介護記録システムとは?導入のメリットと注意点、選び方について解説

2023.08.30

業務効率の改善や、利用者へのより良いサービスの提供のために、介護記録システムの導入や刷新へのニーズが高まってきています。
しかし、実際にはシステムについて以下の疑問をお持ちの方も多いでしょう。

  • システムがあるのは知っているけど、実際に何ができるのか?
  • 今抱えている問題をシステムの導入で解決できるのか?

介護記録システムとは、介護サービスの利用者情報を記録・管理するものです。
管理データを電子化することで、業務の効率化やコスト削減につながります。

本記事では、介護記録システムの機能や導入のメリットを解説
後半では、システムの選定ポイントも紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください

介護記録システムとは

介護記録システムとは、介護サービスの利用者情報を記録・管理するものです。
手書きでなされていた書類作成が電子端末での入力作業に変わることで、よりスピーディーに記録や共有ができます

スタッフの業務負担軽減に、大きな効果をもたらすとして注目されています。

介護記録システムの機能

介護記録システムでは、介護記録はもちろん、他の介護の場面で役立つ機能が数多く組み込まれています。
実際の機能はシステムによって違いはあるものの、多くのシステムには以下の基本機能が備わっています。

  • 介護記録
  • スケジュール管理
  • ケアプラン作成
  • 各種帳票作成
  • 情報共有
  • 介護保険請求

それぞれの特徴を順に紹介します。

介護記録

介護記録とは、利用者様のや体調と生活にかかわるあらゆる情報(食事、服薬、入浴、口腔ケアなど)を記録できる機能です。
事前に入力用のフォーマットが用意されているため、少ない入力作業のみで介護記録を作成できます。

写真や動画での記録のほか、手書き入力や音声入力が可能なものがあります。
なお、備考欄や連絡項目も設定できるため、ほかのスタッフに共有したい事項がある場合にもスムーズに共有できます

スケジュール管理

スケジュール管理では、利用者に合わせた訪問・サービス時間の調節が可能です
システムによってはアラート通知やお知らせ機能が付いているものもあります。

また、スタッフの勤務予定やシフトを作成することもできます
打合せ予定や外出予定、スタッフの稼働状況などサービスとスタッフの予定を一括して管理できる機能です。

ケアプラン作成

ケアプラン作成は、利用者とその家族の状況や希望などの情報をもとに、ケアプランを作成できる機能です
主に、長期的な目標と短期的な目標、それらに合わせた具体的な援助内容が記載されます。

更新や変更も書類をいちから作成するのでなく、管理画面で変更点を操作するだけで完了します
リハビリシステムや電子カルテと連携すれば、医療の面と介護の面からケアマネージャーがより適切なケアプランを作成するのに役立つでしょう。

各種帳票作成

システムによって作成できる帳票が異なりますが、多くのシステムで以下のような帳票を作成できます。

  • 利用者基本情報
  • 通所介護計画書
  • 介護記録
  • モニタリング表
  • インシデント管理 / ヒヤリハット

仕様をカスタマイズできる場合もあり、現在使用しているフォーマットに合わせることも可能です。

情報共有

申し送り機能から、事業所全体に係わる連絡事項を共有可能です
利用者の個別の連絡事項については、介護記録の画面での共有と申し送りで一括で共有する2通りの方法があります。

他システムと連携すれば、医師や作業療法士への情報共有もできます

介護保険請求

介護保険請求は業務のなかでも、大きく時間がとられる業務の1つです。
介護記録システムでは、介護保険請求を記録から自動計算できます

迅速かつ、正確に請求金額が計算されるため、業務の負担軽減だけでなく、請求書の信憑性向上が期待できます

 介護記録システムのメリットは主に4つ

介護記録システムではさまざまな機能が使用できることが分かりました。
では、機能を活用することで、業務上どのようなメリットがあるのでしょう。

具体的なメリットは4つ挙げられます。

  • 情報共有がスムーズ
  • 伝達漏れやケアレスミスを防止
  • 書類の保管スペースを削減
  • 業務の効率化

それぞれのメリットを詳しく見てみましょう。

情報共有がスムーズ

システムを活用すると、介護記録に関するさまざまな情報を一元管理できるため、情報共有の円滑化が可能です。
例えば、システム上で申し送り機能を活用すれば、前任者の業務内容や連絡事項などを瞬時に把握できます。

これにより情報共有にかかっていた工数を削減でき、従来よりも円滑に介護サービスを提供できるでしょう。

伝達漏れやケアレスミスを防止

介護記録システムでは、利用者について連絡事項がある場合にその場で記録・共有できます。
これにより、記録漏れによってほかのスタッフへ連絡が行き届かないといった状況を防げます。

