介護業務の見える化とは?可視化すべき項目とやり方を解説
2023.12.06
介護業務は、計画通りに進むことの少ない、予測不可能な挑戦の連続です。
スタッフ一人ひとりが抱える業務の進捗が見えにくく、どうすればその一瞬一瞬を明確に捉え、効率的に管理できるのか、多くの介護現場で頭を悩ませていることでしょう。
こうした中で、「介護業務の見える化」という概念が注目されています。
しかし、見える化を実現するには、「どのような項目を可視化すべきなのか」、「具体的にどのように進めれば良いのか」とお悩みの方も多いでしょう。
この記事では、介護業務の見える化について、可視化すべき項目とその具体的な方法を解説します。
介護業務を一段とスムーズに、そして透明性のあるものに変えていくためにお役立てください。
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目次
介護業務の見える化とは?
介護業務の見える化とは、介護の現場で行われるさまざまな業務のプロセスや手順を明確にし、効率的な運営を実現するための手法です。
具体的には、
- 利用者の健康状態
- 介護プラン
- スタッフのシフトや業務進捗
など、多岐にわたる情報を整理し、可視化することを指します。
これにより、利用者のニーズに合った適切な介護サービスの提供を可能とするだけでなく、スタッフの働きやすい環境も整えます。
また、介護業務の見える化には、デジタルツールの活用が欠かせません。
タブレットやスマートフォンを利用して、利用者の健康状態や介護プランをリアルタイムに共有することで、スタッフ間のコミュニケーションが円滑になり、より効率的な業務が可能です。
なお、見える化により、利用者の健康状態や介護プランの変更が容易になり、より柔軟な対応が可能となり、利用者の満足度向上にも寄与するでしょう。
介護業務の見える化は、利用者にとっても、スタッフにとってもメリットが多い取り組みです。
介護業務を可視化する目的
もし「見える化をすれば、業務効率が上がる」という考えだけで取り組もうとしているなら、少し立ち止まって考えてください。
そもそも何のために見える化をするのでしょうか。
それは、業務の効率化や品質の向上、最終的には利用者とスタッフ双方の満足度を高めることでしょう。
ここでは、見える化の目的がどこにあるのか、3つの着眼点について解説していきます。
業務改善による効率化の実現
介護業務の中には、日常的に行われているため気づきにくい無駄や課題が多く潜んでいます。
そのため、介護現場の課題や潜在リスクの明確化は、業務の質を向上させるための具体的なアクションを計画する材料となるでしょう。
例えば介護業務では、利用者の健康状態や介護の必要度に応じて、適切なケアの提供が求められます。
もし業務の中での情報共有が不十分であったり記録が不足していると、利用者のニーズに合わせたケアは困難です。
このような課題の早期把握と改善は、利用者のためのより質の高いサービス提供を可能にします。
また、業務の見える化は、スタッフ間の課題共有を通じてコミュニケーションもスムーズにします。
このように、業務の見える化は、チーム全体での課題解決を促進し、業務の質を向上させる大きな力となるでしょう。
介護ソフト・ツールの導入
適切な介護ソフトやツールを導入するには、プロセスやフローの把握が重要です。
ツールの利用で、業務の進捗状況やスタッフの配置などを一元管理し、業務の見える化が実現できます。
一方、ツールやソフトウェアを導入しない場合、業務の進捗状況やスタッフの配置が手作業となり、非常に多くの時間と労力がかかるでしょう。
また、情報の共有も難しくなり、部署間の連携やスタッフ同士の協力が阻害される可能性があります。
サービスの質が低下し、利用者満足度の低下にもつながるでしょう。
業務の見える化は、部署間の連携を強化し、スタッフ同士の協力促進に効果的です。
より良いサービスや商品の提供が可能となり、利用者の満足度の向上にも寄与します。
また、新人教育もスムーズに進み、組織全体のパフォーマンス向上も見込めます。
そのため、介護業務の効率化を図るためには、業務の見える化を実現するための適切なツールやソフトウェアの導入が重要です。
