ケアプランデータ連携システムは義務化される?推奨される背景と導入に向けた準備を徹底解説!

2023.08.31

介護業界の業務量軽減のため、厚生労働省が2023年4月からケアプランデータ連携システムを本稼働させました。
ケアプランデータ連携システムを導入すれば、現場で働く介護従事者の負担を減らし、業務を円滑化できます。

しかし、まだ稼働されて間もないサービスなので「どのようなメリットがあるのか分からない」「導入は義務化されているのか?」など、さまざまな疑問が生じるでしょう。

そこで、本記事ではケアプランデータ連携システムは義務化されるのか、サービスが推奨される背景と併せて解説します
導入に向けた準備も紹介しますので、ケアプランデータ連携システムの必要性を確認して、導入すべきか検討してください。

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ケアプランデータ連携システムは義務化される?

近年、話題となっているケアプランデータ連携システムですが、導入が義務化されるのか疑問に思っている方もいるでしょう。
本章では、ケアプランデータ連携システムの概要を踏まえつつ、義務化されているのか否かを紹介します

そもそもケアプランデータ連携システムとは?

ケアプランデータ連携システムとは、介護業界におけるケアプランやサービス利用票といった必要書類を、オンライン上でやり取りできるシステムです。

従来では紙媒体のケアプランを、手渡しや郵送・FAXなどでやり取りしていました。
しかし、紙媒体のケアプラン連携方法ではコストや時間・手間がかかるため、多忙な介護従事者の負担となっていました。

そこで厚生労働省が、ケアプランやサービス利用票をやり取りする関連機関や専門家が情報を共有・共通化できるプラットフォームとして、ケアプランデータ連携システムを本稼働させたのです。
ケアプランデータ連携システムによって、患者や利用者のケアに関わる専門家同士がリアルタイムで情報を共有し、適切なケアプランの策定や調整を効率化できます。

また、情報の一元管理によって情報の信頼性やセキュリティも向上し、患者や利用者の安全性や質の向上が期待できます

現状は義務化されていない

ケアプランデータ連携システムの概要を理解した後は、導入が義務化されているのかが気になります。
ケアプランデータは2023年4月に本稼働したばかりで、現状は義務化されていません

今後は義務化される可能性もありますが、現在はまだ導入すべきか各団体・企業の自由としております。
そのため、無理にケアプランデータ連携システムを導入する必要はなく、現状は導入が推奨されている状態です。

将来的にはケアプランデータ連携システムを導入する必要性が高い

現在はケアプランデータ連携システムの導入を義務化されていませんが、将来的に導入する必要性が高まります。
介護業界は人手不足・業務量過多により介護従事者1人あたりにかかる負担が大きいため。

ケアプランデータ連携システムを導入すれば、事務作業にかかる時間・労力を軽減し介護従事者1人あたりのタスクを軽減できます。
また、紙媒体のケアプランをやり取りする上で発生するインク代・用紙代・郵送代など、余分なコストを軽減できるため、ケアプランデータ連携システムが推奨されます。

ペーパーレス化が推奨される現在では、オンライン上で書類をやり取りできるケアプランデータ連携システムの活用が必要です。

ケアプランデータ連携システムが推奨される背景

ケアプランデータ連携システムの導入が推奨されている背景には、次のような要因があります。

  • 少子高齢化社会に伴う利用者の増加
  • 低賃金・重労働による離職率の高さ
  • 深刻な人材不足

それぞれの要因を確認して、ケアプランデータ連携システムを導入すべきか検討してください。

少子高齢化社会に伴う利用者の増加

ケアプランデータ連携システムが推奨される背景には、少子高齢化社会に伴う利用者の増加が関係しています。
少子高齢化社会が進行する今後は、利用者である高齢者は増え続け、介護業界を支える若年層が減少していく見込みです。

利用者は増えて若年層が減少していく将来には、介護従事者1人あたりのタスク量を軽減し、業務効率を向上させる必要があります。
現在でも多忙なタスクにより介護従事者の負担が大きいため、介護サービスの質を維持することが難しくなっています。

