【小濱道博の介護戦略塾】新時代に生き残るための介護事業経営のススメ<第1回>介護事業経営の成功法則とは何か
【第1回】介護事業経営の成功法則とは何か
1.自分だけの成功法則を見つける
セミナーなどでお会いする介護事業者様から、「どうすれば、利用者が増えますか?」とか、「どうすれば○○○?」という、ノウハウを教えて欲しいという質問があります。それだけ頻繁に全国を廻っていれば、いろいろと知っているでしょうと言われます。しかし、万人が成功する、もしくは誰しもが、状況が良くなる成功法則などありません。もし有ったら、私が教えて欲しいほどです。どこの介護施設では、こうやって上手く行きました。という話もよく聞きますが、それは多くの場合、良いとこ取りの切り売り情報に過ぎないのです。その部分では上手くいっているかも知れないですが、本当は、他にたくさんの問題や悩みを抱えていると思います。皆さんと同じ、悩める介護施設で有ることが多いのです。だから、事業に成功した経営者が、そのことを本に書いたりした途端に、その会社が倒産したり、問題を起こしたりすることも多いのです。
セミナーに参加したり、本を読んだからと言って、皆がすぐに出来る、上手くいく方法なんて教えて貰えません。コンサルタントなのに、そんなことを言うな。と言うお叱りの声が聞こえますが。そんな簡単に上手くいくのでしたら、だれも悩んだり、苦しんだりしません。そして、みんなが誰しもが出来る成功法則を実施したら、どうなると思いますか?そう・・世の中の多くの人が同じ事を始めるわけですから、そのうち、今の現状と変わらなくなってしまうのです。もしも、本当に成功法則があったら、それは一人だけが知っているから魔法の力を発揮するのです。経営者は自ら苦しまないといけないのです。その先には成功という喜びがあります。誰にも通じる成功法則がないと、勝手なことを書いてきました。その理由は、ひとつひとつの介護事業者の顔が違う、個性が違う、環境が違うことが一番大きな理由です。しかし、情報は取ることが出来ます。その情報を使って、早く自分の事業所にあった対策を見つけて欲しいと思います。そして、自分だけの成功法則を早く見つけてください。
2.経営者の意識改革の必要性
行政は、事業者の管理はするけれど、事業が伸びようが、潰れようが一切の事業者の保護をしません。その事業者が立ちゆかなくなっても、替わりは沢山居るのです。住民に迷惑が掛からない限りは、役所は事業者の保護をする理由はありません。だから、経営者はしっかりと安定した利益を出して、職員にも必要十分な給与を支給していくことを続ける必要があります。常に経営努力を継続しなければならないのです。職員の給与が上がらないのは、国の制度の責任にしがちですが、それは全くの責任逃れであって、最終的には経営者の責任になるのです。経営者の一番の仕事は、どのようなことがあっても事業を続けていくことです。それが出来なければ、利用者も増えず、職員も辞めていき、残念ながら自然淘汰されるしかありません。同時に、地域にとって必要とされないサービス、質の低いサービスを提供した場合は、地域から見放されて誰も利用しなくなり、自然淘汰に向かいます。自由という言葉は、開放感があると同時に、実は残酷は言葉でもあります。全ての責任は自分に、事業経営では経営者に有ることを意味します。経営者という商売は、虎の背中に乗っていると同じです。振り落とされたら、虎に食い殺されてしまいます。虎に食い殺されたくなかったら、常に休むこと無く、常に変わり続ける状況変化への対応を迅速にしなければなりません。
介護事業の経営理念で、「介護とは福祉の心である」という精神論を重視されることがあります。そして、利益という言葉に少なからず罪悪感を覚える人が多い業種だと言えます。批判をお受けする覚悟で言わせていただけると、介護事業の経営者にも、この部分を利用して、職員の人件費を抑えることに活用してきた部分があるのでは無いでしょうか。介護事業は高齢者の方への奉仕の心が大切で、それはお金に換算できないものであることは間違いありません。しかし、だからといって給与のアップを要求することは、介護の理念にも劣るという、自己犠牲の考え方は時代錯誤も甚だしいと言わざるを得ないのです。今の介護事業は、介護職の生活の犠牲の上で成り立っている部分が少なからずあると思います。その反動が、今度は経営者の側にブーメランとなって、利益追求や営業という部分で、職員の理解や協力を得ることが難しい状況を作り出しているのでは無いでしょうか。その相乗効果がマイナスに作用して、事業経営が伸び悩むというジレンマを抱えているのが介護事業経営の一つの姿なのだと思っています。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表 株式会社ベストワン 取締役 一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事 C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。
全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。