内部統制の整備
内部統制とは、企業の経営者が自らの組織を適切にコントロールし、業務の透明性を高め、信頼性のあるサービスを提供するための仕組みのことです。
内部統制の整備は、個人の努力だけでなく組織全体で自らを律し、不正や不法行為を防いで組織全体の健全な運営を支える役割を果たします。
特に介護業界は、内部統制の整備が遅れていると言われています。
そのため、内部統制の整備は業務の効率化と、より質の高いサービスの提供につながるでしょう。
具体的には、業務の進捗状況やスタッフの配置などを一元管理するツールやソフトウェアの導入が有効です。
介護業界においても内部統制の整備は重要であり、組織全体の健全な運営を支えるためにも、積極的な取り組みが求められます。
介護業務で見える化すべき4つの項目
介護業務の見える化において、そもそも何のために見える化に取り組むのか、目的を明らかにした次は、何を可視化すべきか、見える化する対象を明らかにしましょう。
可視化すべき項目は、取り組みの目的によっても異なります。
ただ、ほとんどの場合、以下4つのすべて、又はいずれかの組み合わせで、自施設の現状を把握します。
- 介護施設の業務プロセス
- 各介護業務に課したルール
- 介護スタッフごとの業務状況
- 介護スタッフが持つスキル・ノウハウ
本章では、上記の項目を見える化するメリットを紹介します。
介護施設の業務プロセス
介護施設の運営をより効率的かつスムーズに行うためには、業務プロセスの細分化と可視化が効果的です。
業務プロセスを可視化すると以下のようなメリットがあります。
- 業務の流れと責任範囲の明確化
業務プロセスの可視化で、各スタッフの責任範囲や業務の流れが明確になります。
業務の進行状況や責任者が一目でわかるため、コミュニケーションの効率化が図れるでしょう。 - リソースの適切な配分
業務プロセスの可視化により、どの業務にどれだけのリソースが必要かがわかります。
リソースの適切な配分が可能となり、無駄なく効率的な運営が実現可能です。 - スタッフのモチベーション向上
業務プロセスの可視化により、スタッフが自施設の運営にどのように貢献しているかを理解し、スタッフのモチベーション向上に寄与します。
各介護業務に課したルール
介護施設において、安全かつ効率的なサービス提供を実現するためには、各業務において課されたルールの可視化が必要です。
スタッフが適切な手順や基準を理解し、これらのルールを遵守することで、スタッフが自分の責任範囲や業務の流れを明確に把握できます。
また、各業務のルールの可視化で、スタッフ間のコミュニケーションの円滑化、チームワークの向上が期待できます。
さらに、新しいスタッフの教育や研修が効率的に行えるようになり、全体の生産性の向上も期待できます。
介護スタッフごとの業務状況
介護スタッフごとの業務状況の可視化で、スタッフの勤務状況や担当業務の進捗を一目で把握できます。
これにより、業務の効率化やスタッフ間の連携強化が期待できるでしょう。
また、スタッフの負担を均等に分配し、ワークライフバランスの実現にも寄与します。
- スタッフの勤務時間や休憩時間を把握
- 担当業務の進捗状況をリアルタイムに確認
- 業務の進捗状況やスタッフの負担を適切に管理
など、必要に応じて業務の調整や人員の配置転換が可能です。
さらに、介護スタッフごとの業務状況の可視化は、スタッフのモチベーション向上や自己管理能力の向上も期待できるでしょう。
介護スタッフが持つスキル・ノウハウ
介護スタッフが持つスキルやノウハウの共有は、施設全体のサービス品質の向上につながります。
例えば、ある介護スタッフが持つ知識や経験を共有すると、新人教育の効率化や、スタッフ間のスキルの均一化が期待できます。
また、特定のノウハウの共有で、より効果的かつ現場に即した介護サービスの提供も可能となるでしょう。
スキル・ノウハウの共有は、他のスタッフもその技術を学び、利用者に対してより質の高いサービス提供を可能とし、結果的に利用者全体の満足度の向上に寄与します。
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介護業務を見える化する手順
