2020年度診療報酬改定のポイント整理
Q2医師等の働き方改革推進の評価などは、すべての病院に恩恵があるか?
2020年度改定では、「医師等の働き方改革」が改定における基本方針の「重点課題」に位置付けられました。その理由は、疾病構造の変化やマンパワー不足に対応し、2025年を見据えた地域医療構想を実現していくうえで、「病床再編によるベッド数のコントロール」とともに、「医師等の労働環境の改善と医師数のコントロール」が不可避となっているからです。
今回の特例的な対応として盛り込まれた診療報酬上の評価は、救急搬送の受け入れが多い救急医療に携わる病院を優先的に重点化した点が非常に特徴的です。一方、救急医療に関与しない病院では収入増は期待できないものの、評価が全くなかった訳ではなく、シフト調整などの働き方改革の推進に寄与する人員基準の要件緩和やタスクシフトに注目していく必要があります。
これに対して、診療報酬以上に財源が配分された地域医療介護総合確保基金においては、救急医療の最前線で診療する過酷な勤務環境の改善に対する支援が盛り込まれています。基金における支援は診療報酬の対象とならなかった救急車受入件数が1,000台以上2,000台未満の「B水準」相当の病院をはじめ、地域医療において5疾病5事業などの医療計画において重要な役割を担い、かつ過酷な勤務環境となっている場合、医師の労働時間短縮のための体制整備が予定されています。具体的な支援としては、総合的な取組に要するICT等機器、休憩室整備費用、改善支援アドバイス費用、短時間勤務要員の確保経費等をパッケージとして補助することが予定されています。
都道府県による指定が必要となる救急病院や研修医を受け持つ病院が該当する「B・C水準」指定病院では、今後の対応として2021年度中に「医師労働時間短縮計画」の作成、2022年度に設置される「評価機能」への参画が必要であり、病床再編への対応とともに勤務医の労務管理も喫緊の取り組み課題となった点に留意しなければなりません。
こうした変更点は、救急医療の受け入れ体制の変更などにも関わり得るため、利用者の緊急時に備えて地域事情を再確認していくことが大切です。
- 参考資料:「救急病院等における勤務医の働き方改革への特例的な対応について」などを引用して作成
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000589774.pdf
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ワイズマン編集部