【斉藤正行のはなまる介護~現場に寄り添うこれからの介護業界展望~】第10回「介護現場に対する物価高騰支援策について」
令和4年9月9日に政府が開いた第4回物価・賃金・生活総合対策本部において、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」の積み増しを行い、6000億円の予算を新たに投じることが決定されました。6000億円が都道府県及び市区町村に配分されることとなり、物価高騰対策の効果的な活用方法として8種類の推奨事業メニューが示され、個人向けに4種類、事業者向けに4種類、事業者向けの1つに「医療・介護・保育施設、公衆浴場等に対する物価高騰支援」として、介護事業者に対する支援メニューが組み入れられることとなりました。
物価高騰はロシアとウクライナによる戦争に端を発し、世界中であらゆる物価高騰が生じてしまっています。介護現場においても、ガソリン代や電気代などのエネルギー関連コスト、食材料費、その他あらゆる費用が増加傾向にあり、コロナ禍による厳しい経営環境が続く状況に加えて、経費増による収益への悪影響が、経営環境をより一層厳しいものとしています。
もちろん物価高騰による影響はあらゆる産業に生じており、介護業界だけの問題ではありません。しかしながら、他の業界と介護業界との大きな違いの1つは、介護業界は公的価格によって収入が制限されているということです。他の産業においては、物価高騰による影響によって仕入れコストが増加しているため、商品・サービスの価格を見直し、値上げを行い、収入を増やして利益確保を行うことが出来ます。それに対して、介護業界では、一部サービスによっては自費収入もありますが、収入のほとんどは介護報酬によるものであり、報酬の単位は、公的価格として定められたものであり、値上げによる利益確保の対応をとることが困難であります。物価高騰によって経費が増大すれば、我々、介護業界は、ただただ利益が圧迫され続けることになってしまうのです。
このような情勢を踏まえて、今年の春頃より、私が代表を務める一般社団法人全国介護事業者連盟をはじめとする多くの介護関係団体が、様々な形で、政府・与党・厚生労働省に対して、物価高騰に対する支援策を講じて頂くように要望活動を続けてまいりました。そして、その甲斐があって今回の追加予算の確保へと繋がりました。
今後、この追加確保された6000億円は、全国の都道府県及び市区町村に配分されることとなり、各自治体における議会において、予算規模や使途について協議され、決定され、その後に介護事業者へ配分されることとなりますので、我々の手元に届くまでにはまだ少し時間を要することになります。また、各自治体による判断に委ねられることになるので、地域による金額や内容に差が生じることとなります。皆さんそれぞれの事業所が所在する都道府県及び市区町村の支援メニューを確認し、定められた書式や手順に従って、申請を行い、せっかくの支援策となりますので、有効な活用を行ってください。今後も重要な情報が追加されることとなれば都度、ご報告してまいります。
斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
- 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
- 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループ 代表取締役
- 一般社団法人日本デイサービス協会 名誉顧問
- 一般社団法人日本在宅介護協会東京支部 監査
- 一般社団法人全日本業界活性化団体連合会 専務理事
- その他、介護関連企業・団体の要職を歴任
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