2020年度診療報酬改定のポイント整理
Q3大病院への紹介状なし受診抑制など、フリーアクセスはどう変わったか?
我が国の医療システムは、安心して医療を受けられるように国民全員が公的医療保険に加入し、保険料を出し合って支え合う国民皆保険制度において運営されています。患者は健康保険証があれば医療機関を自由に選択できるフリーアクセスが担保され、一定の窓口負担で診療や薬などの必要な医療サービス(現物支給)を平等に受けることができます。これまでの制度改革では、こうしたフリーアクセスを固持しつつ、患者の受診に係る様々なテコ入れが行われてきました。
2020年度改定では「紹介状なし大病院受診の定額負担5,000円以上」の対象病院の枠が広げられ、200床以上の特定機能病院と地域医療支援病院への受診負担が義務化されます(下図)。これは外来医療の機能分化(役割分担)を進める目的のほか、医師等の働き方改革を進めるうえでも軽度な救急受診を抑制することが急務であったといえます。
この他、今般の救急医療に関わる見直しでは「国民プロジェクト宣言」による啓発をはじめ、看取りや高齢者の医療提供の希望を事前告知する「ACP(通称「人生会議」)」による医療のアクセスを変える仕組みが続々と投入されている点にも改めて注視していく必要があります。
診療所に係る2020年度改定の見直しでは、病院の外来抑制の受け皿となる「かかりつけ医機能」の裾野が広げられた点にも注目です。また、前回改定で導入されたオンライン診療が一部緩和されるとともに、薬局によるオンライン服薬指導も拡充されました。患者受診の利便性向上に寄与するICT技術を駆使したオンラインという新たな選択肢は、認知度の向上により浸透していくでしょう。
医療機関や介護事業所では、施設内の患者や利用者が急変時に適切な医療提供ができるよう、連携先の最新動向を確認しておくことが重要です。
- 参考資料:中医協総会資料より「個別改定項目(P375~)」などを引用して作成
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000593368.pdf
レポートの著作権は当社に帰属します。許可のない無断使用および転用を固く禁じております。
ワイズマン編集部