また、利用者へのケア前後にその日のサービス内容を再度確認できるため、ケアを怠ってしまうことも避けられます

書類の保管スペースを削減

介護記録システムでデータを管理すると、書類の保管スペースを削減できます
介護保険の運用基準によると、介護給付費請求書や介護給付費明細書の保管期間は5年、ケア提供に関連する記録書類は2年とされています。

書類を紙で管理する場合、長期保管のために大きなスペースを確保しなければなりません。

一方、介護記録システムは書類をデータベースで管理できるため、物理的な保管場所が不要です
また、書類の管理や紙・インクも不要になるため、コストの削減が可能です。

近年は、厚生労働省をはじめ多くの省庁がペーパーレスを推進しているため、今後は書類管理のデジタル化が求められるでしょう。

参照:介護分野の文書に係る負担軽減について(意見)|厚生労働省

業務の効率化

これまでの介護では、書類の作成に多くの時間がとられ、他の業務を圧迫していました。
介護記録システムの導入にともなって、記録の入力作業を円滑化できます。

例えば、一度入力したデータが関係書類にも共有されるため、入力業務の自動化が可能です。
介護記録システムを活用することで、従来よりもデータ入力・書類作成業務にかかる工数を大幅に削減できるでしょう。

また、人手の入力作業を削減できることで、ミスの発生を防止でき、書類の信憑性向上にもつながります。

 介護記録システムで解決できる4つの業務課題

介護記録システムのメリットは多数存在しますが、具体的にどのような課題を解決できるのでしょうか。
介護記録システムの導入で解決できる課題は、以下の4つが考えられます。

  • 人手不足
  • 働き方改革
  • 経費削減
  • レガシーシステムの刷新

それぞれ順に紹介します。

人手不足を解消したい

介護の分野では、人手不足の問題が続いています。
高齢化の進む昨今、これから先も人手不足の問題はますます深刻化していくことでしょう。

人手不足になることで以下のような問題が引き起こされます。

  • 介護サービスの品質が低下する
  • 介護スタッフの負担が増加し疲弊してしまう
  • 業務負担により離職率が向上
  • 研修不足によって介護士の技術が向上しない

十分な人材を常に確保することは難しいですが、システムの導入によって、従業員の業務効率を最大化できます。
また、現状では人手が足りていたとしても、スタッフへの負担を軽減することで離職率を下げることにもつながります。

スタッフの働き方を変えたい

訪問介護でも、事務所に出勤して利用者情報を確認してからの訪問サービスという形態の事業所がほとんどです。
しかし、働き方が変わってきている近年、在宅時間を増やす方向で働き方改革を行う企業も多く存在します。

端末をスタッフが自宅に持ち帰れるようにすれば、直行直帰が可能になります。
パートタイマーが多い事業所では、空き時間に在宅が可能となり、働きやすい環境づくりにつながるでしょう。

こうした働きやすさが離職率を下げ、人手不足にも間接的に貢献してくれます。

経費を削減したい

多くの書類を作成・保管する必要がある介護では、書類の印刷代(用紙代)、保管のための棚やファイルの購入も必要です。
しかし、電子端末での保管によって、印刷や保管のための備品量を削減できます。

短期的に見ると、システムの導入には多くの費用がかかりますが、長期的に見た場合に、書類ベースよりも経費を削減することが可能です。

レガシーシステムの刷新

新たな介護記録システムの導入は、レガシーシステムからの脱却につながります。
レガシーシステムとは、古い技術で構築されたシステムを指し、近年以下の問題に直面しています。

  • 開発技術の変化により編集が加えられない
  • かつての担当者が離職し管理データがブラックボックス化
  • システムのメンテナンスに多額のコストがかかる
  • 新たに導入したシステムと連携できない

老朽化したシステムは、いずれ業務に対応できなくなり、大きな機会損失を生む恐れがあります。
システム導入には多額のコストがかかりますが、新規の介護記録システムへ早期に移行することで、将来的な損失を回避できるでしょう。

介護記録システムを選ぶ際のポイント4つ

機能や特徴を見ていても、何を基準に検討すべきかわからない方も多いでしょう。
自社に合わないシステムを導入すると、操作が難しく現場に定着しなかったり、既存システムと連携できなかったりと、多くの問題が発生する恐れがあります。

どのような点から比較すべきなのか、順を追って選んでいくことで、自社に合ったシステムが見つかります。

操作性の高さから選ぶ

利用者情報の確認、介護記録の入力などに時間がかかってしまっては、システムのメリットが薄れてしまいます
操作がしやすいかを1つの判断ポイントとしましょう

操作性については以下のような点に注目してみてください。

  • 現場に適した入力方法か:選択式・音声入力・動画対応など
  • 画面のレイアウトや文字が見やすいか
  • 詳細なヘルプ機能に対応しているか
  • 導入支援サービスが充実しているか

