介護保険請求の手順とは?基本的な仕組みと返戻の対処法を解説
2023.12.06
介護業界では、介護サービスの費用を国保連合会へ請求するレセプト業務が発生します。
レセプト業務を行うには、介護保険請求の仕組みと手順を把握して、必要書類を提出する必要があります。
レセプト業務を正確に行うために、介護請求の仕組みや手順について確認しておきましょう。
この記事では、介護保険請求の手順について、基本的な仕組みを併せて解説します。
介護請求で払戻が生じる理由と対処法も解説しますので、最後まで読んでレセプト業務を正確に行いましょう。
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介護ソフトの導入時によくある問題と対策についても記載していますので是非ご活用ください。
目次
介護保険請求の重要性
介護保険請求が重要な理由は、レセプト業務を正確に行わなければ介護事業所の収益が減少してしまうからです。
そもそも介護保険請求とは、介護施設が利用者に介護サービスを提供する際の費用を、事業所が一部負担して国保連(国民健康保険団体連合会)に請求することを指します。
介護サービスでは、利用者が費用の1割や2割を負担し、残りの差額を介護給付費として介護事業者が立て替えます。
いったん立て替えた費用を国保連へ請求して給付金を支払ってもらうために、介護保険請求(レセプト業務)が必要です。
レセプト業務をしなければ、立て替えたサービス利用額を事業所が負担することになり、収益が減少してしまいます。
事業所の収益を減少させないためにも、介護保険請求の仕組みと手順を正確に把握しなければなりません。
【事業所別】介護保険請求の仕組み・流れ
介護保険請求の仕組みや流れを把握するためには、介護業界における事業所ごとの違いを理解しておく必要があります。
介護業界における事業所は、主に次の2種類があります。
- 居宅介護支援事業所
- 居宅サービス事業所
居宅介護支援事業所は、医療・保険・福祉など介護に関する知識を有するケアマネージャーが在中している事業所です。
介護に関する相談やケアプランの作成、要介護者の課題分析や関係者間の連絡業務など、サービス利用者の課題分析や計画作成を行います。
対して、居宅サービス事業所は、実際にケアサービスを提供する事業所です。主に次のようなサービスを提供している事業所が、居宅サービス事業所に該当します。
- 訪問介護
- 訪問入浴介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
- 特定施設入所者生活介護
- 特定福祉用具販売
- 福祉用具貸与
居宅介護支援事業所と居宅サービス事業所では、対応する業務内容が異なるため、介護保険請求の流れが異なります。
各事業所ごとに介護保険請求の仕組みと流れを解説しますので、正確にレセプト業務を行えるよう違いを確認しておきましょう。
居宅介護支援事業所
居宅介護支援事業所が介護保険請求を行う仕組み・流れは、次のとおりです。
- 利用者からケアサービス計画の作成を依頼される
- 利用者の状態把握・課題分析を行う
- ケアプラン・利用票を作成・説明する
- 居宅サービス事業所へサービス提供依頼する
- サービス提供書を交付する
- 居宅サービス事業所から実績報告を受ける
- 必要書類を作成し国保連へ請求する
- 国保連から介護給付金が支給される
まず利用者や家族から、居宅介護支援事業所にケアサービス計画の作成を依頼されます。
ケアプランを作成するために、利用者の状態を把握・課題分析を行うため、ヒアリング・アセスメントを実施します。
次に、ケアプラン・利用票を作成し、利用者と家族に内容を説明し同意を得てください。
居宅サービス事業所へ、ケアサービスを依頼してサービス提供書を交付します。翌月に居宅サービス事業所から、前月の実績が報告されます。
実績を確認して、介護保険請求に必要な書類を作成し、国保連へ提出しましょう。請求が受理されれば、国保連より居宅介護支援費が支給される仕組みです。
なお介護保険請求のスケジュールとしては、サービス提供月から2ヶ月後の月末に国保連から居宅介護支援費が支払われます。