利用者に対して不足した労働力で質の高いサービスを提供するために、タスクを軽減できるケアプランデータ連携システムの活用が推奨されているのです。

低賃金・重労働による離職率の高さ

ケアプランデータ連携システムが推奨される背景には、介護業界が抱える離職率の高さの課題があります
介護業界は低賃金・重労働による過酷な労働環境が課題となっており、年々離職者が耐えない業界です。

公益財団法人「介護労働安定センター」が公表した「介護労働実態調査」によれば、令和3年度の介護従事者の離職率は次の通りでした。

職種離職率
介護職総計14.1%
無期雇用職員13.5%
有期雇用職員15.5%
※引用元|公益財団法人 介護労働安定センター:令和3年度介護労働実態調査

厚生労働省が公表した「令和3年雇用動向調査結果」によると、令和3年度の平均離職率は13.9%でした。

※引用元|厚生労働省:令和3年雇用動向調査結果

介護業界の離職率14.1%は平均離職率の13.9%より、0.2%高いことが分かります。
また同調査によると、介護職に従事する方の平均賃金は、次の通りです。

介護職員平均賃金年収
月収242,273円
賞与590,699円
年収3,659,292円
※引用元|国税庁:民間給与実態統計調査

国税庁が調査した「民間給与実態統計調査」によると令和3年度の平均給与額は約4,433,000円でした。
そのため、介護従事者の平均給与は全業種と比較すると、低い傾向があります。

厳しい重労働を行う介護従事者ですが、他業種の平均より低い低賃金で働いているため、他業種へ転職する方も少なくありません。

実際「介護労働実態調査」によると、介護従事者の中で約60%の方が週に40時間以上の長時間労働をしていました。

※引用元|公益財団法人 介護労働安定センター:令和3年度介護労働実態調査

そこでケアプランデータ連携システムを導入すれば、介護従事者のタスクを軽減しコストカットを実現できます。
ケアプランデータ連携システムは、コストカットにより従業員への賃金還元とタスク軽減を実現する画期的な施策となります。

深刻な人材不足

労働人口減少社会と言われるように、どの業界でも人材不足は課題となっています

厚生労働省が公表した「一般職業紹介状況」によると、令和4年度の介護サービスにおける有効求人倍率は4.01と高い数字でした。
つまり全国の労働者1人あたりに4件の求人が残されている状態であり、深刻な人材不足であることが分かります。

深刻な人材不足に悩まされている介護業界では、業務効率を向上し介護従事者1人あたりのタスクを軽減する施策が必要です。
ケアプランデータ連携システムを導入すれば、従業員のタスクを軽減し深刻な人材不足に悩む現場の課題を解決できます。

ケアプランデータ連携システムを導入するメリット

ケアプランデータ連携システムは、利用を推奨されています。
なぜなら、ケアプランデータ連携システムを利用すると、次のようなメリットを得られるからです。

  • 業務時間削減
  • 業務負担削減
  • 業務コスト削減
  • 業務円滑化

ケアプランデータ連携システムを導入すべきか悩んでいる方は、それぞれのメリットを確認しておきましょう。

業務時間削減

ケアプランデータ連携システムを導入するメリットは、業務時間を削減できることです
オンラインでの書類のやり取りができれば、業務にかかる時間を削減できます。

厚生労働省が公表した「介護現場における生産性向上について」によると、ケアプランデータ連携システムを導入することでケアプランやサービス利用票などの書類共有にかかる時間を3分の1に軽減できる見込みです。

引用元|厚生労働省|介護現場における生産性向上について~ケアプランデータ連携システムの背景

例えば、ケアプランの共有にかかる時間は、次のように軽減できます。

  • 提供表(ケアプラン)共有にかかる時間(1事業所あたり)
    52.4時間/月 → 18.1時間/月
  • 提供表を持参する際にかかる移動時間
    車の場合 265時間/月 → 0分
    公共交通機関 77.5時間/月 → 0分

