失敗しない!介護ソフトの選び方|自施設の課題に合わせて選定しよう

2024.01.16

導入する介護ソフトは、自社の課題や予算などを考慮し慎重に選ばなくてはなりません。
しかし、対象業務・特徴の異なる様々な介護ソフトが提供されており、どのように選べば良いか悩む方も多いでしょう。

また、導入には多くのコスト・労力がかかるため、失敗ができません。

本記事では、介護ソフトの選び方について解説します。
施設種別ごとの重要なポイントなども、ぜひ参考にしてください。

【基礎知識】介護ソフトとは?

介護ソフトとは、介護施設におけるさまざまな事務作業をサポートするシステムです。

元々は、介護報酬の請求業務を支援するためのシステムでした。
しかし、近年は「利用者管理」「介護計画の作成」「勤怠管理」などにも対応する多機能なソフトが数多く提供されています。

こうした多機能な介護ソフトでは、介護施設の業務効率化を目指せます。
ただその分、価格が高額に設定されているため、自施設の目的や解決したい課題などに合わせて精査することが大切です。

介護ソフトの比較ポイント

最近では多くのシステム会社から多種多様な介護ソフトが開発されています。
実際に選ぼうと思っても、どのような点に注目して検討すればいいのかも分からないかもしれません。

介護ソフトを比較する際には、下記の4点を確認してみましょう。

  • 介護ソフトの提供形態
  • 介護ソフトの対象範囲
  • 介護ソフトの導入コスト・運用コスト
  • 介護ソフトの操作性・既存業務への適合度

それぞれ順に紹介します。

ポイント1.介護ソフトの提供形態

介護ソフトは提供形態によって以下の3つに分類されます。

  • インストール型
  • サーバー設置型
  • クラウド型

それぞれの特徴は下記の表のとおりです。

提供型使用方法特徴
インストール型
(パッケージ型)
パソコンに介護ソフトをインストール〇サーバーの設置は不要
×低価格で利用が可能
サーバー設置型
(オンプレミス型)
施設内にサーバーを設置〇セキュリティ性が高い
〇回線トラブルの影響を受けない
×機器の購入費やサーバーの維持費がかかる
×バックアップなどのメンテナンスが必要
クラウド型インターネット経由でサーバーにアクセス〇管理はサーバー会社のため、管理が手軽
〇導入コストを抑えやすい
×インターネット回線のトラブル時は使用できない場合がある

施設の予算と管理体制、介護ソフトを導入する目的に合わせて、どの形態が適しているかを判断しましょう。

ポイント2.介護ソフトの対象範囲

介護ソフトは、搭載されている機能によってカバーできる業務が異なります。
また、特定の介護事業所に特化した製品もあるため、注意が必要です。

例えば、通所介護事業所に訪問サービス施設向けの介護ソフトを導入していては、必要な機能が備わっておらず、不要な機能が多いといったことになってしまいます。

主な介護事業者の種別と必要となる機能は、以下の通りです。

対象必要な機能
居宅介護支援利用者情報管理
介護保険請求
予実管理
リハビリ計画作成
利用料請求
連絡管理
データ集計
施設サービス利用者情報管理
介護保険
部屋管理
資料作成
介護保険請求利用料請求
データ集計
訪問サービス利用者情報管理
介護保険請求
ケアプラン作成
利用料請求
データ集計
通所サービス利用者情報管理
介護保険請求予実管理
個別援助計画
利用料請求
連絡管理
データ集計

ここで紹介した機能は、基本的なものです。
通所サービスであれば、送迎スケジュールの自動作成機能などが搭載されているシステムもあります。

自施設が対象となる介護ソフトを候補にあげましょう。

ポイント3.介護ソフトの導入コスト・運用コスト

3つ目は、介護ソフトの導入・運用にかかるコストです。
コストは介護ソフトに搭載されている機能やオプションによって異なります。

低価格がいい」、と金額だけを見て決めてしまうと必要な機能が入っていないというケースもあります。

また、低価格な介護ソフトでは、サポートサービスが限定的なケースも考えられます
コストを抑えられることも大切ですが、運用時をイメージして、必要な機能やサポート体制の有無は確認しておきましょう。

