2022.07.15
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【斉藤正行のはなまる介護~現場に寄り添うこれからの介護業界展望~】第2回 「科学的介護の推進」介護業界に大きな変化が訪れる

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「介護に誇りと憧れを」決して楽ではない介護の仕事。それでも、楽しく、やりがいがのある仕事。そして何より、専門性の高いプロフェッショナルな仕事であります。3Kとも思われている介護の仕事に多くの人が憧れを持てるような地位向上を目指していきたい。

その大きなきっかけともなる新しい介護の在り方。それが「科学的介護」です。昨年4月の介護報酬改定において、科学的介護情報システム「LIFE」の本格運用がスタートし、様々な加算が創設されたことを知っている方は多いと思います。この「LIFE」ですが、現場からの評判はすこぶる悪いです。膨大なデータを入力しなければならず、ただでさえ忙しく人手の足りない現場において、これ以上の手間を増やすのか。といった声や、入力するビッグデータのシステムにもバグやエラーが多かったり、注目されていたフィードバックデータもまだまだ期待されていたような活用可能なデータとなっていない等々、様々な不満の声が私にも聞こえてきています。

それでも、私は、「科学的介護」が、これからの介護業界において最も大切な考え方であり、大変なことも多いですが、現場で働く皆さんには、是非、重要性を理解し、少しずつでも前向きな取組みを行って欲しいと思います。

では、何がそれほどまでに大切なのかをお伝えしたいと思います。「LIFE」は、ビッグデータに高齢者の情報を入力して加算算定が出来るという単純なことではありません。そもそも「LIFE」は、医療における「EBM(Evidence Based Medicine)」の介護版とも言われており、医療分野では介護に先行すること30年ほど前から、エビデンスに基づく医療の提供が実践されてきました。介護はこれまで、高齢者に寄り添った介護の提供が重要であると言われ続けてきました。もちろん、これからも「寄り添う介護」の重要性が損なわれることはありません。しかしながら、寄り添った介護を提供した結果がどうなったか?高齢者の生活の質は高まったのか?自立支援に繋がったのか?重度化防止を実現出来たのか?このような成果の明確化が求められるようになってきました。これをアウトカム評価の推進と言います。「ADL維持等加算」のように、成果に基づく現場評価が制度においても重要視されています。更には、具体的にどのような介護手法を行えば成果に繋がるのか?エビデンスに基づき分析し、介護の質を高めていくことが「科学的介護の推進」であります。

そして「LIFE」は科学的に妥当性のある指標として、専門家が数年にわたり議論を重ねて、「ADL」「口腔機能」「栄養状態」「認知機能」の評価スケールが定められ、ビッグデータに集積されることとなりました。そして、ビッグデータに集積されたデータを分析し、その成果を現場にフィードバックし、現場は更なる科学的介護を推進していくサイクルこそが「LIFE」導入の目的であります。

従って、「LIFE」及び「科学的介護」を推進していくことによって、医療分野と同等に、介護もエビデンスに基づく専門性の高いプロフェッショナルな領域であるとの地位向上にも繋がっていくことになると思います。だからこそ、現場で働く皆さんには、大変なことが多いと思いますが、急ぐ必要はありません。一歩一歩、時間をかけながらでも「LIFE」に向き合い、エビデンスに基づく「科学的介護の推進」に向けて取組んで頂きたいと思います。

斉藤 正行氏

  • 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
  • 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループ 代表取締役
  • 一般社団法人日本デイサービス協会 名誉顧問
  • 一般社団法人日本在宅介護協会東京支部 監査
  • 一般社団法人全日本業界活性化団体連合会 専務理事
  • その他、介護関連企業・団体の要職を歴任

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