介護記録の電子化による効果とは?進め方と課題、成功のポイントを解説
2023.12.06
近年、多くの介護施設ではデジタル化・ICT化による業務の効率化が実践されています。
なかでも介護記録の電子化は実施されるケースが多い施策です。
介護記録の電子化は事務作業によるスタッフの負担を削減し、ケアに集中しやすい体制を作るうえで欠かせない取り組みです。
一方で、進め方や課題の解決方法など、介護記録の電子化は知るべきポイントが多くあります。
本記事では介護記録の電子化の進め方や課題だけでなく、成功のポイントなどについても解説します。
ぜひ電子化を実践する際の参考にしてください。
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目次
現在の介護業界では介護記録の電子化が急務
現在の介護業界は介護記録の電子化が急務ですが、その背景には業界全体の人手不足があります。
日本の高齢化に伴い、介護ニーズは年々増加していますが、介護業界は人手不足が年々深刻化する一方です。
参照元:第8期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について|厚生労働省
厚生労働省が発表している上記のグラフでは、2025年には約30万人以上の介護人員が不足すると見られています。
一方で、労働人口の減少もあり、地道な採用による人手不足の解消は簡単ではありません。
そのため、昨今の介護業界では、業務の効率化によって限られた人員でもサービスの質を落とさずに業務を遂行できる体制作りが課題です。
介護記録の電子化もその一環であり、事務作業のような間接業務の効率化を目指すために実施される取り組みです。
【厚生労働省が発表】介護記録の電子化による効果とは?
介護記録の電子化について、厚生労働省は以下のような効果が報告されたと発表しています。
- 文書作成時間の短縮:30〜60分短縮27.5%
- 削減文書量:1〜2割25.7%
- 介護業務の時間を増加:30〜60分増15.2%
- 情報共有の円滑化を実感:88.0%
- 根拠に基づく議論・意思決定が実現:68.6%
参照元:ICT導入支援事業 令和3年度 導入効果報告取りまとめ|厚生労働省
それぞれの効果について、順番に解説します。
文書作成時間の短縮:30〜60分短縮27.5%
介護記録の電子化は、文書作成時間の大幅な短縮に貢献する取り組みです。
実際、電子化を実施した施設では、スタッフ1人につき月間30~60分程度の短縮に成功したケースが報告されています。
介護記録は電子化すると手書きで記入する必要がなくなるため、スピーディーな文書作成が可能です。
また、システムによっては計測したデータを直接文書に反映し、転記の手間がかからないものもあります。
削減文書量:1〜2割25.7%
介護記録の電子化により、施設あたり月間で1~2割程度の文書量の削減したケースも報告されています。
文書量の削減はペーパーレス推進の効果が表れている証拠です。
文書量が減れば、ファイリングにかかる手間を削減できるだけでなく、保管場所の確保も不要になります。
加えて印刷にかかる諸経費も減らせるため、さらなるコストカットも期待できます。
介護業務の時間を増加:30〜60分増15.2%
介護業務の時間を増加できる点も、介護記録の電子化の注目すべき効果です。
介護記録の作成をはじめ、事務作業のような間接業務の負担が大きいと、介護業務の時間が圧迫される恐れがあります。
介護記録の電子化は時間がかかる事務作業の効率化によって、その分介護業務をする時間を増やせる取り組みです。
実際、電子化の実施したことで、介護業務を30~60分増加させられたと報告する施設もあります。
情報共有の円滑化を実感:88.0%
介護記録の電子化によって、情報共有が円滑化したと感じる声も多くありました。
実際、電子化を実施した施設の8割以上が「スタッフ同士が話し合う時間が増えた」など、コミュニケーションの活性化を体感しています。
介護記録はデータとしてそのままやり取りできるため、スタッフ同士はもちろん、利用者やその家族への説明にも活用できます。
根拠に基づく議論・意思決定が実現:68.6%
介護記録の電子化は作業の効率化だけでなく、資料のスムーズな確認を実現できる取り組みです。
電子化を実践すれば、紙媒体のようにファイリングされた資料を探す手間がなくなり、過去の記録や情報の抽出が容易になります。
その結果、作成した記録を効果的に運用しやすくなるでしょう。
実際、介護記録の電子化を行った施設では、7割近くが根拠に基づく議論・意思決定が実現したと報告しています。
ただ記録する作業だけでなく、情報の運用も効率化すれば、エビデンスを適切に活用した施設運営が実現します。
介護記録の電子化を推進する手順
介護記録の電子化は以下の手順で実施しましょう。
- 手順1.ICTの導入計画を策定
- 手順2.ICT機器の選定
- 手順3.ICT機器の導入に伴う業務プロセスの見直し
- 手順4.ICT機器の導入・定着・運用体制を整備
- 手順5.介護スタッフの研修
