【2024年】介護保険制度はどう変わる?5つの変更点を解説
2024.01.16
介護保険制度の内容が改正されると、利用者の動向だけでなく、施設の経営や収益に大きな影響を及ぼします。
実際、2024年の介護保険制度改正は、以前の改正にはなかった取り組みが多く発表されており、介護業界からも注目されています。
今後も適切な施設運営を持続するうえでも、改正された事項は正確に把握しなければなりません。
本記事では、2024年度の介護保険制度改正について、5つの変更点を中心に解説します。
加えて、改正にあたって実施しなければならない取り組みや、新たに注目されているシステムについても紹介します。
ぜひ介護保険制度改正に備える際の参考にしてください。
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目次
【2024年】介護保険制度改正(介護報酬改正)の背景
2024年の介護保険制度改正において、高齢化社会の影響は無視できません。
昨今の日本は高齢化が進んでいるため、介護ニーズは今後ますます増加すると予測されています。
日本の高齢者人口は年々増加しており、とりわけ75歳以上の後期高齢者の人口の割合は急増すると見られています。
一方、高齢者を支える現役世代は年々減少しており、介護を担う若い人材も不足している状況です。
そのため、介護業界は人手不足が深刻化しており、人員配置基準の達成すら難しい施設も増えています。
このような状況に対し、介護業界は限られた人員で業務を回す体制作りや、介護ニーズに応えるための良質なケアの実現など、さまざまな課題を解決する必要があります。
加えて、2024年の介護保険制度改正では、12年ぶりの新サービスの創設や一部の業務の仕様を変更するなど、山積していた介護業界の課題にアプローチする内容が盛り込まれました。
他方で、介護事業所に課す新たな義務が設けられるなど、対応しなければならない取り組みもあります。
介護事業所は2024年の改正に先立ち、対策を講じていくことが重要です。
【2024年】介護保険制度改正5つのポイント
2024年の介護保険制度改正において、気をつけるべきポイントは以下の5つです。
- 財務諸表の公表を義務化
- 介護情報基盤の整備
- 居宅介護支援事業所も介護予防支援が可能に
- 科学的介護情報システムの「LIFE」の推進
- 介護サービス事業所の生産性の向上を支援
上記以外にも2割自己負担となる対象の拡大のように、利用者に影響を及ぼす改正事項もあります。
ただし、本記事では介護施設の経営やスタッフの業務に影響するポイントに絞って解説します。
1.財務諸表の公表を義務化
介護保険制度改正において、新たに財務諸表の公表の義務化が確定しました。
義務化に伴い、介護事業者は決算の終了後、定期的に財務諸表などの経営情報を都道府県知事に提出しなければなりません。
財務諸表の公表は経営状態が悪化し、赤字に転落する介護施設が増加している状況を受けて決定された取り組みです。
厚生労働省は介護施設の赤字化を防止するうえでも、財務諸表の公表を通じて、介護施設の財務状況や経営情報の「見える化」の推進は欠かせません。
実は、以前より財務諸表の公表は社会福祉法人や障がい福祉事業者を対象に義務化されていました。
しかし、罰則規定がなかったため、義務化しても財務諸表の提出数が低い状況が続いています。
そのため、2024年の介護保険制度改正では、財務諸表の公表の義務化の対象を拡大するだけでなく、未提出や虚偽の申告に対し、提出や是正を命令できる旨を記載した罰則規定を新たに設けています。
もし命令に従わなかった際は業務停止・指定取り消しが課せられます。
罰則規定が設けられた以上、介護事業所は必ず財務諸表の公表しなければならない点には注意しましょう。
他方で、介護事業の財務諸表は適切な会計処理を行う必要があるなど、より高度な専門性を求められる場面があります。
経理部門の負担が増えるリスクもあるため、介護事業所はスムーズかつ正確に会計処理ができる体制を整えましょう。
2.介護情報基盤の整備
介護保険制度改正に際し、市町村が介護情報を一元化し、電子情報として共有できる情報基盤の作成が決定されました。
介護情報基盤の整備は、施設のサービス提供をより効率的にするための取り組みです。
介護情報基盤の整備は地域支援事業として位置付けられており、自治体・介護事業者・医療機関が一体となって高齢者を支える地域包括ケアシステムを推進するために実施されます。
介護情報基盤の整備が進めば、利用者が介護情報を確認しやすくなり、自身の状態にマッチしたケアを受ける機会を増やせるでしょう。
また、介護事業者や医療機関も個々の利用者に合わせたケアを提供できるため、サービスの質の向上につながります。
加えて、介護情報の電子化が進むと書類のやり取りが減り、データでの情報共有が実現します。
紙媒体を使う必要がなくなれば、事務作業の負担が減るうえに、利用者へのケアに集中できる環境を構築しやすくなるでしょう。
3.居宅介護支援事業所も介護予防支援が可能に
介護予防支援が居宅介護支援事業所でも可能になった点も、保険制度改正において重大なポイントです。
改正の結果、居宅会議支援事業所も介護予防支援を実施できるようになりました。
介護予防支援とは「予防ケアプラン」とも呼ばれ、要支援者が介護予防ができるよう、介護予防サービスの計画書を作成し、介護事業者との連絡調整を行うサービスを指します。
以前まで、介護予防支援は地域包括支援センターが地域の居宅介護支援事業所に外部委託する形式で行われてきました。
しかし、介護予防支援は利用者を含めた多様な関係者との調整が必要など手間がかかる一方、介護報酬が安いため、受注を断る事業者が見られるようになりました。
加えて、外部委託で受注する形式だと介護サービスの扱いではなくなるため、介護事業所が負担する消費税が増加します。