国保連から支援費が支給されるまでの2ヶ月間は、施設側がサービス費用を立て替える必要があるため注意が必要です。
居宅サービス事業所
居宅サービス事業所の介護保険請求の仕組み・流れは、次のとおりです。
- 支援事業所からサービスを依頼される
- 利用者と契約しアセスメントを実施する
- ケアプランに沿った介護計画書を作成する
- 介護計画書の内容を説明する
- ケアサービスを実施する
- 対象月の実績を支援事業所へ報告する
- 国保連へ書類提出・利用者へサービス費用を請求する
- 国保連より給付金が支給される
居宅サービス事業所は、居宅介護支援事業所からサービス提供を依頼されてから、利用者と契約を結びます。
利用者の状態を把握するためにアセスメントを実施し、居宅介護支援事業所から受け取ったケアプランの内容に沿って介護計画書を作成しましょう。
居宅介護支援事業所と利用者、その家族に介護計画書の内容を説明し、同意を得られれば内容に沿ってケアサービスを実施します。
1ヶ月の実績を居宅介護支援事業所へ送り、レセプト業務に必要な書類を国保連へ提出する流れです。
なお、給付金の支給はサービス提供月の2ヶ月後の月末です。
そのため、事業所としては給付金が支給されるまでの期間、サービス費用を立て替える資金を用意しておかなければなりません。
居宅サービス事業所を運営するためには、余裕を持った資金運用が必要です。
事業所別に見た介護保険請求での提出書類
介護保険請求を行う際には、国保連への提出書類を用意しなければなりません。
スムーズに介護保険請求を行うために、居宅介護支援事業所と居宅サービス事業所の事業所別に必要な提出書類を把握しておきましょう。
居宅介護支援事業所の提出書類
居宅介護支援事業所がレセプト業務を行う際の必要書類は、次のとおりです。
- 介護給付費請求書
- 居宅介護支援費明細書
- 給付管理総括票
- 給付管理票
「介護給付費請求書」「介護給付費明細書」は、居宅介護サービスの計画費やサービス調整などに関する費用として提出します。
あくまで介護サービスの提供に関わる書類ではないのでご注意ください。
なお、居宅介護支援事業所がレセプト業務を行う際の流れは、次のとおりです。
- 介護ケアサービスの実績を確認する
- 実績と提供書を照合する
- 帳票の作成・集計を行う
- 国保連へ必要書類を提出する
まずレセプト業務を行うために、当月対象のケアサービスの実績を確認してください。
介護請求ソフトに実績を入力する場合は、サービス提供書と照合し入力内容に誤りがないかチェックします。
居宅介護支援事業所が入力した実績と、居宅サービス事業所から送られてきたサービス提供書の内容に相違がある場合は、連絡を取り合い修正しなければなりません。
請求内容に誤り・漏れがないか確認した後は、国保連へ介護保険を請求するための必要書類を作成します。
必要書類を伝送や電子請求ソフトで国保連へ送り、介護保険請求を行います。
なお必要書類を提出する方法は、各国保連のホームページより確認しておきましょう。
居宅サービス事業所の提出書類
居宅サービス事業所が国保連へ提出する必要書類は、次のとおりです。
- 介護給付費請求書
- 介護給付費明細書
居宅サービス事業所がレセプト業務を行う際の流れとして、次の手順を踏みます。
- 介護ケアサービスの実績を居宅介護支援事業所へ送る
- 実績と提供書を照合する
- 帳票の作成・集計を行う
- 国保連へ必要書類を提出する
居宅サービス事業所では、まず請求対象月に実施したケアサービスの実績をサービス提供書などにまとめます。
作成したサービス提供書を居宅介護支援事業所へ送って、実績の報告を行いましょう。
その後、介護請求ソフトなどで実績入力を行い、内容に相違がないか確認してください。
実績内容に相違がない場合は、国保連へ送る必要書類を作成します。必要書類を用意できれば、伝送や電子請求ソフトで国保連へ送ります。
居宅介護支援事業所と居宅サービス事業所のどちらも、請求対象月の実績を確認して必要書類の作成・準備を行い、国保連へ請求するまでがレセプト業務の流れです。
一連の手順を把握して、スムーズにレセプト業務を実施しましょう。
介護保険請求の返戻が生じる主な理由とその対処法
