【斉藤正行のはなまる介護】「2024年介護保険制度の見直しに関する意見(案)示される」
2024年介護保険制度の見直し議論はいよいよ意見取りまとめの最後の議論が始まりました。11月28日に開かれた介護保険部会においては、「給付と負担」をテーマとし議論され、介護業界の多くが懸念していた「要介護1と2の訪問介護・通所介護の介護保険外し」「ケアプランの有料化」それぞれを次期改正では見送る方向性が示され、業界関係者の多くが安堵したところです。そして、12月5日の審議会において「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」が提示されました。大テーマは2つ。『地域包括ケアシステムの深化・推進』と『介護現場の生産性向上の推進、制度の持続可能性の確保』であります。各テーマの具体的な意見(案)の中身のポイントを整理してお伝えしたいと思います。
『地域包括ケアシステムの深化・推進』については、更に3つの項目が示されており、まず、①生活を支える介護サービス等の基盤の整備であり、大注目は、訪問介護と通所介護を組み合わせた新しい複合型サービスの創設に向けた検討の必要性が示されています。また、ケアマネジメントの質の向上についても言及されており、例えば、法定研修のカリキュラム見直しや、主任ケアマネジャー養成に向けた環境制度、AIケアプランを含めたICTの更なる活用促進、集合住宅を含めた公正中立性の確保に向けた環境整備の必要性が示されています。福祉用具貸与に関しても、杖・歩行器・手すり・スロープなどの販売との種目整理は引き続きの継続議論の必要性が示されました。特養については、要介護1と2の方の入所要件の緩和の方向性とともに引き続き個室ユニットの整備促進の方向性が示されました。続いて、②様々な生活上の困難を支え合う地域共生社会の実現であり、総合事業の在り方について、事業費の上限額の考え方の見直しや、通いの場・一般介護予防の引き続きの見直しが示されました。更には、認知症施策の推進、地域支援センターの体制整備に向けて、居宅介護支援事業所での介護予防支援の拡大方針が示されました。最後に、③保険者機能の強化であり、インセンティブ交付金や要介護認定の在り方の見直しが示されました。
『介護現場の生産性向上の推進、制度の持続可能性の確保』については、更に2つの項目が示されており、まず、①介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進であり、引き続き総合的な介護人材確保を進めるとともに、生産性向上に向けた支援・テクノロジー活用支援の更なる拡充方針や、文書負担軽減に向けた取組み方針が示されました。注目すべきは、介護サービス事業所における管理者の常勤配置における兼務要件の緩和とともに、人手不足の続く訪問介護などの在宅サービスの人員配置について合理化を図る必要性が示されました。また、財務状況の見える化の推進を図るために、介護事業者が都道府県に財務諸表等の 情報開示を届け出る仕組みの導入方針が示されました。同時に事業者の事務負担への配慮も記述されており、今後は届出の在り方の細目ルールの決定が注目されることとなります。最後に、②給付と負担でありますが、こちらは、まだ意見(案)の段階では書きぶりの最終調整中であるため未記入となっており、冒頭にお伝えした要介護1と2の軽度者改革やケアプランの有料化は見送られる方針であるものの、利用者負担の2割の対象拡大や、老健等の多床室の室料負担の在り方など、現在も引き続き水面下での調整が続けられているところであり、最終の意見書の確定を待ちたいと思います。
いずれにせよ、介護保険法改正案の方向性の全容は示されました。年明け以降の通常国会で法案審議され、2024年から順次施行されるとともに、年明けからの介護給付費分科会において報酬改定の議論で細部を詰めて議論されていくこととなります。いよいよ同時改定・報酬改定に向けた議論が本格的にこれから始まることとなります。来年1年間は我々、介護現場にとっては最も大切であり、注目が必要な1年間となります。
斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
- 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
- 株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループ 代表取締役
- 一般社団法人日本デイサービス協会 名誉顧問
- 一般社団法人日本在宅介護協会東京支部 監査
- 一般社団法人全日本業界活性化団体連合会 専務理事
- その他、介護関連企業・団体の要職を歴任
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