ポイント4.介護ソフトの操作性・既存業務への適合度

介護ソフトの使いやすさや、現状の業務を引き継ぎやすいかどうかも選定の大切なポイントです。

現状介護ソフトを導入していない施設では、電子端末の操作に不慣れな職員が多いでしょう。
操作が難しいと、職員が負担をかかえたり、現場に定着しづらかったりします。

操作性に優れた介護ソフトを選ぶには、デモ体験を行うのがおすすめです。
その製品を操作・仮運用できるため、介護職員が問題なく扱えるかを実際に確認できます。

なお、デモ体験時では、実際の運用を想定して業務の流れを確認しましょう。
カタログでは判断しづらい、業務とソフトの乖離を把握しやすく、より適合度の高い製品を選定できます。

【状況・業種別】介護ソフトの選び方

状況や介護施設の種別によって、介護ソフトの重要視したいポイントは多少、違いがあります。

ここでは、状況や業種ごとにおすすめの介護ソフトの選び方を紹介します。
自施設の状況に合ったところを参考にしてみてください。

新たに介護施設を開業する場合の選び方

新規で介護施設を開業する場合には、導入コストを重視して、クラウド型を検討してみましょう。

介護保険請求の都合上、開業して2ヶ月間は介護報酬の入金がなく、人件費などの費用も開業資金からやりくりしなければなりません。
そのため、介護ソフトの導入費用はその後の開業資金を圧迫するほか、2ヶ月間の運営資金にも影響を与えます。

開業時には、できるだけ資金の出費を抑えられるよう、クラウド型のソフトがおすすめです。

新たな介護ソフトへ乗り換える場合の選び方

既存の介護ソフトを乗り換える際には、下記のポイントに注目してみてください。

帳票要件

使用する書類作成が可能かどうかを確認してみましょう。
既存の書類の様式と同様、もしくは似たようなレイアウトにできるなど、現場への混乱が比較的おさえやすくなる対処が可能かどうかも重要です。

バッチ要件

バッチ要件とは、予実管理にかかわるデータ集計の機能が搭載されているかどうかです。
経営状態の把握は施設の運営にかかわるため、これまでに活用してきたデータなどがあれば、同様の集計が可能かどうかを確認しましょう。

データ要件

介護ソフトを乗り換える場合と、新規で介護ソフトを導入する場合のもっとも大きな違いが、データ要件です。
既存のデータの移行が可能かどうかや、移行方法を確認しましょう。

乗り換え先の介護ソフトだけでなく、既存の介護ソフトがデータ移行に対応しているかの確認も必要です。

なお、介護ソフトの乗り換え手順や製品の選び方は、以下の記事で詳しく解説しています。
新規ソフトへの移行をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。

関連記事:「介護ソフトの乗り換え手順|乗り換え前にやるべき準備と移行先の選び方

法改正への対応力を高めたい場合の選び方

2021年にスタートしたLIFEをはじめとする、さまざまな法改正によって、介護施設の業務は煩雑化しています。
施設が法改正にスムーズに対応していくには、法改正に対応している介護ソフトの導入がおすすめです。

特にLIFEは、申請する加算の種類によって入力項目が異なるなど、申請には手間がかかってしまいます。
現状では申請する余裕がなくLIFE申請を諦めているケースも見られます。

LIFEに対応している介護ソフトを導入することで、介護実績から申請書類の作成までの工数を減らすことが可能です。

また、介護報酬制度の変更時にすぐに対応可能か、ICT化の補助金の対象になっているかといった点も見極めやすいポイントです。
IT導入補助金やICT導入支援事業の対象であれば、比較的、対応力の強いシステムと考えられます。

通所介護で使う介護ソフトの選び方

通所介護施設に使用する介護ソフトは、下記の機能があると便利です。

  • 個別機能訓練加算の算定
  • 送迎管理
  • 利用者の予約管理
  • スタッフのシフト管理

ただし、施設の規模によって不要な場合もあります。
自施設で時間がかかり、効率化したい業務があれば、サポートできる機能があるか確認してみてください。

また、小規模の通所介護サービスでは、コストが大きくなりすぎると経営を圧迫してしまいます。
経営状態から導入コスト・運用コストの予算を正確に見積もり、オーバーしないように介護ソフトを選定します。

