介護支援システムの比較ポイント|タイプ別の特徴とやっておくべき3つの準備

2023.10.03

介護業界は医療分野に比べるとICT化が遅れています。
介護事業所でのシステム化が進まないのは、多くの介護事業所が小規模で予算に制限があったり、システム関連に明るい人材がいないことが大きな理由です。

しかし、人材不足の深刻化と要介護者の増加などを背景に、介護支援システムの導入は必須となってきました
とは言え、実際にシステムを選ぶにも、何をポイントとすればいいか分からず、手の付けようがないということもあるのではないでしょうか。

今回は、介護支援システムを導入するにも、選び方や事前準備が分からないという方のために、導入前後に事業者が考えたいポイントについて解説します

これからシステムの導入を考えている方は、ぜひ参考に介護支援システム選びに役立ててください。

介護支援システム(介護ソフト)の基礎知識

「介護ソフト」とは、介護サービス施設や事業所での業務をサポートするソフトウェアのことです。

従来は、国民健康保険団体連合会への介護報酬請求を目的とした製品が大半でした。
ただ近年は、介護現場の業務課題に対応したさまざまな製品が提供されています。

まず、本章では基礎知識として、厚生労働省が推進するICT導入支援事業と介護業界でシステム化が求められる理由を紹介します。

【厚生労働省が推進】介護現場のICT導入支援事業

厚生労働省では、介護業界のICT化を促進するために、自治体と連携して支援事業をおこなっています
具体的には、137.4億円(令和4年度)の地域医療介護総合確保基金を設立し、ICT導入事業者へ補助をおこなったり、情報提供をおこなったりしています。

もちろん、介護支援システムも支援事業の補助対象に含まれるため、規定条件を満たせば支援を受けられる可能性があります。
そのほか介護支援システムに関する情報提供もおこなっているため、システム導入を検討中の方は、厚生労働省のホームページを確認すると良いでしょう。

参照:厚生労働省「介護現場におけるICTの活用について」「介護ソフトを選定・導入する際のポイント集

介護業界でシステム化が求められる理由

近年、介護・医療問わず、システム化が進んでいます。

なかでも、介護業界でシステム化が求められるのはなぜでしょうか。
主に挙げられる理由は2つあります。

①介護職の従事者が不足している

高齢化社会のすすんだ日本では、介護を必要とする人口が増えている一方で、職員の数は増えることなく、横ばいのままです。
公益財団法人介護労働安定センターの調査では、調査対象の事業所のうち、6割以上が介護スタッフの不足を感じると応えています。

人材確保が今後ますます厳しくなっていくと推測されているため、その対策としてシステムの導入が注目されています。
システム化することで、一人の要介護者にかかる負担を少しでも軽減させることが狙いです。

参照:「介護労働実態調査」

②財源の確保が困難化している

現状では、高齢者が増えていくことで、社会保障費は増大しています
その一方で、生産年齢人口は減少し、社会保障費の財源確保が難しい状況です。

限られた財源のなかで効率よく医療・介護サービスを運営させていくために、介護業界のシステム化が期待されています。

介護支援システムの棲み分けとそれぞれの特徴

ひとえに介護支援システムといっても、特徴が異なるさまざまな製品が存在します。
ここでは、介護支援システムを以下3つのタイプに分類し、それぞれの特徴を紹介します。

  1. 対象施設別
  2. 機能範囲別
  3. 提供形態別

介護支援システムの種類と特徴を理解することで、自施設に合った製品を選定しやすくなります。
製品選びでお困りの方は、ぜひご参考ください。

1.【対象事業別】介護支援システムの特徴

介護支援システムが対応する介護事業は以下のものが挙げられます。

区分対象施設機能

居宅介護支援

居宅介護支援事業所
地域包括支援センター
利用者情報管理
介護保険
予実管理
援助・リハビリ計画
介護給付費請求
利用料請求
連絡管理
データ集計
施設サービス介護老人保健施設
介護老人福祉施設
短期入所生活介護事業所
介護医療院
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
介護サービス付き高齢者住宅
利用者情報管理
介護保険
部屋管理
資料作成
介護給付費請求
利用料請求
データ集計
訪問サービス訪問介護事業所(ホームヘルパー)
訪問看護事業所
訪問リハビリテーション事業所
訪問入浴介護事業所
利用者情報管理
介護保険
ケアプラン作成
利用料請求
スケジュール管理
データ集計
通所サービス通所介護事業所(デイサービス)
通所リハビリテーション事業所
療養通所介護事業所
利用者情報管理
介護保険
予実管理
個別援助計画
介護給付費請求
利用料請求
連絡管理
データ集計

