出せるため、セキュリティが弱いです。
ケアプランデータ連携システムは、国民健康保険中央会が運営しておりセキュリティ面の安全性が確保されています。
国としても情報漏洩や流出のリスクを減らすため万全なセキュリティ対策の下、システムを運営しています。
そのため、紙媒体のケアプランを利用するよりも、システムを活用してケアプランを管理した方がセキュリティ面を強化できます。
文書保管・管理するスペースを削減したい
ケアプランの文書保管・管理するスペースを軽減したい企業は、ケアプランデータ連携システムの導入が向いています。
文書でのやり取りだと、保管・管理スペースを確保しなければなりません。
オフィス内に倉庫やロッカーを確保したり、外部の倉庫を契約して保管したりすると、保管スペースと管理コストがかかってしまいます。
さらに必要な書類を探し出す際にも、膨大な文書の中から該当する書類を見つけなければなりません。
紙媒体で文書保管・管理をしていると、書類検索の手間と時間がかかるため、オンライン上でデータ管理した方が利便性が高いです。
ケアプランデータ連携システムを活用すれば、データ管理によってスペースを空けられるため、管理コスト・検索する手間が削減できます。
文書保管・管理するスペースに悩んでいる企業は、ケアプランデータ連携システムを導入してデータ管理を始めましょう。
大前提として、みぞうの人材不足に直面している介護業界においては、こういったシステム導入が必要不可欠です。しかしながら、導入されたばかりの本システムに関しましては “国の見切り発車” という感も否めません。いずれ必ず導入する必要があることを念頭におきつつ、情報を丁寧に収集しつつ導入のタイミングを計っていきましょう。
なお、株式会社ワイズマンでは「介護・福祉向け製品総合パンフレット」を無料で配布中です。
手軽に業務改善を始めたいとお考えの方は是非ご活用ください。
ワイズマンシステムはケアプランデータ連携システムに対応可能!
ケアプランデータ連携システムの標準仕様に準ずる介護ソフトを探している方は、ワイズマンシステムがおすすめです。
ワイズマンシステムは、ケアプランデータ連携システムに対応しており、オンラインでの作業によって介護事務業務を効率化できます。
事業所や医療機関との情報共有をオンライン上でスムーズに行い、介護従事者のリソースを軽減可能です。
またアプリを通じて、利用者のご家族とリアルタイムでスムーズなコミュニケーションが取れるため、利用者やご家族が安心してケアを利用できます。
ケアプランデータ連携システムの必要性を確認して導入を検討しよう!
ケアプランデータ連携システムを導入すれば、文書記載や管理にかかるタスクを軽減して他の介護ケアサービスにリソースを回せます。
質の高い介護ケアサービスを提供するためにも、ケアプランデータ連携システムを導入して業務を効率化することが大切です。
ケアプランデータ連携システムは2023年4月に本稼働してから、まだ日が浅いサービスなので利用手順や導入に必要な環境を正しく理解しておかなければなりません。
ケアプランデータ連携システムを導入するメリットとデメリット、導入が向いている企業の特徴を確認して、システムを利用すべきか社内で検討してください。
この記事で紹介した、ケアプランデータ連携システムの導入が向いている企業の特徴に、当てはまった企業はシステムを導入して課題を解消しましょう。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。