ケアプランはショートステイの際に必要?作成手順やポイントを解説

2024.12.23

ショートステイでのケアプラン作成は、必要な場合と不要な場合があり、下記のように悩んでいるのではないでしょうか。

「どのようなときにケアプランが必要なのか」
「作成する際のポイントは何か」
「利用期間による違いはあるのか」

これらは、現場で多くの方が抱えている疑問です。基準さえ把握できれば、必要十分なケアプランを作成できます。

本記事では、ショートステイにおけるケアプラン作成の必要性から具体的な手順、実践的なポイントまでをわかりやすく解説します。

これらの知識があれば、適切なサービス提供の実現につながるでしょう。
スムーズなショートステイの運営に向けて、ぜひ最後までお読みください。

ショートステイとは

ショートステイは、最大30日以内の短期間入所ができる介護サービスです。介護する家族の負担軽減が主な目的として設けられています。

ショートステイサービスは、以下のような場合に活用できます。

  • 家族のリフレッシュや休養が必要なとき
  • 冠婚葬祭や出張での外出時の介護対応
  • 家族の病気や急な用事で在宅介護が難しい期間
  • 施設入所を検討する際の試験的な利用
  • 通所の準備が一時的に困難な場合

利用時の基本的な条件として、要介護・要支援認定を受けていることが必須です。

近年は、介護者の急な体調不良やワークライフバランスの観点から、柔軟な受け入れ体制を整える施設が増加傾向にあります。事前予約が基本原則となりますが、緊急時の受け入れにも対応できるよう、施設側も体制を整えています。

ただし、連続利用は30日が上限です。これは、在宅生活を基本としながら、必要に応じてショートステイを活用するという制度の基本理念に基づいています。

ショートステイの利用条件と期間

ショートステイは、最大30日以内の短期間入所ができる介護サービスです。介護する家族の負担軽減が主な目的として設けられています。介護保険を利用する場合は、明確な期間制限や条件が定められています。

利用期間や条件をまとめると以下のとおりです。

利用できる期間連続利用は最大30日まで
介護認定期間内での上限は期間の半数(2年の認定なら365日)
自費利用の場合は31日以上も可能
利用条件要支援1・2の認定を受けている方
要介護1~5の認定を受けている方
事前に居宅サービス計画(ケアプラン)への記載が必要
自立の方は原則として利用不可

利用期間の延長や例外的な利用が必要な場合は、自治体の窓口に相談することで対応ができる場合があります。特に緊急性の高いケースでは、柔軟な対応を検討してもらえる場合もあるため、事前に確認してみましょう。

ショートステイを提供する3つの介護施設

ショートステイには3種類の施設があり、それぞれ特徴が異なります。施設選びは利用者の状態や目的に応じて慎重に検討する必要があります。

それぞれの施設の特徴をまとめると、以下のとおりです。

施設種別医療体制介護保険主な特徴
短期入所生活介護基本的になし
(一部対応可)
適用日常生活支援中心
単独型/併設型あり
集団での生活
短期入所療養介護医師・看護師常駐適用医療的ケア充実
リハビリ体制あり
専門的な対応可能
その他施設施設による適用外要介護認定不要
サービス充実
設備が充実

施設選びで大切なのは、利用者の医療・介護ニーズと施設の特徴が合致しているかどうかです。特に医療的なケアが必要な場合は、短期入所療養介護の利用を検討することをおすすめします。

ショートステイの料金と介護保険

ショートステイの料金体系は複雑ですが、大きく3つの要素で構成されています。介護保険の適用範囲を理解すれば、実質的な負担額を把握できるでしょう。

基本料金(介護保険適用)施設の種類により異なる
居室タイプで変動
介護度に応じて設定(介護保険により原則1割負担)
自己負担分食費:1日1,500円程度
居住費:1日1,000円~2,000円程度(収入に応じて軽減制度あり)
特別サービスの加算送迎サービス
療養食の提供
認知症ケア加算(施設により異なる)

実際の利用料金は、世帯収入による軽減制度を利用すると、1泊2,000円~2,500円程度となります。一方、軽減制度を利用しない場合は1泊6,000円程度かかることもあります。

介護保険適用外の有料老人ホームなどでは、より高額になりますが、充実したサービスや質の高い環境を求める方には適した選択肢となるでしょう。

なお、具体的な料金は施設ごとに異なるため、利用を検討する際は必ず事前に確認するようにしましょう。

ショートステイでケアプランは必要?

