【斉藤正行のはなまる介護~現場に寄り添うこれからの介護業界展望~】第4回 「生産性の向上はサービスの質向上と現場の負担軽減に繋がる」
「介護に誇りと憧れを。」専門性の高いプロフェッショナルな介護の仕事を多くの人に憧れを持ってもらえるように地位向上を目指していきたい。
その大きなきっかけとなるのが「科学的介護の推進」「自立支援・重度化防止の推進」であり、これから介護現場に求められることであるとお伝えしてきましたが、今回は、もう1つの重要なテーマとなる「生産性の向上」についてお伝えしたいと思います。
「生産性の向上」という言葉は、介護現場では大変不評ですが、しかしながら、それは誤解に基づいていることが多いと私は思います。「生産性の向上」とは、アウトプット(成果)をいかに少ないインプットで実現するかを追求することであります。一般的な産業や工場などでは、アウトプット(成果)に売上や生産数を、インプットに社員数や労働時間数をあてはめることが多いですが、当然ながら介護においては、定義が異なります。厚生労働省が示している「介護分野における生産性向上ガイドライン」においては、介護分野における生産性向上の目的は、「介護サービスの質の向上」と「人材の定着・確保」であると示されており、いかに少ないスタッフ数や労働時間数でサービスの質を維持・向上させ、職員の負担軽減を実現することが出来るのかを追求することになります。従って、実は「生産性の向上」を実現することが出来れば現場の皆さんの仕事が楽になるということなのです。
参考:介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 居宅サービス ガイドライン(令和4年度改訂版) 厚生労働省
「生産性の向上」を進めていく上で、最重要テーマと言われているのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用です。デジタル技術を活用することによって生活やビジネススタイルを変革することであり、介護現場においては、センサーや見守り機器、介護ロボット、記録システム、請求ソフト、AIケアプランなどを有効に活用し、現場の皆さんの負担軽減に役立てることを目指します。しかしながら、「生産性の向上」=「DXの推進」ではありません。また、これらデジタル機器を活用する上においても最も大切なことがあります。それは、『介護の仕事の業務分解』を行うことです。
介護の仕事は複雑で多岐にわたっていることは言うまでもありません。その中で、業務内容には、「専門性の高いプロフェッショナルなスキルを必要とする業務」「単純作業であり比較的に誰でも実践できる業務」「プロフェッショナルな業務と単純作業が組み合わされた業務」に大別することが出来ると思います。皆さんの日々の仕事をこの3種類に1つ1つ事細かに分解することが「生産性の向上」には不可欠であり、この分解がしっかりと出来た上で、単純作業をデジタル機器などに置き換えていったり、介護補助員や新人に、更には外国人材等のスタート業務に充てるなどが出来れば、皆さんの業務負担は軽減され、最も大切なレベルの高い仕事に専念することが出来ます。
そして、この業務分解をしっかりと行い「専門性の高いプロフェッショナルなスキルを必要とする業務」を追求し続けることによって、介護の専門性が示され、ステータス向上(地位向上)へと繋がっていき、介護の仕事は誰でも出来る仕事ではなく、プロフェッショナルな仕事であると示せるようになるのです。「生産性の向上」という言葉だけで拒否反応するのではなく、介護がプロフェッショナルな仕事であるとの証明のために、そして自分達の仕事が楽になり、介護サービスの質の向上に繋がる「生産性の向上」がこれから求められることとなります。
斉藤 正行氏
- 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
- 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループ 代表取締役
- 一般社団法人日本デイサービス協会 名誉顧問
- 一般社団法人日本在宅介護協会東京支部 監査
- 一般社団法人全日本業界活性化団体連合会 専務理事
- その他、介護関連企業・団体の要職を歴任
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