【小濱道博の介護戦略塾】新時代に生き残るための介護事業経営のススメ<第4回>これからの介護事業経営
【第4回】これからの介護事業経営
1.団塊の世代のニーズを知ることが大切
今の利用者の中心である団塊の世代は、1947年〜1949年の3年間に生まれた世代で約700万人の大きな年齢層で、2025年には75才の後期高齢者になります。団塊の世代は、ビートルズ世代とも呼ばれ、学生運動、高度成長期、バブル期をリアルタイムで経験した年代です。この世代の特徴は、退職金や厚生年金の満額支給を受けているため、豊富な時間と資金力があり、健康でわがままな世代(アクティヴエイジング)であることです。この利用者層に満足頂けるサービスを如何に提供出来るかが、重要な経営ポイントです。その為には、この世代の歴史と価値観の分析から入ることも大切です。
2.制度改正と成長分野
許認可事業である介護事業は、制度改正や介護報酬改定によってそれまで築いてきた基盤やノウハウが一夜にして崩壊します。そのため、今と同じ経営環境を5年先、10年先も現状のままで維持し、継続することは不可能といえます。介護事業の分野は成長分野であり、制度改正で環境が絶え間なく変わり続けます。経営陣もその変化のスピードに追従する能力が求められ、より強い経営マネジメント力を身につけることが必要です。また、信頼できる介護経営のブレーンを見つけて上手く活用することも大事です。
3.介護サービスの見える化する
デイサービスは、リハビリデイ、アミューズメントデイなど色々なコンセプトの提供形態があり、多様化と差別化が顕著に行われています。それに対して、訪問介護などの訪問系のサービスは、多様化が全くと言って良いほどありません。訪問介護は利用者のお宅での、密室の中でのサービスです。職員のサービス提供の状況も、報告書の中でしか、状況を把握する事が出来ません。訪問サービスの問題は、クローズ環境で、職員の行動が見えないということに尽きます。であるならば、見えないものを、如何に見えるようにするかが、訪問サービスの大きな差別化に繋がります。現実的には、それは詳細な報告書がその役割を果たします。その報告書に残業代を払ってでも、介護職員に作成させることが出来たなら、間違いなく、ケアマネジャーから信頼されて、新規の依頼は急増します。それで、新規の利用者が増えるのなら、残業代など小さな出費となります。
4.個性をつくり、外に向けて発信する
コンビニと同じくらい、介護事業所があることは先に書きました。今のままですと、大勢の中に埋没して目立ちません。目立たないと、利用者も見つけてくれませんし、職員も応募して来ません。事業コンセプト、差別化をしっかりと明確にして、外にそのことを教えてあげることが大切です。差別化とは、あなたの事業所の個性のことです。人は一人一人、個性が違います。だから、人によって好き嫌いがあるし、違いが分かります。「自分たちの事業所は何が出来て、何を提供しているか」をしっかりと見つめ直しして、簡単な文章にしてください。そして、その事を、どうやって外に伝えるかを真剣に考えましょう。何故なら、周りはそのことを知らないからです。
5.最後に
このコラムを読まれている介護事業者様は、今の事業所をここまでにされるのには、大変なご苦労と、時間と、汗と、涙を注いだと共に、多くのものを犠牲にして来られたと思います。だからこそ、今がお有りだと思います。そのようなご苦労の結晶である事業所を、今のままで続けて行きたい。今の事業所を守って行きたいというお気持ちは人一倍お強いことはご推察いたします。しかし、このコラムで示したように、残念ですが、今のままで、何十年も続けていくことは不可能です。もし、目や耳を閉じてその場に座り込んでいたら、気がついたら浦島太郎になってしまします。だから、いままでの事業をベースにして、制度改正に合わせて変わらないといけないのです。是非、貴殿には、今やられている、すばらしい介護サービスを、すばらしい事業所をすばらしい職員様を、5年先、10年先には、もっと、もっと良い事業所にして頂いて、利用者様の為に、職員様のために、そして経営者ご自身のために続けて行って頂きたいと心から祈念しています。いつも、本当にありがとうございます。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表 株式会社ベストワン 取締役 一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事 C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。
全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。