ショートステイのケアプラン作成には明確な基準があります。すべての利用者に必要というわけではなく、利用期間によって作成の要否が変わってきます。

ケアプラン作成が必要となる場合連続して4日以上の利用
3泊4日以上の滞在
半日利用でも1日とカウント
ケアプランの作成が不要となる場合2日間の利用が月に2回ある場合
連続3日以内の利用
2泊3日までの短期利用

なお、法令上は3日以内の利用でもケアプラン作成を禁止しているわけではありません。施設独自のルールとして、すべての利用者に作成する場合もありますが、これは法的な要件ではありません。

ケアプランの作成基準は「連続利用」が基本です。

例えば、週1回2日ずつの利用を繰り返す場合は、合計利用日数が多くてもケアプラン作成は不要となります。施設側は、基準を正しく理解し、適切な対応を取ることが求められます。

緊急時の利用における注意点

緊急時のショートステイ受け入れでは、迅速な対応と適切な情報収集が重要です。突発的な利用申し込みには、以下の手順で対応すれば、スムーズな受け入れが可能です。

初期アセスメント介護度・ADL状況の確認医療的ケアの必要性アレルギー・禁忌事項
必要書類の準備介護保険証(後日提出可)かかりつけ医情報緊急連絡先確認

効率的な受け入れのポイントは、最低限必要な情報を素早く収集する点です。緊急時用のチェックリストやアセスメントシートを準備し、スタッフ間で情報を迅速に共有できれば、安全で質の高いサービスを提供できるでしょう。

参照:短期入所生活介護等における緊急時のサービスの提供状況に関する調査|厚生労働省

ショートステイの利用手順

ショートステイを利用する際には、適切な手順が必要です。
ここでは、ショートステイ利用までの主な流れを説明します。

  • 担当ケアマネへの相談と施設探し
  • ケアプラン作成の具体的な進め方
  • 利用開始までの確認事項

それぞれのポイントを確認していきましょう。

担当ケアマネへの相談と施設探し

ショートステイ利用の準備は、慎重に進める必要があります。まず、担当ケアマネジャーに相談する際は、利用希望期間や医療的ケアの有無、送迎の必要性、介護保険の利用限度額などの情報を確認します。

このとき、要介護度によって利用できる日数が異なることにも注意が必要です。要介護度別の利用可能日数は、以下のとおりです。

要介護度利用可能日数
要支援16日
要支援211日
要介護117日
要介護220日
要介護328日
要介護430日
要介護530日

特に医療的ケアが必要な場合は、受け入れ可能な施設が限られます。施設によって対応できる医療行為が異なるため、事前に詳しく確認するようにしましょう。胃ろうや痰の吸引など、具体的な医療ケアの内容を伝えることで、適切な施設を見つけやすくなります。

また、予約は早めに行うことをおすすめします。特に人気の施設は予約が埋まりやすく、希望の日程で利用できない可能性もあるため注意が必要です。要介護認定を受けていない場合は、地域包括支援センターに相談すれば、適切な施設を紹介してもらえるでしょう。

施設探しの際は、利用者様の生活スタイルや好みも考慮に入れましょう。リハビリに力を入れている施設や、レクリエーションが充実している施設など、特徴はさまざまです。

適切な事前準備と丁寧な情報収集により、利用者様に最適なショートステイ先を選定できるでしょう。

ケアプラン作成の具体的な進め方

受け入れ先が決まったら、利用者様とご家族双方のニーズを反映したケアプランの作成が必要です。

ショートステイは単なる一時的な預かりではなく、生活の質(QOL:Quality of Life)の向上と介護負担の軽減という2つの目的があります。QOLとは、その人らしい充実した生活を送れているかを表す指標です。

QOL向上のための具体的な取り組みとして、在宅での生活リズムを把握し、施設でも同様の時間帯で体操や入浴を設定します。また、趣味の将棋や園芸を継続できる環境を整えるのも良いでしょう。

ご家族の負担軽減に向けては、介護者の休養目的を明確に記載し、具体的な期間や頻度を設定します。施設とケアマネジャー間では、以下のような情報を共有するようにしましょう。