事業内容に合わせてスケジュール機能の有無や管理項目の違いがあります。
自施設に合わせた適切な介護支援ソフトを選びましょう。

2.【機能範囲別】介護支援システムの特徴

介護ソフトの機能範囲は、大きく以下の3種類に分類できます。

  1. 介護保険請求機能をメインとした製品
  2. 介護施設の業務の一元管理を支援する製品
  3. 介護と医療、福祉を網羅的にカバーする製品

①介護保険請求機能をメインとした製品は、介護保険請求のための記録作成や管理業務が可能です。

機能としては限定的ですが、費用を抑えて導入できるというメリットがあります。
既存システムがあったり、請求にかかる業務の個別最適化を目指したりする場合は、「介護保険請求機能をメインとした製品」が良いでしょう。

②介護施設の業務の一元管理を支援する製品では、あらゆる事業者、業務に対応する機能が搭載されていることが①との違いです。
国保連への請求管理のみならず、サービスの計画書などの作成も可能です。

③介護と医療、福祉を網羅的にカバーする製品は、②の一元管理を支援する製品を、大規模事業者向けに機能拡張したものです。

施設同士のシステムの連携や情報の共有が可能となるので、利用者の情報を医師へ送ることができます。
法人内で複数の施設やサービスを統合し全社最適化を目指す場合は、「③介護と医療、福祉を網羅的にカバーする製品」の機能が必要となるでしょう

3.【提供形態別】介護支援システムの特徴

介護支援ソフトの提供形態は

  • インストール型
  • サーバー設置型
  • クラウド型

の3種類に分かれます。

①インストール型

いわゆるパッケージ型が当てはまります。
パソコンに介護ソフトをインストールして使用します。

データはパソコンに保存されるため、サーバーの設置は不要です。
比較的低価格で利用でき、「介護保険請求機能をメインとした製品」に多く見られる形態です。

②サーバー設置型

サーバー設置型は、オンプレミス型とも呼ばれるタイプです。
施設独自でサーバを設置し、データを保存する形態です。

設定により外部からのアクセスも可能なので、複数の施設で同時に共有できます
ただし、設置には機器の購入費と維持費の費用がかかります

③クラウド型

インターネットを介してサーバにアクセスし情報を管理します。
システムやサーバーの保守をベンダー企業が担う点が一番の特徴です。

自施設でサーバを保管しないので、管理負担がかからず、初期費用を抑えやすいメリットがあります
以前はセキュリティの不安要素もありましたが、近年はセキュリティが強化され、情報漏洩リスクが低いとされています

介護支援システムを選ぶ前にやっておくべき3つの準備

介護支援システムを選ぶ際には、あらかじめやっておくべき準備があります。

  1. 導入~運用にかける予算を策定
  2. 自施設が抱える課題と解決の優先順位を設定
  3. 自施設に必要な機能要件を決定

上記の3つについて事前に準備をすすめたうえで、システム選びに入りましょう

準備1.導入〜運用にかける予算を策定

まずは介護支援システムの導入〜運用にかかる予算を設定します。
一般的に介護支援システムの月額料金や初期費用のみで予算を設定しがちですが、実はほかにも以下のコストが発生します。

  • 介護支援システムの選定・導入にかかる工数
  • 介護支援システムのランニングコスト
  • 導入後の研修・教育コスト

これらの費用を含まずに予算を設定すると、コストが大きな負担になったり、費用対効果を低下させたりする恐れがあります。
特に、オーバースペックなシステムの導入で教育コストや運用コストが増大するケースが多いため、注意が必要です。

準備2.自施設が抱える課題と解決の優先順位を設定

次に、自施設が抱える課題とその優先順位を設定します。
課題を明確にしなければ、介護支援システムの必要機能が見えてこないためです。

また、介護支援システムを導入しても、課題のすべてを解決できるわけではないため、優先順位も設定することが大切です。
細かな機能要件を設定するためにも、経営・管理・現場の各視点から事業所の課題を洗い出しましょう。

準備3.自施設に必要な機能要件を決定

自施設の課題と解決したい優先順位を設定したのちに、システムの機能要件を決定します。
この時注意すべきなのが、100%自施設の要件を満たす製品は存在しないということ。

フルスクラッチ(1から開発する形態)でない以上、自施設の要件に合わないケースもあります。
そのため、機能要件に優先順位をあてはめ、妥協点も設定しておくことが大切です。

介護支援システムの比較ポイント3選

システムを比較する際は、当然コスト・対応機能を確認します。
ただ、よりシステム導入の成功率を高めるためには、以下3つの比較ポイントが大切です。

  • 介護支援システムの対象業務と拡張性は適切か
  • システム提供会社の実績と信用度は十分か
  • 万全のセキュリティ対策が施されているか

それぞれについて要点を詳しく説明しますので、最終的にシステムを選ぶ際の参考にしてください。

介護支援システムの対象業務と拡張性は適切か

介護支援システムを選ぶ際は、搭載機能だけでなく対応業務や拡張性も確認しましょう
システムを運用するなかで、新たな課題が生じた場合、対応業務や拡張性が優れた製品の方が対処しやすいためです。

例えば、保険請求のみに特化したシステムでは、バイタル記録や利用者の生活状況等の記録機能が欲しくなったとしても、同じシステムで対応できない可能性があります。
結果的に追加でシステム導入が必要になったり、手作業が発生したりする恐れがあるため、対応業務や拡張性が適切かを検討しておきましょう。

