【小濱道博の介護戦略塾】2022年在宅サービスの運営指導対策 <第3回>
1.運営指導の一日の流れ
①事業所内の視察からスタート
運営指導当日は、最初に事業所内を案内(視察)します。設備の現状確認とともに、消化器の設置状況、避難経路の確認、段差がある部分へのスロープの設置状況、配膳室の状況や衛生管理等をくまなく見て回ります。前日のサービス終了後に事業所全体を一度確認しておきましょう。
②重要な書類の保管状況が確認される
利用者の個人情報が記載された書類は、鍵のついたロッカーなどに保管する必要があります。個人ファイルや書類が机の上に出し放しになっていたり、積み上げていたりすることは厳禁です。また、ロッカーの鍵の保管状況や鍵をかけるタイミングなども運営指導において確認されますので、職員の誰もが聞かれても答えられる状態にしておく必要があります。
③衛生管理の状況が確認される
コロナウィルスだけではなく、ノロウイルスやインフルエンザなどが毎年、猛威を振るいます。利用者へのサービス提供にといては、衛生管理も重要な位置を占めるため、毎回厳格な確認がされる事項です。まず、玄関の入口付近や手洗い場などにはポンプ式の消毒液の設置が必要です。ノロウイルスなどの感染症対策としては、嘔吐物などの処理用に、使い捨てエプロンや手袋などが保管されているかが確認されます。トイレは、布タオルは不可で、紙タオルを設置しているかも重要なポイントです。
④防災訓練は年1回以上の実施が必要
防災訓練は、デイサービスなど日中だけサービスを提供する事業所は年1回の防災訓練の実施が義務となっています。防災訓練は、サービス提供時間の中で、利用者も参加して行うことが原則です。利用者が参加した防災訓練の時間は、サービスに必要な対策のため、提供時間に含めることが出来ます。これは義務であり、忙しいは理由となりません。防災訓練の具体的な計画では、火災など災害の具体的な種類と発生時間、避難する場所、職員間の連絡方法、利用者家族との連絡方法、ライフラインが機能しない場合などを想定します。その計画に基づいて、シミュレーションの訓練を実施します。実際に避難訓練を行うと共に、消化設備や備品関係、配電盤などのチェック、バリアフリーの再点検を行います。運営指導の当日には、防災訓練の実施状況を訓練記録で確認されます。また、カーテンは防炎難燃性のものを使用しているか、消火器の使用期限なども各部屋を視察する時点で確認されます。防災訓練の実施後は必ず訓練記録を作成して保管します。運営指導では、記録に基づいて、当日の様子を詳細に確認されます。お勧めの方法は、訓練の様子を写真に撮ってプリントし、記録とともにファイルしておくことです。写真は、スマホでも撮れますし、カラープリンターを使ってコピー用紙に印刷すればコストも最小限で抑えることができます。何よりも見ればわかる記録となり、余計な説明が不要です。写真の活用は、運営指導にはとても有効な方法です。
⑤許認可時との変更点が確認される
視察では、許認可時に提出した事業所の見取り図や施設の図面と、現在の施設内の配置との相違が確認されます。たとえば、許認可時に「事務所」として届け出た部屋が、現在はベッドを搬入して「静養室」として使用しているなどの用途変更をした場合は、役所への変更届けの提出が必要となります。未提出を運営指導で指摘されると、運営基準違反に問われることになります。事業所が有料老人ホームなどに併設されている場合は、住宅部分と明確に区分されているか等が確認されます。また、事業所内に、サービスに直接関係のない備品を置くことも厳禁です。設置場所の専有面積によっては、事業所の届出面積として認められずに、設備基準違反に問われる場合があります。
2.運営指導で最も悪質とされるもの
「虚偽・偽装」が、行政処分の理由として非常に多いことをご存じでしょうか。虚偽とは運営指導時の応答で嘘をつくことを言います。偽装は、書類の改ざん、嘘の書類の作成することを言います。たった数万円の軽い不正請求額でも、指定を取消された処分理由の殆どが、悪質な虚偽偽装でした。違反行為の内容や不正請求の金額以上に、最も重たい行政処分が課せられるものであり、最も行ってはいけない行為です。この点については、職員への認識の徹底が求められます。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表 株式会社ベストワン 取締役 一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事 C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問 日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。 介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。 全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。 介護経営の支援実績は全国に多数。 |