  • 服薬管理の方法
  • 食事の好み・制限
  • コミュニケーション方法
  • 生活リズムの詳細
  • 緊急時の対応手順

具体的な内容をケアプランに盛り込むことで、利用者様の安心な施設生活と、ご家族の確実な負担軽減が実現できます。

ケアプランの文例については、以下の記事を参考にしてください。

ケアプラン(居宅サービス計画書)の文例|第1表や第2表などの書き方を解説
施設ケアプランの文例|第1表・第2表ごとに記入例をご紹介

利用開始までの確認事項

ショートステイの利用開始前には、準備品の確認と情報共有が欠かせません。
具体的な持ち物リストには、以下のようなものが挙げられます。

  • 介護保険証(原本を持参)
  • 服薬情報(お薬手帳含む)
  • 着替え
  • 洗面用具
  • 日用品

事前の情報共有では、利用者様の普段の生活リズムや好み、注意点などを確認します。体調変化や生活の様子は記録に残し、ご家族や担当ケアマネジャーと共有していきましょう

細やかな準備と情報共有により、安心してサービスを利用できる環境を整えられます。

ケアプラン作成時のポイント

ケアプランを作成する際には、以下のポイントに気をつけましょう。

  • 居宅サービス計画に沿って作成
  • 利用者に合わせた工夫
  • 各種加算の適切な記載方法

それぞれの具体的な内容を確認していきましょう。

居宅サービス計画に沿って作成

ケアプランを作成する際は、居宅サービス計画書の目的に沿って作成することが重要です。例えば、「他者との交流」が目的の場合は、以下のような具体的な取り組みを計画します。

午前中体操での交流
食事時会話しやすい座席配置
おやつ時レクリエーション参加
日中活動趣味活動での交友

このように、利用目的を具体的な行動計画に落とし込むことで、より効果的なサービス提供が可能になります。職員は計画に基づき、利用者様同士のコミュニケーションを支援するようにしましょう。

利用者に合わせた工夫

ショートステイでは、利用者様一人ひとりに合わせた個別性の高いケアプランを考えましょう。
施設での生活であっても、その方らしい暮らしを継続することで、心身の健康維持が図れます。

読書が趣味の利用者様には、図書コーナーでの本の整理をお願いしてみるのもいいかもしれません。こうした取り組みは、ご家族の「知的活動を続けてほしい」という思いにも応えられるでしょう。

得意なことを活かせる場面を意図的に作ることで、施設での生活も豊かなものになるはずです。

利用者様とご家族の意向を丁寧に確認し、個別性の高いケアの提供が、充実したショートステイの実現につながります。

各種加算の適切な記載方法

ショートステイの加算は、適切な記載がないと算定できない場合があります。

各種加算は施設の体制や提供サービスに応じて設定されており、ケアプランへの明確な記載が必要です。
具体例を挙げてみましょう。

看護体制加算手厚い看護ケアの提供
医療連携強化加算医療機関との連携体制
療養食加算特別な配慮が必要な食事提供
送迎加算送迎サービスの実施
在宅中重度者受入加算医療ニーズの高い方の受入

こうした加算は、利用者様の状態や必要なケアに応じて選択します。ケアプランには具体的なサービス内容と共に、算定理由の記載が必要です。

加算の適切な記載により、必要なサービスを確実に提供でき、より質の高いケアが実現できます。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

一昔前は、ショートステイならずロングステイ(30日以上継続利用)が常態化していました。特養待機者など、空きが出るまでショートステイを利用し続けていたことが主な要因です。ここにメスを入れる形で30日以上の利用は減算となり、いわゆるロングステイは減少しています。元々ショートステイは、同居家族のレスパイトが主な利用目的でした。しかし、昨今全国的にショートステイの稼働率は苦戦傾向にあります。これは、安価な施設(有料老人ホームなど)やお泊りデイが増えたことが主因です。レスパイトのみでは、なかなか選ばれるショートステイ事業所とはなれない時代なのです。「利用前より元気にしてお帰りいただく」ことを目的にリハビリを強化したり、ホテルのような設えで滞在性を高めるなど、目の肥えた利用者に刺さる工夫が必要です。

ショートステイのケアプランの作成ルールを把握しておこう

ショートステイのケアプランは、利用者様の生活の質を高め、ご家族の負担を軽減する役割を担います。
施設での一時的な利用であっても、その方らしい暮らしを実現するには、きめ細かな計画と準備が欠かせません。

入所期間が3泊4日を超える場合は個別のケアプラン作成が必要です。施設との事前の情報共有、医療的ケアの確認、ご家族の意向把握など、準備すべき内容は多岐にわたります。

また、加算の算定要件も適切に記載するように注意してください。

ルールを理解し適切に対応することで、利用者様とご家族双方にとって、安心で有意義なショートステイ利用を実現できるでしょう。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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