短期入所の重度障害者支援加算を徹底解説!対象者・要件などの疑問をすべて解決

2025.03.12

家族に重度の障がいをお持ちの方がいる場合、一時的な休息や緊急時対応のために短期入所サービスの利用を検討されるケースが増えています。しかし、費用負担が大きいと、ご家族も利用をためらうこともあるでしょう。

本記事では、重度障害者支援加算の対象者や要件、算定方法などを解説します。重度障害者支援加算を算定できれば、短期入所施設にとってはより手厚いサポートが提供できるようになり、利用者の満足度を向上しやすいでしょう。障がい児の短期入所における適用方法なども紹介していますので、併せて参考にしてください。

短期入所の重度障害者支援加算とは

短期入所における重度障害者支援加算とは、重度障がい者に質の高い支援を提供した際に支給される加算です。医療的ケアや高度な介護が必要な利用者への適切な人員配置・設備確保を支援します。

ここでは、短期入所における重度障害者支援加算について解説します。

重度障害者支援加算の概要と利用の流れ

短期入所の重度障害者支援加算とは、重度の障がいのある方が短期入所サービスを利用する際に状態に応じた適切な支援を行うための費用を、公的保険から追加で支給する制度です。利用者の状態が重度であるほど、加算額が高くなります。

短期入所の重度障害者支援加算を利用する流れは以下のとおりです。

手順内容
1.短期入所サービスの利用申請必要な書類を準備し、市町村の障害福祉サービス担当窓口に申請する
2.サービス提供計画の作成サービス提供事業者と利用者、ご家族で個別支援計画を作成する
(重度障害者支援加算の算定要件なども盛り込まれる)
3.サービスの利用・短期入所サービスを利用する
・事業者は、計画に基づいて適切な支援を提供する
4.サービス提供記録の作成事業者はサービス提供内容を記録する(加算の算定に必要となる)
5.報酬請求事業者はサービス提供内容に基づいて、市町村へ報酬を請求する
(重度障害者支援加算もこの請求に含まれる)

具体的な加算額や算定方法は、各市町村の条例や障害福祉サービス報酬基準などによって異なります。

重度障害者支援加算を受けるメリット

重度障害者支援加算を受けると、以下のメリットがあります。

メリット詳細
経済的負担の軽減加算によって短期入所の費用負担が軽減される
質の高いサービスの提供事業者は加算によって得られた費用を、より質の高いサービス提供に充てられる。例えば、専門性の高い職員の配置やより充実した設備の導入などができる
利用者の安心感の向上経済的な負担が軽減され、質の高いサービスが提供されると利用者は安心して短期入所サービスを利用できる
ご家族の負担軽減経済的負担だけでなく、利用者へのケアにかかるご家族の精神的、肉体的負担も軽減される

これらのメリットは、重度の障がいを持つ方とそのご家族の生活の質向上に大きく貢献します。 加算の利用を検討することで、より充実した短期入所サービスの利用が可能になるでしょう。

重度障害者支援加算の対象者とは

重度障害者支援加算は、対象者が限定的です。重度障害者支援加算の対象となる方は、どのような条件を満たす必要があるのかを事前に理解しましょう。

障害種別・区分による対象者の詳細

重度障害者支援加算の対象となる障害種別や区分は、厚生労働省の告示などに基づいて定められています。具体的には、以下のとおりです。

加算障害支援区分障害児支援区分行動関連項目対象者
重度障害者支援加算(Ⅰ)6310点以上(障害児は20点以上)重度障害者等包括支援の対象者で、意思疎通に著しい支障があり、行動関連項目が基準を満たす者
重度障害者支援加算(Ⅱ)4以上2以上10点以上(障害児は20点以上)行動関連項目が基準を満たす者

状態像による対象者の詳細

障害支援区分だけでは判断できない場合、利用者の状態像に基づいて対象者を決定します。具体的には、意思疎通に著しい支障があり、行動面で著しい困難を抱えている場合が対象です。

例えば、以下のような状態にある方が対象となる可能性があります。

  • 常時、他者の介助が必要な方
  • 意思表示が困難で、周囲の状況を理解しにくい方
  • 激しい自己刺激行動や他害行動を示す方
  • 予測困難な行動や突発的な行動を起こす方
  • 重度の知的障がいと重度の身体障がいを併せ持つ方

