介護施設への見守りカメラ導入に補助金を活用できる?申請の要件や手順を解説
2024.06.12
介護施設では、人手不足やスタッフへの業務負担が課題となっています。
業務の効率化やより良いサービス提供のために見守りカメラの導入を検討している介護事業者も多いでしょう。
しかし、見守りカメラの導入に費用がかかることで、導入に踏み切れないという悩みもあるのではないでしょうか。
本記事では、見守りカメラを導入する際に活用できる補助金について解説します。
申請できる見守り機器の対象や手順など、ぜひ参考にしてください。
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目次
見守りカメラは「介護ロボット等導入支援事業補助金」の対象
見守りカメラは、居室内に設置したカメラで、利用者の様子をリアルタイムで観察できるものです。
画面内の動きを感知し、異常があった場合にはアラート音で知らせたり、別室から利用者の動きを確認できたりします。
常に見守りが必要な利用者がいる場合や、出入り口付近の動きを確認する場合に設置されています。
見守りカメラは、介護ロボットの普及を目的とした「介護ロボット等導入支援事業補助金」の対象です。
この補助金制度は、介護現場のスタッフへの負担軽減を目的とした介護ロボットの導入を推進するために立ち上げられました。
介護ロボットとは?
厚生労働省が進める「介護ロボットの開発・普及の促進」において、介護ロボットとは下記の要素・技術を有する、知能化した機械システムと定められています。
- 情報を感知(センサー系)
- 判断し(知能・制御系)
- 動作する(駆動系)
また、上記の要素に加え、ロボット技術を応用し、利用者の自立を支援したり、負担を軽減したりする機能が必要です。
具体的には、移乗支援のための装着型パワーアシストや移動支援のための歩行アシストカート、排泄支援のための自動排泄処理機などが介護ロボットに含まれます。
見守りカメラは介護ロボットのうちの一つ
見守りカメラは、介護ロボットの一分野に分類されます。
経済産業省と厚生労働省が支援する介護ロボットの開発支援では、重点分野を下記の5分野に分けました。
- 移乗支援
- 移動支援
- 排泄支援
- 入浴支援
- 見守り・コミュニケーション
見守り・コミュニケーションの分野における介護ロボットの定義は、「介護施設で使用するセンサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム」とされています。
また、見守り機器には下記の要件が定められます。
- 複数の要介護者を同時に見守ることができる
- 施設内の複数の介護従事者への情報共有が可能
- 昼夜を通して使用できる
- 要介護者からの自発的な助けを求める行動に依存しない
- 要介護者の動きがあった場合に介護従事者へ通知・通報できる
- 見守りプラットフォームとして、機能を拡張または他のシステムとの連携が可能
介護ロボット等導入支援事業補助金の概要
介護ロボット等導入支援事業補助金は、介護従事者の介護負担を軽減させることを目的とした取組みに対して、介護ロボットの導入に一定額の補助金を交付するものです。
厚生労働省が推進し、各自治体で実施されています。
補助金の対象
補助金の対象は、前述した介護ロボットの購入またはリースにかかる経費です。
この他、見守り機器の導入に伴う通信環境整備にかかる費用も対象です。
通信環境整備は、具体的に下記のようなものが挙げられます。
- Wi-Fi環境整備のための配線工事、モデム・ルーターなどの購入、取付費用
- インカム購入費
- 介護ロボットと連携可能な介護ソフトの導入費用
なお、介護ロボット等導入支援事業補助金には、市場的要件も設けられています。
要件内容は「販売価格が公表されており、一般に購入できる状態にあること」です。
補助金の対象要件を満たす介護ロボットについては経済産業省のロボットポータルサイトに紹介されています。
補助金額
介護ロボット1機器につき10万円が交付されます。
ただし、20万円未満の場合には価格に2分の1を乗じた額が交付されます。
また、1回あたりの限度台数は、施設・居住系サービスの場合、利用定員数を10で除した数を限度台数とし、1事業所あたりの交付額上限は300万円です。
なお、実際の補助金額は各自治体によって異なるため、自治体からの情報を確認してください。
見守りカメラ以外に補助金対象となるソリューション
