【小濱道博の介護戦略塾】介護保険部会意見の検証(4)
4,電子申請システムとICT化の加速
訪問介護は人手不足が顕著で、有効求人倍率が15倍という異常な状態です。いま、在宅サービスの人の確保が急務です。またICT の活用も念頭においてさらに在り方を検討が必要です。今回、在宅サービスにおける管理者の常駐の規定の見直しが論点となりました。管理者は最初から最後まで事業所に居る必要は無く、場合によっては在宅ワークでの対応が可能とされました。今後、管理者の常駐配置要件の見直しが検討されていきます。ただ、現実的には、訪問介護などの管理者の多くは他の職種と兼務していますので、どこまで効果があるかは疑問が残ります。
文章負担の軽減措置として、申請関係を電子申請にすることが示されていますう。今、地域毎に独自で作成されている様式関係の一本化を国は進めています。標準様式を示して、標準様式に切り替えた自治体から電子申請システムに移行しています。今後はさらに、システム利用を原則化することで、自治体に対して義務化するということですので、この電子申請はさらに加速します。電子申請システムもICT化の一つです。今後は、コンピューター苦手だとか、無理などと言っている時代ではありません。出来なければ、置いてきぼりになるということです。ICT化は今後は更に加速する方向性も今回の制度改正の中で 見えて来ています。
今回の制度改正ではありませんが、令和5年4月から ケアプランデータ連携システムがスタートするということは周知の事実です。ケアマネジャーは、毎月毎月、利用者の提供票を コンピューターで作成して、担当事業所に紙で印刷して渡しています。担当事業所は、ケアマネジャーから届いた提供票を管理ソフトに入力したりして活用しています。一月が終わったら担当事業所は提供票に実績を記載して担当のケアマネージャーに紙で戻します。結果、ケアマネジャーは、月初に提供票が100枚近く届くことになります。例えば、利用者が30人いて、各利用様に3つの事業所を位置づけていたら90枚の提供票が返ってくるわけです。この100枚の 提供票を自分の給付管理ソフトに手入力しているわけです。この作業だけでも2〜3日かかっているとのが現状です。連携システムを使う事で、ケアマネジャーはPCの画面上で提供票を入力し、入力が終わったら国保連合会のシステムを使って担当事業所に電子データとして提供票を送ります。担当事業所は届いた電子データを自分の管理ソフトなどに取り込むだけです。ひと月が終わったら担当事業所は、画面上に実績を打ち込み、担当ケアマネジャーに電子データで送ります。ケアマネージャーは担当事業者届いたこの電子データを給付管理ソフトに落とし込むだけで作業を終わります。すなわち、従来の手入力の部分が双方で無くなります。入力ミスでの返礼リスクも無くなります。ケアプランデータ連携システムが導入されることで、今まで3日程度かかっていた提供票の入力作業が、1日もかからないということなんです。圧倒的に業務は簡素化されます。その意味で、期待が大きいICTシステムと言えます。
小濱 道博氏
小濱介護経営事務所 代表
株式会社ベストワン 取締役
一般社団法人医療介護経営研究会(C-SR) 専務理事
C-MAS 介護事業経営研究会 最高顧問
日本全国でBCP、LIFE、実地指導対策などの介護経営コンサルティングを手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。
全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター、一般企業等の主催講演会での講師実績は多数。
介護経営の支援実績は全国に多数。