通所介護施設での介護ソフト導入については、下記の記事でも解説しています。
関連記事:「【業務効率化】通所介護ソフトの導入メリットや比較のポイントを解説

訪問介護で使う介護ソフトの選び方

訪問介護で使用する介護ソフトは、端末での操作ができるタイプがおすすめです。
訪問先で使用できるタブレットやスマートフォンなどの端末があれば、記録管理も訪問先で完了できます。

スタッフに端末の持ち帰りを許可していれば、事業所に寄らずとも、自宅から直接訪問するという働き方も実現可能です。

ただし、セキュリティ面では個人情報の取扱いに注意が必要なため、万が一の紛失や故障に備えて、サポート体制が手厚いと安心かもしれません。

また、通所介護同様に、コスト面は重視したいポイントです。
訪問介護事業所も、中小規模の場合が多いため、コストが大きくなってしまうのは避けた方がいいでしょう。

そのほか、訪問介護施設での介護ソフト導入については、下記でより詳しく解説しています。

関連記事:「介護支援システムの比較ポイント|タイプ別の特徴とやっておくべき3つの準備

サービス付き高齢者向け住宅で使う介護ソフトの選び方

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で使用する介護ソフトは、搭載されている機能に注目しましょう。

例えばセンサーやカメラ、バイタルによる介護者の容態チェック機能が付いていると、遠隔でも介護者の行動をある程度把握できます。
夜間の見回りの負担を減らせるため、スタッフの負担軽減につながります。

また、スムーズな情報共有が可能となるよう、連絡機能の使いやすさや見やすさも考慮しましょう。
昼夜でスタッフが交代する際に、介護者への情報がうまく行き渡らなければ介護サービスの見落としにつながりかねません。

使いやすい連絡機能がついていれば、申し送りもスムーズに進みます。
サービス付き高齢者向け住宅の介護ソフトについては下記でより詳しく解説しています。

関連記事:「サ高住の課題をシステムで解決!4つの導入メリットと選定ポイントを解説

複数の介護施設を管理する介護ソフトの選び方

複数の介護施設を管理する場合には、対象となるサービス種別に対応しているかを確認しましょう。
1つでも対応していない施設があると、連携しにくく、施設の運営に差が出てしまいます。

それぞれで別の介護ソフトを導入する方法では、結果的に費用がかさみやすくなるデメリットもあります。
また、仮にスタッフが同法人内の他の施設に一時的にヘルプに入った場合に、別のシステムになっていては、操作方法をいちから習得しなければならないという非効率的な状況になってしまうでしょう。

介護ソフトを統一しておくことで、ソフト使用に関するトラブルや課題が起きたときに、全施設で情報を共有しノウハウとして習得し合えることは大きなメリットです。

複数の介護施設で導入したい場合には、幅広いサービス種別に対応しているシステム会社を選びましょう。

介護ソフト選びで失敗しないための3つのポイント

介護ソフトを選定・導入する前に、下記の3つポイントについてあらためて確認してみましょう。

  • 自施設の課題・要件を明確にする
  • 中長期的な視点で介護ソフトを選定する
  • 信頼性のある提供会社を選ぶ

上記ポイントについて詳しく解説します。

自施設の課題・要件を明確にする

まず自施設のかかえる課題を把握することが大切です。
介護ソフトを導入しても、自施設の課題を解決できるものでなければ意味がありません。

課題や自施設の要件を明確にすると、どのような機能が必要で、どのような業務フローになればいいのか、といったイメージを持ちやすくなります。
介護ソフトを選ぶときにも、それぞれの機能が自施設に適しているのかを判断しやすくなるでしょう。

中長期的な視点で介護ソフトを選定する

現状の課題を解決するのはもちろんですが、将来的に起こりうる課題を想定して介護ソフトを選ぶことも重要なポイントです。

例えばLIFEの導入ですが、これまで申請しておらず、現状は申請が不要なままであっても、近い将来には申請が必須となる可能性も示唆されています。
介護報酬も、数年に一度は今後も継続して改定されるでしょう。