システム提供会社の実績と信用度は十分か

介護支援システム選びでは、提供会社の実績や信用度も重要な判断基準です。
特にクラウド型の場合、システム・サーバーの保守をベンダー企業が担うため、万が一提供企業が倒産するとシステムが使えなくなったり、保守・メンテナンスがされなくなったりします

また、新たなシステムを導入で追加コストが発生する可能性もあるため、実績や信用度のある提供会社を選びましょう。

万全のセキュリティ対策が施されているか

介護支援システムは利用者の個人情報を取り扱うため、セキュリティ対策も重要です。
セキュリティが弱いシステムでは、個人情報の漏洩リスクが高まってしまいます。

システムの形態でも触れましたが、セキュリティ面ではインストール型とサーバ設置型の方が安心といえます。

しかし、インストール型とサーバ設置型は自施設でセキュリティ体制を構築しなければなりません
外部に依頼する場合、気づかぬうちに保守期間を過ぎていたということもあるため、不安な場合はクラウド型を利用すると良いでしょう。

なお、システムのセキュリティレベルについては

  • 不正アクセスがあった場合に侵入の痕跡を確認できるログ管理機能があるか
  • アクセス権限付与の機能がついているか
  • データやファイルの転送が暗号化されるか

などを確認しておくと安心です。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

介護支援システムに関しては、利用していない事業所というのはかなり少数派なのではないでしょうか。こういったシステムに関しては、まず利用目的を明確したうえで導入することが基本となります。当たり前の話に聞こえるかもしれませんが、この導入目的が曖昧なまま導入してしまった結果、スタッフに利用目的が伝わらず不満をためさせてしまうような事業所はたくさんあるのです。
また、2024年医療介護同時改正後にはいよいよ居宅介護支援事業所にもLIFEの活用が求められる予定です。システムの活用なくして、LIFEの活用は不可能です。業務効率UPなのか、新しい制度へのより円滑な対応等々、導入目的を明確にしたうえで、導入・活用を検討していきましょう。

ワイズマンが提供する介護・福祉向け支援システム

ワイズマンが提供する介護向けシステムは福祉・医療との連携も可能です。
2023年6月時点で61,200以上の介護サービス事業所で導入された、業界トップクラスの実績を持っています。

Simple(洗練)、Speed(スピード)、Satisfaction(満足)の3つの観点からシステムを開発し、使いやすさと他職種との連携の取りやすさが大きな特徴です。

特徴1.介護事業全体をサポート可能

介護保険の請求処理はもちろん、集計資料の作成・出力やタブレットを利用したケア記録など、介護事業の業務全般をサポートします。
居宅介護、施設サービス、訪問介護、通所介護など幅広い介護施設で導入・サポートが可能です

特徴2.科学的介護情報システム(LIFE)に対応

2021年にスタートした科学的介護情報システム(LIFE)にも対応しています。
LIFEに対応することで、厚生労働省に集約されたデータからフィードバックを受けて、より良い介護ケアに活用できます。
2023年時点では導入は必須ではありませんが、将来的には導入が必須となると予測されています。

「科学的推移体制加算」が導入されており、LIFEの義務化には関係なく、申請することで加算される仕組みが始まっています。
訪問サービス以外では、LIFEが加算要件となることが多いので、今後より多くの単位数取得を検討しているのであれば、LIFEへの申請を検討すべきでしょう。

特徴3.MeLL+(メルタス)で共有がスムーズに

オプション機能の「MeLL+(メルタス)」は、介護施設と医療機関や家族との連携をとるシステムです

介護施設では、家族への連絡に電話を使用している所が多く、仕事中に電話をかけて家族が取り損ね、反対に、担当職員が不在の時に家族から電話がかかってくるといったことがよくあります。

こうした行き違いや折り返しが手間となり、職員への負担も増すと同時に、家族への負担にもなっていました。

MeLL+で家族との連携が可能になると、日々の報告や連絡はMeLL+を通じて行うためお互いの空き時間に確認できます。

また、MeLL+で医療機関との連携を取れば、日々の体調変化を主治医に知らせることが可能です
少しの体調の変化も、診察日以外にも相談できるので、介護スタッフや利用者、利用者の家族にとっても大きな安心となるでしょう。

体調が安定している場合には通院回数を減らすこともできるなど、利用者にも、病院側にも、負担を減らすことができます。

自施設にあった介護支援システムで業務課題を解決しよう

自施設の課題に合わせた介護支援システムを導入することで、介護スタッフの業務負担の軽減だけでなく、将来的な事業の安定した継続まで可能になります

今回紹介したように、介護支援システムを選ぶ際には、事業所の課題を見直すことやシステム会社自体を知ることも大切です。
長期にわたって効率よく利用できる仕組みづくりのために、システムは慎重に選んでいきましょう

自施設の課題を解決しつつ、より良い質の介護サービスの提供に役立ててくださいね。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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