システム会社からのデモをスタッフに体験してもらい、実際の画面を見みることで、使い勝手が自社のスタッフに即したものかどうかが見分けられます。

クラウド型かオンプレミス型かで選ぶ

介護記録システムには、クラウド型とオンプレミス型があります。
それぞれの特徴を以下のようにまとめてみました。

クラウド型オンプレミス型
費用大きな出費がなく毎月一定額導入時と更新時に大きな費用がかかる
セキュリティオンプレミス型より低いセキュリティ性は高い
インターネットトラブル影響あり影響なし

事業所の規模に合わせたタイプを選ぶようにしましょう。

特化型を検討する

介護記録システムは大きく3つの特化型があります。

 

  1. 介護記録特化型

介護記録の効率化やスタッフ間での共有のみであれば、介護記録特化型でも十分にカバーできます。
機能を絞っているぶん、コストを抑えられます。

 

  1. 訪問特化型

訪問介護向けに、スケジュール管理やスタッフの稼働状況を確認できる機能が入っています。
外からでも操作できるので、直行直帰の働き方も実現できます。

 

  1. 介護ソフト一体型

介護記録システムでの基本的な機能をすべて装備しているタイプです。
介護の幅広い業務をカバーしたい場合には、介護ソフト一体型がおすすめです。

 

どの形態を選ぶかは、自社が抱える業務課題や導入後のビジョンをもとに選択すると良いでしょう。
機能とコストのバランスを考慮し、適切な介護記録システムを選定してください

システム連携の有無で決める

電子カルテシステムやリハビリシステム、訪問看護システムなどとの連携で、より高い質のケアにつながります
同一法人内で病院やリハビリ部門も経営している場合には、すでに導入しているシステムと連携可能か確認しましょう。

連携できない場合は、追加機能が必要になったり、人手業務が生じたりします。
一連の業務プロセスを効率化する場合は、関係するシステムとの連携可否を確認しましょう。

アフターフォローが充実しているか確認する

介護記録システムは、トラブルが起きた場合の対応も大切なポイントです

遠隔操作での対応もあれば、訪問で対応するメーカーもあります
遠隔操作のみであれば、パソコン操作に長けた職員でないと、事業所内で対応ができないかもしれません。

さらに、介護では夜間の対応が迫られることもあります。
夜間の対応が可能かどうかなども確認しましょう。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

「記録に追われ記録に泣くのが介護業界」。とあるベテラン介護職の名言です。とにかく介護現場は記録に追われます。そして、記録の不備があれば運営基準違反で減算の対象になってしまう可能性もあるため、各施設は日夜記録業務に多くの時間を割いています。報酬を得るためのエビデンスでもあるため、記録をつけること自体は必然でしょう。問題は記録の方法です。多くの施設でまだまだ紙媒体で手書きの記録をとっています。しかも、同じ内容があちこちに記載され、二度手間どころではない施設も多いのではないでしょうか。それでなくても人手不足の介護業界です。記録業務の簡略化というのは、多くの施設で喫緊の課題であることでしょう。自施設の事情にあった介護記録システムの導入を早期に開始することをお勧めいたします。

ワイズマンシステムSPは介護現場におすすめ

「ワイズマンシステムSP」は、介護保険サービスに係わる業務全体をカバーしているシステムです。
音声入力が可能なので、操作に不慣れなスタッフがいても簡単に操作できます。

その他にも、「ワイズマンシステムSP」の大きな特徴について紹介します。

幅広い業務が可能なパッケージシステム

請求処理や集計資料の出力、タブレットでの記録・共有システムなど、幅広い業務に対応しています
また、2021年に開始された科学的介護情報システム(LIFE)の申請にも対応可能です。

高い操作性とセキュリティ性

従来のオンプレミス型にくわえ、アプリケーションを介して利用するクラウド型も提供しております
アプリケーションでは、パスワード設定やアクセス権限の振り分けも可能なため、個人情報の漏洩を防止でき、セキュリティ面でも安心です。

まとめ

本記事では、介護記録システムの基本的な情報から実際に導入時に検討すべきポイントまで紹介してきました。
高齢化が進むことで、今後、介護への需要はますます拡大すると予想されます。

それと同時に、人員不足の課題もより深刻化するでしょう。
事業所ごとに即したシステムを選び、導入することは、事業所のためだけでなく地域の介護の充実に大きく貢献することになります。

より高い介護サービスの提供に、介護記録システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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