つまり、介護予防支援は介護事象者の側からすれば、報酬が少ないうえに手間やコストかかる業務だと認識されていました。
しかし、居宅介護支援事業所でも介護予防支援の実施が可能になれば、介護サービスとして介護予防支援が実施できるため、消費税の負担が軽減されます。
さらに外部委託でなくなることにより、地域包括支援センターへ支払う手数料も不要になるため、よりコストを抑えて介護予防支援を実施できます。
4.科学的介護情報システムの「LIFE」の推進
保険制度改正において、科学的介護情報システムである「LIFE」の推進も注目しなければなりません。
LIFEの積極的な推進は、介護事象所が提供するサービスの質を向上させるために実施されます。
LIFEとは、利用者の状況や施設で実施しているケアプランなどを、インターネット上で厚生労働省と共有できるものです。
LIFEで共有された情報は厚生労働省で分析され、科学的なエビデンスに基づいてフィードバックされるため、施策の効果や課題などを明確にできます。
また、LIFEは介護事業所がPCDAサイクルを回し、業務の改善や施策の分析を実施するサポートができるシステムです。
無料で使用できるうえに、介護報酬に加算されるため、LIFEの導入は介護事業所にとっても大きなメリットになります。
LIFEを活用すれば介護だけでなく、医療のデータベースとも連携できるため、より利用者にマッチしたケアの提供が可能です。
他方で、LIFEを導入して加算を取得したり、フィードバックを得たりする際には、定期的なデータの提出が必要です。
サービスの利用を終了する際にもデータを提出しなければならないため、LIFEを導入する際は注意しましょう。
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5.介護サービス事業所の生産性の向上を支援
介護保険制度改正では、介護サービス事業所の生産性向上の支援も明示しています。
改正によって、厚生労働省は介護サービス事業所の生産性向上に対し、自治体を巻き込んだ施策を実施しています。
近年、人手不足が深刻化する介護業界にとって、少ない人数でも業務を回せる体制を作り、効率化によって生産性を向上させる取り組みは重要な課題です。
しかし、介護サービス事業所の自助努力だけでは限界がありました。
そのため、厚生労働省は介護サービス事業所の生産性向上に資する取り組みを、地方自治体の努力義務としました。
各自治体は介護保険事業計画で、生産性向上に資する事項や、都道府県との連携関する事項を任意記載事項として追加しなければなりません。
都道府県・市町村の役割が法令上に明記されるため、今後生産性向上に取り組む際は、地方自治体のバックアップが期待できます。
行政と介護事業者が手を取り合えば、生産性とサービスの質を向上する取り組みがスムーズに実現するでしょう。
2024年介護報酬改定に関しては、現政権の支持率低下など複数の要因により、プラス改定となる予測もあり、どことなく楽観的な空気を感じます(2023年12月現在)。しかし、仮にプラス改定になるとしても、おそらく本体報酬ではなく、加算報酬を新設・拡充する形での改定となるでしょう。つまりは、加算算定できない事業者にとってはマイナス改定になる可能性が高いということです。介護事業者はこの報酬改定の動向を見極めたうえでの事業経営が求められます。なかでも、LIFEは国がかなり力を入れており、科学的介護推進体制加算の要件である「6月に1回」のLIFEへのデータ提出を「3月に1回」に見直す案が審議されています(2023年12月15日現在)。LIFE対応可能なシステム導入を急ぎ進めていくことをお勧めいたします。
介護保険制度改正への対応力強化にはワイズマンソリューションがおすすめ
介護保険制度改正は新たなサービスを拡充する一方で、記録作業の電子化や提出する財務諸表の作成など、新たなルールや取り組みに対応しなければならない機会を増やします。
もし介護保険制度改正に向けて対応力を強化するなら、ワイズマンソリューションを活用しましょう。
弊社「ワイズマン」は、福祉・介護・医療に特化したソフトウェアを扱っており、介護業務の効率化や地域包括ケアシステムの構築を全面的にバックアップします。
さらに介護事業所の現状を分析したうえで、ソフトウェアの導入を全面的にサポートするため、初めて介護システムを導入する事業所でも安心して任せられるでしょう。
ワイズマンソリューションを活用すれば、煩雑だった業務の効率化や、アナログな作業で生じていたコストの削減を実現できます。
もちろん法制度の改正に合わせたシステムのアップデートもできるため、今後も介護保険制度の改正があってもスムーズな移行が可能です。
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ポイントを押さえて介護保険制度改正に対応しよう
2024年度の介護保険制度改正は、介護事業所に大きな影響を及ぼします。
複合型サービスの再定義・介護予防支援を実施する事業者の拡大・介護情報基盤の整備・LIFEの推進は、今後も一層高まる介護ニーズに応えるためにも欠かせない取り組みです。
介護事業所によっても、サービスの質の向上を実現できる機会になるでしょう。
一方、財務諸表の公表の義務化のように、介護事業所にとって新たな業務負担が発生する点には注意しましょう。
加えて、介護施設の生産性向上への支援を自治体が積極的に行う以上、従来の業務体制を見直す機会の増加も予測されます。
ワイズマンソリューションなら、介護保険制度改正に適応するだけでなく、介護事業所の生産性やサービスの質の向上を実現できます。
もし介護保険制度改正に向けて業務体制を刷新するなら、ぜひワイズマンソリューションを活用してください。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。