【名南経営の人事労務コラム】第11回 職員のメンタルヘルス対応
ストレス社会と言われて久しく、我々の日常生活には常にストレスが溢れています。精神に疾患を抱える人は年々増加傾向にあり、年齢や年代を問わず増え続けていることが厚生労働省からの資料によって読み取ることができます。
(出典/厚生労働省)
福祉施設において働く職員についても例外ではなく、採用後に精神疾患によって働くことができなくなってしまうことがあります。理由や背景は個々により異なりますが、労務管理という点で捉えると運用にあたってのルールが不明確であることで少なからず混乱をすることがあるのが実態です。
一連の流れを紐解くと、通常は突然出勤が途絶えるというよりも、休日明けに欠勤が見られるようになったり、出勤や欠勤を繰り返すケースが目立ちます。こうした状態が続く段階で休職制度について検討することになりますが、問題はいつから休職をしてもらうかという点です。
この場合、医師による診断書を提出してもらうことが望ましい対応です。精神疾患が疑われる場合、医師の診断書には、「○ヵ月間の休養を要する」といった記載がされていることが多く、その内容を根拠にして休職を命じれば恣意性が排除された運用ができます。
もっとも、職員によっては精神科のクリニック等に対して抵抗感を感じることで受診をしないということも想定されます。そういったケースも想定して、1ヵ月間に○日以上の欠勤が生じ、今後もその可能性がある場合には休職を命じることができるといったルールを就業規則等に定めておくとよいでしょう。
次に、休職期間をどの程度認めるのかという問題が発生します。通常は、就業規則にその期間が定めてありますので、最長でも就業規則に定める期間の休職を命じることになります。しかしながら、施設によっては、その期間が極端に短いケースも散見され、中には就業規則に「休職期間1ヵ月間」といったようなケースもあります。
むろん、職員の意見を聴いて策定をした就業規則ですので、第三者がその長短について是正ができるものではありませんが、多くの産業医の声を聞く限りでは、症状が良くなるまでは少なくとも6ヵ月程度要するというのが声として聞かれますので、休職期間の長さはある程度の配慮が必要となります。
そして、こうした職員のメンタルヘルス対応において最も気を使うのが復職についてです。職場としては人員不足という背景を理由にすぐにでも戻ってきて欲しいということ、休職をしていた職員も周りに迷惑を掛けているという負い目も感じて早々に復帰したいという思いを抱いていることがあることから、双方の考えがマッチしやすいものですが、完全に治っていない状態での職場復帰は、再び欠勤が続くという事態に発展することが少なくありません。従って、復職についても医師による「就労が可能」といった診断書等を提出してもらい、その根拠を持って復帰してもらうことが望ましい運用となります。
これらのほか、休職期間中の社会保険の取扱いや定期的な症状報告をどうするか等、様々な実務面の運用問題については、就業規則等に細かくルールとして定めておくとよいでしょう。細かいルールが明確に定めてあれば、現場における実務面の判断の迷いが最小限になりますので、休職をする職員に不安を与えることは少なくなるものと考えられます。
服部 英治氏
社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー
株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士