介護保険請求をした金額が、すべて国保連より支払われるとは限りません。
レセプト業務を行うと、国保連や支払基金がレセプト内容をチェックし、内容に不備や虚偽がないかを調べます。
レセプト内容に不備が生じた場合には、レセプトを返戻されて介護保険請求が却下されます。
レセプト業務をスムーズに実施するためには「なぜレセプトが返戻されるのか」理由を把握しておくことが重要です。
さらに請求書類が返戻された場合の対処法を知っておけば、万が一返戻されてもあらためて介護保険請求を行なえます。
レセプト業務をスムーズに実施するために、次のポイントを押さえておきましょう。
- 介護保険請求が返戻となる主な3つの理由
- 請求書類が返戻された場合の対処法
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介護保険請求が返戻となる主な3つの理由
介護保険請求が返戻となる主な理由は、次の3つです。
- 事務手続きに誤りがあった
- 利用者が要介護者でなかった
- 利用者の明細書が重複した
まず利用サービス内容や金額など書類内容に誤りがあった場合は、レセプトが返戻されます。
レセプトの返戻を防ぐためにも、国保連へ必要書類を提出する前に確認を徹底しておきましょう。
次に利用者が要介護者に該当していなかった場合は、レセプトが返戻されます。
介護保険制度は、要介護者の負担軽減を目的とした制度のため、要介護認定されていない利用者には適応されません。
要介護者の認定日や喪失日を確認しておきましょう。
もう1つのレセプトが返戻される理由としては、利用者の明細書が月に2回以上提出されている場合です。
介護保険請求では1回目の請求内容が支払い対象となり、同月に提出された2回目以降の書類はすべて返戻されます。
そのため1回目の請求内容が誤っている場合は、請求を取り下げて介護給付費過誤決定通知書が送られてから、正しい請求を送り直さなければなりません。
請求を取り下げてから再度新たに請求する手間を防ぐため、初回の申請時にレセプトの内容をしっかり確認しておきましょう。
請求書類が返戻された場合の対処法
介護保険請求が返戻された場合は、新たに書類や電子レセプトを作成するのではなく、差し戻された書類を訂正して再請求します。
請求書類が返戻された場合の対処法として、次のように再請求しましょう。
- 訂正箇所を確認
- 不要箇所を横線で抹消
- 修正内容を追記
まず返戻された書類の訂正箇所を確認してください。
不要な箇所や誤りがある箇所を、横線で抹消して正しい内容を記入すれば修正完了です。
介護保険の請求業務には介護ソフトの活用がおすすめ
介護保険の請求業務を効率化するために、介護ソフトの活用がおすすめです。
介護ソフトの中でも請求機能が備わった「介護請求ソフト」を活用すれば、介護保険請求に関わる業務負担を軽減できます。
介護ソフトを導入することで、得られる次のメリットを把握して、導入を検討してください。
- 介護請求書の作成を効率化できる
- アラート機能で返戻のリスクを回避できる
- 介護保険請求以外の介護業務も効率化できる
それぞれのメリットを確認して、事業所の課題を解消できる介護ソフトを導入しましょう。
介護請求書の作成を効率化できる
介護ソフトを導入すれば、介護請求書の作成を効率化できます。
介護ソフトは、ケアプランやサービス提供書をクラウド上で管理し、実績から請求金額を自動計算できます。
そのため請求内容と実績に相違が生じずに、金額の計算ミスや記入欄の記載ミスを軽減可能です。
請求書の作成業務にかかる人的リソースを軽減して書類作成を完結できるため、生産性向上にもつながります。
Excelや紙媒体の手動作業で請求書を作成している企業は、介護ソフトを導入して業務効率を向上させましょう。
業務効率が向上すれば、従業員の負担を軽減してエンゲージメント向上につながります。
アラート機能で返戻のリスクを回避できる
介護ソフトを導入すれば、アラート機能によって返戻のリスクを回避できます。
介護ソフトを使わずに、紙媒体の書類で介護保険請求をしている場合は、サービス提供書の実績を手動で転記しなければなりません。
人が手動で行う転記作業にはミスが生じる可能性があり、レセプトが返戻されるリスクが生じます。