介護業務を見える化する手順は、以下のとおりです。
- 見える化する目的と調査対象を設定
- 見える化に必要な情報を収集
- 集めた情報を整理・分析
- 仮説を立て実行
手順の確認は、取り組みの全体像を把握する非常に重要なプロセスです。
この章では、見える化の手順を具体的に4つのステップに分けて説明します。
1.見える化する目的と調査対象を設定
介護業務を見える化する手順の中でもっとも重要なステップが、見える化の目的と調査対象の明確な設定です。
目的を設定しないと、どの業務を見える化すべきか、どのような改善が期待できるのかが不明確になり、結果として効果的な業務改善を困難にします。
また、調査対象を設定せずに見える化に取り組んだ場合、無駄な時間やリソースの削減ができず、効率的な業務改善が進まない可能性が高まります。
以下に具体例を挙げます。
- スタッフの勤務時間や休憩時間
- スタッフの研修や資格取得状況
- スタッフの担当業務や作業進捗
- 利用者ごとの介護計画や進捗状況
- 利用者の健康状態や病歴
- 介護用品の在庫管理や発注状況
以上の例を参考に可視化に取り組んでみてはいかがでしょうか。
2.見える化に必要な情報を収集
見える化に必要な情報を収集する際には、現状の介護業務の内容や手順、各スタッフの作業進捗などの可視化が重要です。
これにより、生産性向上やコスト削減の実現が期待できます。
以下の4つの要素を明確にしましょう。
- 業務プロセス: 作業手順を文書や図解で整理し、社内でアクセスしやすい形で共有します。
- 知識: 各社員の専門知識や経験、技能を集約し、チーム全体の能力向上を図ります。
- スケジュール: 作業計画を視覚化し、社員の作業内容や位置を一目で確認できるようにします。
- 作業進行: 作業の進行度の公開で、納期遅れなどのリスクを未然に防ぎます。
これらの情報の可視化で、業務の効率化を図ることができるでしょう。
3.集めた情報を整理・分析
次に、集めた情報を整理・分析します。これにより具体的な介護業務のボトルネックが明確になり、無駄な作業を削減できます。
また、収集したデータから有益な情報を抽出し、問題点や改善策の明確化が可能です。
一方で、情報を整理・分析しない場合、問題点や改善策が見えなくなり、業務の非効率や品質の低下を招く可能性があります。
せっかく集めた情報を有効に活用するためにも、このプロセスを大切にしてください。
4.仮説を立て実行
介護業務の見える化を進める際には、仮説を立てた上での実行が重要です。
まずは、現状の業務フローやタスクの進捗状況を分析し、非効率な点や改善可能な領域を特定しましょう。
次に、これらの情報を基に仮説を立てます。
例えば「このプロセスを自動化すると、作業時間が20%短縮される」といった具体的な目標を設定し、小規模なテストを行い、仮説の検証をしてみましょう。
成功すれば、それを他部署に展開し、業務改善へとつなげます。
スタッフの意見など現場のフィードバックを取り入れながら、柔軟に調整を行うことが大切です。
介護業務を見える化するための3つのコツ
ここまで介護業務の見える化の目的や項目、手順などを説明してきましたが、具体的な手法とその実践が不可欠です。
ここでは、見える化の実践に際し、業務の効率化を図るための3つのコツを紹介し、それぞれのアプローチによってどのように業務改善が図れるのかを掘り下げていきます。
見える化のゴールを明確にする
繰り返しになりますが、見える化の取り組みにおけるゴールの明確化は、業務改善のために非常に重要です。
「何のための見える化なのか」というゴールが不明瞭であれば、目の前にある取り組みの意義が見いだせず、スタッフの協力を得ることも困難です。
以下のようなゴールを一例として参考にしてください。
- 現在携わっている業務の効率を上げる
- サービス全体の品質を向上させる
- スタッフが働きやすい現場にする
見える化のゴールは、もちろん経営面でのメリットもありますが、なるべく介護現場に携わるすべての人が笑顔になれるようなゴール設定が望ましいです。
なお、スタッフ全員がゴールを共有できるよう、具体的な目標設定を心がけましょう。
介護スタッフに協力してもらう
介護業務の見える化を進めるには、スタッフの協力が不可欠です。