- 手順6.介護記録電子化の効果を検証
電子化を行う際のプロセスの構築に役立つので、ぜひ参考にしてください。
手順1.ICTの導入計画を策定
電子化を実践する前に、まずはICTの導入計画を策定しましょう。
このフェーズでは電子化する目的・解決したい課題・業務への活用方法などを決定します。
ICTの導入は業務フローを大きく変更する施策であり、失敗したらスタッフに大きな負担をかける恐れがあります。
そのため、計画の時点で時間をかけて準備を進め、導入プロセスを綿密に設定しましょう。
手順2.ICT機器の選定
ICT機器の選定は計画の段階で設定した目的や課題に合わせて行います。
自施設が抱える問題に適切にアプローチできるツールを選定しましょう。
他方で、ICT機器は性能や価格だけでなく、施設の環境や使い心地への考慮も重要です。
ICT機器はどれだけ性能が高くても、現場に定着しなければ運用できません。
施設の設備や環境と合わなかったり、スタッフが扱いにくいものだったりすると、導入しても使いこなせない恐れがあります。
手順3.ICT機器の導入に伴う業務プロセスの見直し
ICT機器の導入を実施する際は、業務プロセスの見直しを必ず行いましょう。
作業工程や作業頻度がどれだけ変わるか、担当者の変更は必要かなどをあらかじめ確認しておけば、スムーズに導入が進みます。
加えて、ICT機器の導入によって時間や人員に余剰が生まれる場合、それらの活用方法も前もって検討しておけば、より効率的な業務プロセスを実現できます。
手順4.ICT機器の導入・定着・運用体制を整備
ICT機器の導入・定着・運用体制の整備も重要な工程です。
このフェーズではICT機器を管理する担当者や、導入に際して必要な機器や環境の整備などを実行し、体制を整えます。
あらかじめ体制を整備しておけば、スタッフがICT機器を受け入れやすい状況の構築が可能です。
手順5.介護スタッフの研修
ICT機器を導入する際は、介護スタッフの研修も欠かせません。
業務に取り入れる以上、スタッフがICT機器を使いこなせなければ、電子化の効果を得られなくなります。
なお、アナログな作業に慣れている施設ほど、ICTのようなデジタルツールの定着が遅れやすい傾向があります。
スタッフが安心してICTを使えるように、研修は入念に実施しましょう。
手順6.介護記録電子化の効果を検証
ICT機器の導入が完了しても、取り組むべきプロセスはあります。
それは介護記録の電子化による効果の検証です。
実際に介護記録の電子化を実現しても、確実に効果が出るとは限りません。
もし運用が上手くいっていない部分が発生した場合は、早急に原因を特定し、改善方法を検討しましょう。
また、電子化を実践した結果、新たな課題が発生する場合もあるため、常に効果の検証は実践する必要があります。
介護記録電子化の効果の検証と改善を通じ、PDCAサイクルを回せば、業務フローのさらなるブラッシュアップが可能です。
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介護記録の電子化で多くの事業所が直面した3つの課題
介護記録の電子化に成功した事業所は多いですが、導入の際はさまざまな課題が発生します。
とりわけ解決すべき重要な課題は以下の3点です。
- パソコン・ICTに対する介護スタッフの苦手意識
- 介護記録の電子化・ICTに関する知識不足
- ICTに精通した人材の確保
いずれの課題も電子化のスムーズな導入を実現するうえで、解決しなければならないものです。
それぞれの解決方法は必ず把握しましょう。
パソコン・ICTに対する介護スタッフの苦手意識
アナログな作業が残っている施設だと、パソコンやICTに対して苦手意識を持っている介護スタッフが多いケースは珍しくありません。
とりわけスタッフの平均年齢が高いと、デジタル機器に触れた経験やノウハウがないため、電子化を実践しても定着しないリスクがあります。
介護記録の電子化を推進するうえでも、介護スタッフの苦手意識は研修やトライアル期間を設けるなどして改善しましょう。
ICT機器の導入後にもベンダーを招いて定期的な研修を行うと、より円滑な定着を実現しやすくなります。
また、最先端のツールにスタッフが拒否反応を示すケースもあります。
その場合は、計画段階から電子化する意義や目的を説明し、スタッフを納得させてから導入を進めるようにしましょう。
介護記録の電子化・ICTに関する知識不足
介護記録の電子化やICTの導入を検討していても、それらに関する知識が不足していると推進が遅滞する恐れがあります。
そもそも、業界・業種を問わず、デジタル化は知識やノウハウがないとスムーズに進まないものです。
電子化やICTの導入を進める場合は、推進チームのリーダーやメンバーが積極的に知識を学び、スタッフに共有するよう心がけましょう。
加えて、電子化やICTにおいては、ITだけでなくリスクヘッジや個人情報の扱いなどの知識も重要です。
ツールの運用にも大きく影響する知識なので、必要があれば外部の専門家を招くなどして、積極的に学ぶ機会を作りましょう。
ICTに精通した人材の確保