介護ソフトには、記載内容に誤りがあったり登録している基本情報と入力内容に相違があったりする場合に、アラートで知らせてくれる機能が搭載されています。
介護ソフトのアラート機能を活用すれば、人的ミスを軽減して返戻のリスクを回避できるでしょう。
介護保険請求以外の介護業務も効率化できる
介護ソフトには、請求業務に関する機能だけでなく、他の介護業務を効率化できる機能が備わっています。
例えば、クラウド上でケアプランやアセスメントを確認できるため、訪問介護の際にタブレットやスマートフォンから利用者の状態・カルテをチェック可能です。
他にもサービス提供書の記載をソフト上で行えるため、移動時間やスキマ時間にスマートフォンから事務作業を行なえます。
介護ソフトは、介護保険請求に関する業務以外の介護業務も効率化できるため、従業員の負担を軽減し生産性向上が期待できます。
人材不足や業務過多によって、従業員の負担が大きい課題に悩まされている企業は、介護ソフトを導入して業務全般の作業効率を向上させてください。
国保連への請求業務を紙媒体で実施している事業所は最近では殆ど見なくなりました。しかしながら、居宅介護支援事業所と居宅サービス事業所間のやり取りはほぼ紙媒体でのやり取りとなっているのが現状です。各サービス事業所は送られてきた提供票に手書きで実績を書き込み、それを自分たちのシステムに入力し、それを印刷して持参(もしくはFAX送付)するという何度手間なんだろう?という状況になっている事業所は多いのではないでしょうか。このようになってしまう背景には各システム間に互換性がなく、データでやり取りできなかったことも要因のひとつです。こうした課題を解決するために国が構築したのがケアプランデータ連携システムです。まだ課題の多いシステムですが、活用を見据えて自事業所のシステムも検討していきましょう。
介護業務のワンストップ管理には「ワイズマンソリューション」
ワイズマンが提供するソリューションを活用すれば、保険請求業務をワンストップで管理ができます。
また、ワイズマンは、居宅介護サービスや施設サービスなど、介護業界に関わる業務負担を軽減するシステムを豊富に取り扱っています。
例えば、訪問介護に関わる業務負担を軽減したい場合は、訪問サービス向けケア記録支援ソフト「すぐろくHome」を導入しましょう。
「すぐろくHome」には、次のような機能が備わっています。
- 訪問予定管理
- 利用者情報管理
- 支援ノート共有
- 計画書作成・管理
- 訪問記録・管理
- 訪問介護報告書の作成・管理
クラウド上で利用者情報・ケアプラン・介護実績を記録・管理・共有できるため、訪問先や移動中でも情報閲覧・共有ができます。
オンラインで関係者間での情報共有を円滑化できるため、訪問介護に関わる業務を効率化可能です。
詳しくは、下記のボタンより資料をダウンロードできますので、介護ソフトの導入を検討している方はぜひご相談ください。
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すでに介護ソフトを導入していている方も、介護ソフトの入れ替えを検討している方も、自身に最適なプロダクトを選ぶために重要な4つのポイントを解説していますので是非ご活用ください。
まとめ
介護請求は、事業所の収益に影響を及ぼす重要な業務です。
居宅介護支援事業所と居宅サービス事業所では、介護請求に関する仕組みと流れが異なりますが、どちらも実績を書類にまとめて国保連へ提出しなければなりません。
提出書類に不備があった場合は、返戻されて請求を却下されてしまうため、事前に実績とのすり合わせ確認が必要です。
介護請求業務を効率化し人的ミスを防止して返戻を対処するために、介護ソフトの導入が推奨されます。
ワイズマンが提供するソリューションを活用すれば、介護請求を含む介護業務をワンストップ管理できます。
また、ワイズマンは介護現場を支えるさまざまな製品を提供しているため、自施設の課題にあったシステムを構築でき、業務の効率化や負担軽減を実現できるでしょう。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。