業務フローやタスクの進捗状況を共有し、それぞれの知識や経験を活かした改善提案を促すことは、見える化につながります。
例えば、業務フローを見える化すると、スタッフ間の責任範囲が明瞭になり、誤認を減らし、効率的な業務進行を促すことができるでしょう。
また、ナレッジの共有はスタッフ全員のスキルアップにつながり、質の高いケアの提供に役立ちます。
さらに、スケジュールの詳細な共有によって、スタッフの勤務状況が明確になり、連携がスムーズになるでしょう。
これらの取り組みは、スタッフ一人ひとりが業務の一部として自らの貢献を認識し、モチベーションの向上にもつながります。
介護業界そのものが業務改善が少ない業種であるため、何のための取り組むであるのか正確に伝わっていないと、人事評価のためのヒアリングと誤解されかねません。
あらためて、取り組みそのものの理解と協力を仰ぐことが重要です。
Excelのテンプレートやツールを活用する
介護業務を見える化する際、Excelのテンプレートやツールは大変有効です。
例えば、業務フローやタスクの進捗状況を表にまとめることで、一目で現状を把握でき、次のアクションの迅速な決定が可能です。
介護の現場でのタイムスケジュール管理や、利用者の情報管理など、日々の業務をスムーズに進めるためのさまざまなテンプレートが無料で手に入ります。
一度実際に操作してみると業務改善のイメージがしやすくなります。
これらのツールの使用は、業務の効率化はもちろん、ミスの削減やコミュニケーションの向上にも寄与し、結果として質の高いケアの提供につながります。
また、Excelは多くの人が基本操作を理解しているため、新しいシステムの導入に伴う研修の時間やコストを削減できるというのもメリットの一つです。
介護付き有料老人ホーム(特定施設)など包括報酬の施設では、介護度は低い(要支援、要介護1など)けれども、利用者本人やその家族などで『声の大きい』方々に対し、より多くのサービスを提供せざるを得ないケースが数多くあります。こういった介護度が軽い方に多くの時間を使わざるを得なくなった結果、本当にケアが必要な重たい方への時間が削られてしまうようなケースも珍しいことではありません。ある法人ではこのような状況を改善するために、介護度毎の援助時間を決め、それを元に細かく業務表を作成しました。その結果、介護度毎に適正なサービス提供時間となり、またサービス内容も精査することができ、業務効率も格段に向上し、更にはスタッフ満足度もこの業務表活用により大幅に改善しました。まずはサービスの棚卸しから始めてみましょう。
介護業務の効率化にはワイズマンソリューションがおすすめ
ワイズマンソリューションは、介護業務の効率化においてその実用性と利便性で高い評価を得ています。
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この記録支援ソフトは、タブレット一つで記録入力から情報参照、帳票印刷までを可能にし、訪問先での記録により転記作業の手間を大幅に削減します。
利用者の基本情報はもちろん、介護の状況や医療状況なども一目で確認でき、ファイルの持ち運びが不要になるため、外出時の負担が軽減されます。
介護業務の効率化はもちろん、スタッフ間のコミュニケーションの向上、サービスの質の向上をお求めの方には、ワイズマンソリューションを検討してみてはいかがでしょうか。
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まとめ
本記事では、介護業務の見える化について詳しく解説してきました。
見える化とは、介護の現場でのさまざまな業務プロセスや手順を明確にし、効率的な運営を実現する手法です。
具体的には、利用者の健康状態、介護プラン、スタッフのシフトや業務進捗など、多岐にわたる情報を整理し、可視化することが重要です。
また、介護ソフトやツールの導入により、内部統制の整備や業務プロセスの改善が図れることもお伝えしました。
この記事が、介護業務の見える化に取り組む方のお役に立てれば幸いです。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。