ケアプラン作成・郵送にかかっていた時間を3分の1に削減し、持参するために費やしていた時間をゼロにできます。
そのため、ケアプラン業務に費やしていた時間を他の業務にあてられるため、質の高いサービスを提供できるようになります。

業務時間を削減してより質の高いサービスを提供できる点こそ、ケアプランデータ連携システムを導入するメリットです。

業務負担削減

ケアプランデータ連携システムを導入するメリットは、業務負担を軽減できることです。
紙媒体のケアプランからシステム上でオンライン管理・取引ができるようになれば、介護ソフトへの転記が不要となります。

さらに従来の紙媒体では転記ミスが生じる心理的負担がありましたが、ケアプランデータ連携システムであれば、簡単に転記・補正ができるため負担が少ないです。
他にもペーパーレス化によって、書類保管に費やしていた場所の確保が不要となり、書類検索・整理に費やしていた業務を削減できます。

ケアプランデータ連携システムを導入して業務負担を軽減すれば、事業所・従業員ともに大きなメリットを得られます。

業務コスト削減

ケアプランデータ連携システムを導入すると、業務コスト削減につながります
ケアプランデータ連携システムを導入して、削減できるコストは次の通りです。

  • 人件費の削減
  • 印刷費の削減
  • 郵送費の削減
  • 交通費の削減
  • 通信費(FAX)の削減

厚生労働省が公表した「介護現場における生産性向上について」によると、1事業所あたり約68,000円のコストカットを実現できます。
ケアプランデータ連携システムを導入すれば、業務コストを削減して賃上げや新システムの導入によって、より働きやすい職場環境を実現可能です。

業務円滑化

ケアプランデータ連携システムを導入するメリットは、業務を円滑化できることです
ケアプランデータ連携システムは、送信者・受信者どちらも利用登録をしなければなりません。

そのため、自社だけでなくクライアントもシステム上でケアプランを共有できるようになり、業務を円滑化できます
また、ケアプランデータ連携システムは厚生労働省が定めた標準仕様での運用となるため、転記内容や書類共有方法を統一できます。

ケアプランデータ連携により、介護ソフトに依存しないデータ連携ができ、業務の効率化が可能です。

ケアプランデータ連携システムを導入するデメリット

ケアプランデータ連携システムを導入するとさまざまなメリットを得られますが、反面デメリットも生じます。
ケアプランデータ連携システムの導入を検討している方は、メリットと併せてデメリットも確認しておきましょう。

ケアプランデータ連携システムを導入するデメリットは、次の通りです。

  • システム定着まで時間がかかる
  • 利用料金がかかる

それぞれのデメリットを解説しますので、メリットと比較して導入すべきか社内で協議してください。

システム定着まで時間がかかる

ケアプランデータ連携システムを導入するデメリットは、システム定着まで時間がかかることです。

システム操作に慣れて業務を円滑化できれば、コストカット・業務時間の削減ができます。
しかし、システム操作になれるまで時間がかかる場合は、導入初期は余計に作業時間がかかってしまいます。

従来のケアプランによる業務が習慣化されている従業員にとって、新しくシステム利用方法やマニュアルを覚える手間は負担に感じる可能性があります。
また、組織全体にシステム操作方法・利用マニュアルが定着した後でも、新規人材を採用した際には新たに利用方法や操作手順を教育しなければなりません。

ケアプランデータ連携システムを導入する際には、システム定着まで時間がかかることを理解し、教育と周知を徹底しましょう。

利用料金がかかる

ケアプランデータ連携システムを導入するデメリットとして、利用料金がかかる点が挙げられます。
ケアプランデータ連携システムは、厚生労働省により導入を推奨されていますが、無料では利用できません

ケアプランデータ連携システムを利用するためには、次のコストが必要です。

  • ライセンス料金:1事業所あたり年間21,000円(税込)/1年間
  • 電子証明書発行手数料:3年間で13,200円(税込)/3年間
  • 介護ソフト利用料金:5,000~30,000円/1ヶ月