状態像の判断は、主治医の意見書や関係機関による評価結果などを総合的に判断します。それぞれのケースにおいて、詳細な状況を関係機関と十分に協議することが重要です。

なお、加算の算定には、行動関連項目の点数も重要な要素です。具体的な点数の算出方法については、関係機関にご確認ください。

短期入所の重度障害者支援加算の要件と算定方法

短期入所における重度障害者支援加算は、利用者の状態に応じて算定される加算です。 ここからは、要件と算定方法を確認しましょう。

算定に必要な要件

短期入所の重度障害者支援加算を算定するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。これらの要件は、障がいの程度や事業所の体制など多岐にわたります。具体的には、以下のような項目です。

要件詳細備考
指定短期入所事業所などであること短期入所サービスを提供する事業所が、法令に基づき適切な指定を受けている事業所の種類や規模によって、必要な指定が異なる
重度障害者等包括支援の対象者であること・利用者が、重度障害者等包括支援の対象者として認定されている必要がある
・障がいの程度や日常生活における支援の必要性などを総合的に判断して決定される
障害支援区分4以上、または障害児支援区分2以上に該当する利用者が対象となる
必要な体制の整備重度障がい者のニーズに応じた適切な人員配置や設備、研修体制などが整っている専門的な知識やスキルを持った職員の配置や重度障がい者に対応できる設備の整備などが求められる
その他個別要件事業所や利用者の状況によっては、上記以外にも個別的な要件が求められる場合がある個々のケースに応じて、担当のケアマネジャーや関係機関に確認が必要である

上記の要件を満たしていない場合は、重度障害者支援加算を算定することができません。そのため、サービス提供前に、事業所が要件を満たしているかどうかを確認することが重要です。

具体的な算定方法

重度障害者支援加算の算定方法は、基本的に1日あたりの単位数で算出されます。 また、障がいの程度や必要な支援内容に応じて、加算の種類や単位数が決定されます。例えば、行動障がいなどを伴う利用者に対しては、追加の加算が適用される場合もあるでしょう。

具体的な算定方法は、以下のとおりです。

項目算定方法ポイント
重度障害者支援加算(Ⅰ)受入:360単位/日行動関連項目18点以上の者を受入れ、要件を満たした場合、さらに+150単位/日
初期:500単位/日180日間を限度。行動関連項目18点以上の利用者の場合、さらに +200単位/日
重度障害者支援加算(Ⅱ)受入:180単位/日行動関連項目18点以上の者を受入れ、要件を満たした場合、さらに+150単位/日
初期:400単位/日180日間を限度。行動関連項目18点以上の利用者の場合、さらに +200単位/日

参考:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容

加算に関する注意点

重度障害者支援加算の算定にあたっては、以下の点に注意が必要です。

項目内容
他の加算との併給・他の加算との併給に関する規定を確認する必要がある
・すべての加算が併給できるわけではないため、事前に確認が必要である
算定期間・加算の算定期間は、利用者の状態やサービス提供内容によって異なる
・算定期間を正確に把握することが重要である
請求方法・加算の請求方法については、事業所が所属する市町村の福祉事務所などに確認が必要である
・必要な書類や手続きを事前に確認する

これらの注意点に留意し、正確な算定を行うことで適切な加算を受けられます。

障がい児の短期入所における重度障害者支援加算の適用方法

障がい児の短期入所における重度障害者支援加算は、一般の障がい者と異なる点があります。そのため、障がい児を受け入れる場合は、別途適用方法を確認しておくことが大切です。ここからは、障がい児における概要を紹介します。

障がい児特有の注意点と支援のポイント

障がい児の短期入所における重度障害者支援加算を適用する際は、障がいの特性や状態、必要な支援内容が多様であることを考慮しましょう。 発達段階や障がいの種類によって必要なケアやサポートは大きく異なり、個々のニーズに合わせたきめ細やかな対応が求められます。

例えば、自傷行為や他害行為のあるお子さんに対しては、安全確保のための環境整備や行動の観察・記録、適切な対応策の検討が不可欠です。また、コミュニケーションに困難のあるお子さんに対しては、視覚支援ツールや代替コミュニケーション方法の活用など、効果的なコミュニケーション方法を検討する必要があります。