見守りカメラの他にも、補助金の対象になる機器があります。
下記4機器の機能や特徴について紹介します。
- ベッドセンサー
- マットセンサー
- 赤外線センサー
- バイタルセンサー
ベッドセンサー
ベッドセンサーはベッドやシーツの下に敷き、利用者がベッドから起き上がった時や離床時に知らせてくれるセンサーです。
転倒リスクが高い利用者に導入すると、利用者が夜間にトイレなどで立ち上がった際、スタッフがすぐにそれを検知できます。
また、アラートによって即座に駆けつけられ、転倒リスクを軽減できます。
マットセンサー
マットセンサーとは、利用者がベッド下に敷いたマットを踏むと、アラートで通知してくれる機器です。
ベッドセンサーと同様、転倒リスクのある利用者が夜間に一人で立ち歩くのを防ぐために導入されます。
また、歩行可能な利用者が多数いる介護施設で、外へ出歩いてしまうのを防止するために、出入り口に設置する場合もあります。
赤外線センサー
赤外線センサーは、人がセンサーを設置した場所を通ると動きを感知し、即座に通知するシステムです。
バックヤードなど利用者が入ると危険な場所や外部へつながる出入口に設置すれば、人の出入りを管理できるため、利用者が施設外へ無断外出するリスクを回避できます。
バイタルセンサー
バイタルセンサーは、ベッドセンサーよりさらに利用者の様子を精密に把握できるセンサーです。
利用者の睡眠状況や脈拍、呼吸数を測定して連携するモニターに映し出します。
夜間にトイレ誘導やオムツ交換の必要がある利用者には覚醒中に声をかけるなど、利用者の睡眠をできるだけ妨げずにサービスの提供が可能です。
また、体調の急変にも気付けるなど、利用者の容態把握にも活用できます。
補助金申請の流れ
補助金申請の流れについて紹介します。
自治体によって要件が異なる場合があるため、必ず各自治体の公式発表に沿って申請しましょう。
大まかな流れは、下記のとおりです。
- 見守りカメラ(ほか、介護ロボット)の選定、見積もり
- 介護ロボット導入計画、事前協議書の作成
- 自治体へ申請 →自治体による審査、抽選など
- 補助金の交付決定(仮)の場合、通知受け取り
- 導入後、自治体へ実績報告
- 交付確定を受ける
- 補助金の受け取り
補助金が交付されるのは、見守り機器を導入した後です。
そのため、一度は事業所で導入費用を全額支払わなければいけません。
また、導入は交付が決定した年度の年度末までを期限としている自治体がほとんどです。
導入計画を作成する時点で、導入予定の見守りカメラや連携システムなどを明確にしておきましょう。
自治体によっては交付金の受け取り後、3年度間を目安に使用状況の報告の提出を求められる場合があります。
なお、申請時期は各自治体によって異なるため、前年度までの流れから、大まかなスケジュールを把握しましょう。
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令和5年度大阪府介護ロボット導入支援事業補助金の実績
大阪府の令和5年度介護ロボット導入支援事業補助金の予算額および交付事業者数は、以下のとおりでした。
予算額 | 約3億円 |
交付決定事業者数 | 57法人 57事業所 |
交付総額 | 約2億5千万円 |
(※令和5年11月22日時点)
本章では、大阪府の令和5年度介護ロボット導入支援事業補助金の流れや交付金額について紹介します。
募集の流れ(令和5年度 大阪府の場合)
大阪府の令和5年度の補助金申請では、ア~ウまでの優先順位を設けていました。
もっとも優先順位の高いのは「ア 過去に本補助金の交付を受けたことがなく、介護ロボットを導入していない事業所」です。
大阪府では、令和5年度の補助金申請に172法人218事業所がエントリーしました。
そのため、優先順位の高いアの事業所から、さらに法人優先順位にならべ(抽選)、1位から59位までが交付の対象となっています。
エントリー期間は8月23日から9月6日までとわずか2週間ほどで、9月中旬に抽選・結果発表が行われています。
エントリーにはWeb手続きが必要なため、令和6年度の申請を検討している事業者は、昨年度の情報も確認しておくとスムーズに実施できるでしょう。
補助金額(令和5年度 大阪府の場合)
令和5年度の大阪府での補助金額は、補助対象経費の2分の1となっています。