企業によってはケアプランデータ連携システムを導入することで、予算が不足する可能性があります。
ケアプランデータ連携システムを導入する前に、予算を確認しておきましょう。

ケアプランデータ連携システム導入に向けた準備

ケアプランデータ連携システムを導入するためには、次の準備が必要です。

  • ケアプラン標準仕様に対応したソフトを用意
  • 電子証明書の取得
  • ケアプランデータ連携クライアントの理解

それぞれの準備を整えておかなければ、ケアプランデータ連携システムを導入できません。
ケアプランデータ連携システム導入に向けた準備を始めて、介護業務の課題を解決しましょう。

ケアプラン標準仕様に対応したソフトを用意

ケアプランデータ連携システムを導入するためには、まずケアプラン標準使用に対応したソフトを用意しなければなりません。
ケアプラン標準仕様とは、厚生労働省が定めた「ケアプランデータ連携システムを使用できる仕様」を指しています。

ケアプランデータ連携システムを利用するためには、データの記入や確認ができる介護ソフトが必要です。
現在利用している介護ソフトを使用したい場合は、ケアプラン標準仕様に対応しているソフトかメーカーに問い合わせましょう。

また、介護ソフトやシステムを使用するため、インターネット環境を利用できるWindows10以上のパソコンを用意してください。

電子証明書の取得

ケアプランデータ連携システムを利用するには、電子証明書の取得が必須です。
電子証明書は、介護給付費を請求する際に使用するため、ケアプランデータ連携を行う際に必要となります。

介護保険請求の電子証明書を既に持っている場合は、継続して同じ電子証明書を使用して問題ありません。
しかし電子証明書を持っていない場合は、ケアプランデータ連携システム用の電子証明書を発行しましょう。

電子証明書の取得は「電子請求受付システム総合窓口」から無料で申請できます。
ケアプランデータ連携システムを利用するため、電子証明書を取得しておいてください。

ケアプランデータ連携クライアントの理解

ケアプランデータ連携システムを利用するための準備として、ケアプランを共有するクライアントの理解が必要です
ケアプランデータ連携システムを活用して、オンラインで書類のやりとりをするためには、自社だけでなくクライアントもシステムを導入しなければなりません。

片方はデータ連携システムを活用し、片方は従来の紙媒体でのやりとりはできないので注意してください。
ケアプランデータ連携システムを導入する前に、システムでのやり取りができるようクライアントと話し合っておきましょう。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

最終的に義務化されるか否かは現時点ではわかりませんが、先を見据えると導入はメリットの方が大きいと考えられます。介護業界は未だにFAXや紙媒体でやり取りが中心で非常にアナログな状況となっています。結果、業務効率が非常に悪く、更に人材不足も相まって現場の業務負荷が増してしまうという悪循環に陥っているのです。この状況を改善すべく、国は『生産性の向上』という命題を業界に突き付けています。慣れ親しんだこれまでのやり方を変えたくないという気持ちはよくわかります。しかしながら、もはや待ったなしの状況なのです。今、介護業界に求められているのは、こういったシステム導入を含めて “変化を恐れず行動すること” ではないでしょうか。

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また、あらゆるデータが一元管理されることで、業務の進捗状況をリアルタイムに把握可能
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ケアプランデータ連携システムの必要性を理解して導入を検討しよう!

ケアプランデータ連携システムは、まだ義務化されていませんが導入が推奨されています。
導入が推奨される背景には、現在の介護業界にかかわるさまざまな課題が要因です

ケアプランデータ連携システムを導入すれば、業務時間・業務負担・業務コストを削減し、業務を円滑化できます
しかし、導入してすぐに成果が出るものではなく、システム定着までに時間がかかることを理解しておかなければなりません。

また、利用料金が発生したりクライアントの理解が必要だったりと、システム導入に向けての準備も必要です
ケアプランデータ連携システムを導入するメリット・デメリットを比較検討して、システム利用の必要性を考えましょう。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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