さらに、医療的ケアが必要なお子さんに対しては、医療機器の操作や管理、緊急時の対応体制の整備も重要です。支援のポイントとしては、以下の点が挙げられます。

ポイント具体的な対応例
個別支援計画の作成・お子さんの特性やニーズを踏まえ、具体的な目標や支援内容を記載した個別支援計画を作成し、職員間で共有する
・定期的な見直しを行い、必要に応じて修正する
チームアプローチ医師や看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など多職種と連携し、総合的な支援を提供する
保護者との連携保護者との継続的な情報共有と連携を密にすることで、家庭での状況やお子さんの特性を把握し、より効果的な支援を行う
安全確保お子さんの安全を確保するために、施設環境の整備や職員の配置、緊急時の対応マニュアルの作成などを徹底する
記録の充実お子さんの状態や支援内容、効果などを詳細に記録し、今後の支援に役立てる

障がい児への効果的な支援の実践例

具体的な実践例として、自閉スペクトラム症のお子さんへの支援を考えてみましょう。自閉スペクトラム症のお子さんの中には、コミュニケーションの困難さや特定の行動に固執する傾向があります。このようなお子さんに対しては、以下のような支援が効果的です。

支援内容具体的な方法効果
視覚支援スケジュール表や絵カード、写真などを活用して、お子さんの行動を予測可能にする不安軽減・落ち着きの向上
構造化された環境日課や活動の場所を明確に区分けし、予測可能な環境を作る安心感の向上・行動の予測可能性の向上
感覚統合療法揺り椅子やボールプール、ブランコなどの道具を使って感覚的な刺激を与え、お子さんの感覚を調整する落ち着きの向上・集中力の向上
ABA療法行動分析に基づいた、強化・消去などを通して望ましい行動を促す問題行動の減少・社会性の向上

上記の実践例はあくまでも一例であり、お子さんの特性やニーズに合わせて柔軟に支援方法を調整することが重要です。 また、常に効果を評価し、改善を図っていく姿勢が不可欠です。 適切な支援を行うことでお子さんの発達を促し、保護者の方々にも安心感を与えられます。

高野 鉄司氏
高野 鉄司氏

2024年の障害福祉サービス等報酬改定によって短期入所における重度障がい者支援加算が見直されました。障害支援区分4および障害支援区分5の新設より、従来よりも受け入れられる幅も広がり、事業者側も利用者側にとっても活用しやすくなりました。今回、新設された「重度障害者支援加算(Ⅱ)※30単位/日」では行動関連項目が10点以上という条件はあるものの、結果として障害支援区分4以上であれば利用できる仕組みです。ちなみに、障害児では障害児支援区分2以上で短期入所が受けられるようになりました。諸事情により一時的な距離を摂らなければならないケース、もしくは共同生活援助のように長期的な居住が困難なケースもあり、短期的な入所ができる短期入所事業所のような障害福祉施設は重度障害者にとっても大切な存在です。

まとめ|短期入所の重度障害者支援加算を理解して適切な支援を受けよう

重度障がいのある方々にとって、適切な支援を受けることは生活の質を大きく向上させるうえで非常に重要です。 重度障害者支援加算は、その支援をより充実させるための重要な制度と言えるでしょう。また、施設を運営していくうえで必要な制度とも言えます。

疑問点や不明な点があれば、管轄の福祉事務所や関係機関に問い合わせることがおすすめです。 専門家のアドバイスを受けることで、よりスムーズに手続きを進められ、必要な支援を提供しやすくなるでしょう。

監修:高野鉄司

基本情報処理技術者/応用情報処理技術者

リハビリテーション関連の専門学校(3年過程)卒業後、飲食業に入社。接客において障がい者との関わるうちに障がい福祉の就業に関する社会的課題に直面し福祉業界への転身を決意。就労継続支援B型事業所で約10年間、正社員として勤務し職業指導員、目標工賃達成指導員など実務経験を積む。その後、実務者研修を修了してサービス管理責任者を取得。令和6(2024)年4月、合同会社北斗会セカンドを起業し代表に就任。現在は、鹿児島県霧島市にて就労継続支援B型事業所を開業し、鹿児島県霧島市を中心に、障がい者向けの就労支援を積極的にサポートしている。

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