なお、見守りセンサー・インカムなどのICT機器や介護記録ソフトを活用して介護職員の人員体制の効率化やサービスの質の維持・向上を目指す取組については、補助対象経費の4分の3まで交付を受けられます。
介護ロボットの導入の上限額は500万円、見守り機器の導入に伴う通信環境の整備については上限750万円となっていました。
見守りカメラ導入時の注意点
見守りカメラを導入する際には、下記3点に注意しましょう。
- 自治体によって申請期間が異なる
- 実績報告をしなければいけない
- 介護ソフトとの連携が必須
それぞれの注意点について解説します。
自治体によって申請期間が異なる
自治体によって申請期間が異なります。
本記事内では大阪府の実績を紹介していますが、他の自治体での申請期間は下記のとおりでした。
自治体(都道府県) | 申請期間 |
埼玉県 | ~7月31日 |
千葉県 | 6月15日~7月14日 |
愛知県 | ~9月29日 |
長野県 | ~6月30日 |
和歌山県 | 8月30日~10月2日 |
京都府 | ~9月22日 |
福岡県 | 8月10日~9月20日 |
大分県 | ~9月29日 |
なお、介護ロボット導入支援事業補助金が、いつまで継続されるか明確になっていません。
途中で打ち切りとなってしまう可能性もあるため、見守りカメラの導入を検討しているのであれば早めの対応が必要です。
実績報告をしなければいけない
補助金を活用して見守り機器を導入した場合、所定期間内に実績報告書を提出しなければいけません。
実績報告書は各自治体で様式が定まっており、公式サイトなどからダウンロードが可能です。
また、報告書だけでなく見守り機器の納品書や領収書、導入時の写真の添付なども求められます。
大阪府での提出書類は、以下のとおりです。
- 契約書・発注書(発注したことがわかるもの)
- 納品書
- 請求書の写し
- (Wi-Fi工事があった場合)工事完了届
- 領収書の写し
- 事業実施状況の記録(購入した機器の写真等)
- 補助率4分の3の確認書類
提出期限は交付を受けた年度末、もしくは年度末から約1か月以内に設定されている自治体がほとんどです。
補助金の交付を受けたらすみやかに見守り機器(介護ロボット含む)を導入しましょう。
さらに、補助金の交付後3年度間は年度ごとに使用状況を報告しなければいけません。
介護ソフトとの連携が必須
見守りカメラをはじめ、見守り機器はセンサーを導入しただけで活用できるわけではありません。
多くのセンサーが介護ソフトと連携して初めて、スタッフの業務効率化や質の高い介護サービス提供につながります。
見守りカメラには、感知した利用者の変化を介護ソフトに自動で記録する機能があるため、変化が生じた際に正確な記録を残せます。
なお、すべての介護ソフトが見守りカメラに対応しているわけではありません。
介護ソフトをすでに導入している場合は、見守りカメラに連携できるかどうかをあらかじめ確認しましょう。
2024年介護報酬改定に於いて、介護老人保健施設とグループホーム、特定施設(介護付き有料老人ホーム)も見守り機器等の活用を条件に夜間の人員配置基準が緩和されました。先行して緩和されていた特別養護老人ホームに続き拡充される形となっています。深刻な人材不足が続く中、国もICT化を急いでいることがよくわかる改定内容となっています。勤務時間16時間以上の2交代夜勤体制の施設が87%を占めるというデータもあり、夜勤は介護スタッフにとってかなり負荷が大きいものであることは間違いありません。緊急時対応を含めて、夜間業務の見直しは急務と言えます。見守り機器等を活用することで、大幅に業務内容を見直すことができるだけではなく、前述のとおり人員配置基準を緩和できる業態もあるため、積極的に活用していきましょう。
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補助金を活用して見守りカメラを導入しよう
見守りカメラなどの見守り機器、介護ロボットの導入に使える補助金は、多くの事業所で活用されています。
これまで、費用がかかることから見守り機器の導入を迷っていた事業所でも、補助金を活用できれば導入に前向きになれるのではないでしょうか。
見守り機器を導入する際には、ぜひ介護ソフトや通信機器も見直してみてください。
うまく補助金を活用して、より効率的に利用者の安全を見守る体制を構築してください。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。