介護記録の電子化やICTの導入は、ITスキルを持った人材を育成したり、採用したりしてから実践すると円滑に進められます。
もし人材の確保が難しい場合は、機器を販売するベンダーや外部の専門家の協力を得る方法もおすすめです。
ただし、第三者のサポートを得る際は、必ず施設内の人間が主導権を握らなければなりません。
ノウハウを持った第三者にすべて任せると、現場の意向にそぐわない形でICTが導入される恐れがあります。
介護記録の電子化を成功させるためのポイント
介護記録の電子化を成功させるなら、以下のポイントを押さえましょう。
- 介護記録の様式や情報共有の方法を見直す
- 利用者家族など関係者の理解を得る
- 介護スタッフへの研修期間を長めに確保する
それぞれのポイントについて解説するので、参考にしてください。
介護記録の様式や情報共有の方法を見直す
電子化を実践するなら、介護記録の様式や情報共有の方法を積極的に見直しましょう。
介護記録の電子化を行えば業務フローが大きく変更されるため、導入する前に新しい様式や共有の方法を構築するとスムーズに定着しやすくなります。
何より、ICT機器をただ取り入れるだけだと、既存の業務フローだから生じていた課題の抜本的な解決ができません。
さらに既存の業務フローに慣れたままだと、ツールの定着が遅れる恐れもあります。
そのため、電子化を実施する際はプロセスそのものを見直し、新たなツールに適応した業務フローを再構築しましょう。
利用者家族など関係者の理解を得る
電子化された介護記録を使用するのは施設内のスタッフだけではありません。
業務によっては、利用者の家族や外部の業者などに記録を共有する可能性もあるでしょう。
そのため、電子化を実施する際は関係者にも報告し、新たな仕様がどれだけ影響するか事前に確認しましょう。
サービスの品質低下を防ぐためにも、利用者やその家族への影響は注意しなければなりません。
介護スタッフへの研修期間を長めに確保する
ICT機器を導入する際、介護スタッフへの研修期間は長めに確保しましょう。
とりわけITスキルが低いスタッフが多い施設は、ICTの定着を早めるうえでも丹念な研修が必要になります。
もしスタッフだけでの研修が難しいなら、ICT機器のベンダーの担当者を招いて実施しましょう。
導入前だけでなく、導入後も定期的に使用方法の確認や見直しを行う研修を行うとより効果的です。
また、無料で機器を試用できるトライアル期間を活用すれば、現場で実際に使用しながら研修が行えます。
介護記録は利用者の情報だけではなく、サービスを提供している証となるものでもあり非常に重要な記録であることは言うまでもありません。しかしながら、その重要な記録の多くが紙媒体で手書きとなってしまっているのが介護業界の特徴でもあります。更に同じ記録があちこちに点在し二度手間三度手間となっている施設も珍しくはありません。業務効率化のため記録をICT化していく事業所は徐々に増えています。ある施設では、ケアをしながら合間にインカムを用いて音声入力で記録を行うことで記録業務が週に17時間減少しました。この施設では、なかなか利用者の前で話しづらい内容も隠語(排便⇒△など)を用いて音声入力しています。このように記録業務において音声入力はかなり有効な手段であることがわかります。ぜひ参考にしてみてください。
介護記録の電子化にはワイズマンシステムSPがおすすめ
介護記録の電子化を行う際は、ぜひ弊社「ワイズマン」のワイズマンシステムSPをご活用ください。
ワイズマンシステムSPは全国でトップクラスのシェアを誇る介護システムであり、さまざまな運営形態の施設に対応しています。
ワイズマンシステムSPは汎用性が高いシステムであり、介護記録や請求書など各種書類の電子化はもちろん、あらゆる事務作業を支援する機能を備えています。
加えて操作性が高く、デジタルツールに不慣れなスタッフでも簡単に操作が可能です。
さらにワイズマンシステムSPは施設に合わせて導入形態を調整できるため、施設の環境に合わせて取り入れられる点も魅力です。
介護記録の電子化をスムーズに進めるなら、ぜひワイズマンシステムSPを試してください。
なお、株式会社ワイズマンでは「介護・福祉向け製品総合パンフレット」を無料で配布中です。
手軽に業務改善を始めたいとお考えの方は是非ご活用ください。
介護記録の電子化で業務のさらなる効率化を実現
介護記録の電子化は煩雑な事務作業を効率化し、スタッフの負担軽減やサービスの品質向上を実現する施策です。
実際、電子化を実践した施設は事務作業にかける時間の削減や、円滑な情報共有などに成功しています。
他方で、介護記録の電子化は現場の環境や課題に合わせて、適切な手順を踏まえて実践する必要があります。
場合によっては業務フローの見直しやスタッフへの入念な研修を実施する必要があるでしょう。
もちろん、電子化をスムーズに実現するツールを選定しなければなりません。
実際に介護記録の電子化に着手する際は、ぜひワイズマンシステムSPをご活用ください。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。