介護業界の変動に合わせて対応が可能な介護システムでなければ、法改正や制度の導入のたびに介護ソフトを乗り換えなければなりません。

そのため、現状だけでなく、中長期的視点で介護ソフトを検討しましょう。

信頼性のある提供会社を選ぶ

提供元となるシステム会社の信頼性も重要です。
極端な例ですが、導入直後に会社が倒産しては、その後のサポートや介護ソフトの相談を受けられません。

また、導入実績の多いシステム会社であれば、これまでの経験に基づく適切な提案を受けられる可能性が高いでしょう。
前述している、将来的な課題についても、これまでの実績や他施設の事例から、的確なアドバイスも期待できます。

もちろん、介護ソフトの要件も重要ですが、提供会社の実績や信頼性にも着目すると良いでしょう。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

これまで地域包括支援センターが担ってきた要支援者のケアマネジメントですが、居宅介護支援事業所(以下居宅)も指定対象に含めることが正式に決定しました。これをどのように捉えるかは、今後審議される報酬単価次第となるでしょう(2023年12月19日現在)。介護予防のケアマネジメントは、自治体によって予め使用するソフトが決められているケースがあります。このため、居宅では、普段利用しているソフトを介護予防プランでは使用できないといった事態が既にあちこちの自治体で起きているのです。報酬単価が低いうえに、使い慣れないソフトの使用を強いられるのも居宅が予防プランを敬遠する理由のひとつです。ソフトを選ぶ際には、ケアプランデータ連携システムの活用を含めて、ソフト間の互換性(今後も含め)にも着目していきましょう。

ワイズマンは全介護サービスをカバーする複数の製品をラインナップ

ワイズマンでは、幅広い介護サービスに対応する介護ソフトを展開しています。
全介護サービスをカバーしているため、今後の事業拡大などのサポートも可能です。

他施設との連携も強化

介護ソフトだけでなく、電子カルテやリハビリ管理システムも提供しているため、他施設との連携もよりスムーズになります。

オプションの「MeLL+(メルタス)」は、介護施設と医療機関だけでなく、家族との連携にも活用できます。
これまで家族への連絡は時間が合わなかったり、仕事中の家族に電話をかけなければいけなかったりと、職員の負担になっていました。

MeLL+では、連絡機能もあるため、ケア記録をそのまま家族へ共有したり、連絡事項をお知らせしたりできます。

【オプション】すぐろくTabletで効率化

介護現場ですぐに記録ができる「すぐろくTablet」も用意。
利用者の様子やケア内容を、現場でそのまま記録できるため、訪問介護などの現場で活用されています。

また、バイタル連携オプションを使えば、利用者のバイタルが記録に自動で反映させることも可能です。
メモしてから入力するといった作業が不要になるほか、転記ミスの防止につながります。

新規開業向けの介護ソフトも展開

新規開業される場合には、初期費用をできるだけ抑え、開業資金を圧迫しないことも重要です。

ワイズマンでは、新規開業される事業者様向けに「ワイズマン セカンドライン」を用意しています。
初期費用をかけずに、月額料金だけで利用できる介護ソフトサービスです。

居宅介護支援・訪問介護・通所介護に対応しており、データ移行もCSVファイル形式で簡単にできます。
新規開業だけでなく、既存の介護ソフトからの乗り換えを検討中の場合にも、比較して使用することが可能です。

まとめ

介護ソフトの選定には、自施設の現状把握からスタートすることが正攻法と言えるでしょう。
規模・予算・課題・将来像などを明確にしていれば、マッチする介護ソフトが見えてきます。

また、介護ソフトの導入では、実際に使用するスタッフの考えや反応を反映させることも忘れないようにしましょう。

介護ソフト導入の目的や課題解決の方向性が違うとなってしまっては、離職やスタッフの意識低下につながり、ソフトの選定とは関係なく失敗してしまうからです。

事業者も現場の介護スタッフも納得できる介護ソフトを導入できるよう、本記事が役立てば幸いです。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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